ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第09章・21話

引き篭り男のプロポーズ

「凄まじい活躍じゃ無ェか、宇宙斗艦長よ。敵のサブスタンサー部隊を殲滅した挙げ句、艦隊の旗艦まで沈めちまうたァ、大した戦果だぜ」
「ボクたち、出番すら無かったよ。少しは、残して置いてくれたら良かったのに」

 任務を終えたボクが、宇宙戦闘空母クーヴァルヴァリアの格納庫へと戻って来ると、プリズナーと美宇宙が出迎えてくれた。

「そう言うなよ、美宇宙。遊びじゃないんだから、危険は避けるべきだ」
 ゼーレシオンのコックピットハッチを開け、返事をするボク。

「アレ、オリジナルのボクの他にも、誰か載ってるよ?」
「ア? 誰だ、ソイツらは?」

「撃破したサブスタンサーの、パイロットたちさ。なるべくコックピットを避けて沈黙させたつもりだケド、空気漏れでもあったら死んでしまうからね」

 気を失っている2人の少女を抱え、無重力に近い格納庫内に飛び出した。

「お優しいコトで。それにしたって、敵を撃破した上に捕虜にまでしちまうたァな」
「ホント、スッゴイよ。これで捕虜も、3人確保だね。でも、今回も女のコかァ」
「二ヒヒッ。クーリア様の怒った顔が、目に浮かぶぜ」

「茶化すなよ、プリズナー。コリーさんは、女のコって年齢でも無いだろ」
 プリズナーに指摘されるまでも無く、クーリアの冷徹な笑顔は既に、ボクの脳裏に思い浮かんでいる。

「艦長に比べりゃ、どんな婆さんだってションベン臭い小娘じゃねェか」
「このコたちも、オシッコ漏らしちゃってる。ボクが、洗ってあげようか?」
「頼むよ、美宇宙」

「ウン。任せて!」
 ボクは2人の少女を、美宇宙に引き渡した。

「ヤレヤレ。これでクーリアにも……」
「宇宙斗、アナタは女のコ全員に対して、優し過ぎるのではありませんか!」

「うわあッ!?」
 突然現れたクーリアに、驚きまくるボク。

「え、えっと……か、彼女たちのサブスタンサーはボクが撃破して、2人の機体は宇宙空間を漂っていたんだ。放って置いたら、死んでしまう可能性もあったから……」
「先に仕掛けて来たのは、向こうなのですよ。彼女たちも、戦死は覚悟の上でしょうに」

「ま、まさか、2人を宇宙に放り出す気なんじゃ?」
「そこまでは、致しません。捕虜として、丁重に扱わせていただきます。捕虜は、今後の交渉材料になり得るかも知れませんから」

 クーリアは、取り巻きで部下でもあるレオナとリリオペに指示を出し、美宇宙の後を追わせた。

「クーリア。敵の2個艦隊を撃破したとは言え、まだ敵の戦力は残っている。現に足の速い高速艦隊を振り切ったハズなのに、先回りされて……」

「解っております……宇宙斗!」
 緩い重力の中で、身をボクに預けるクーリア。
その気高き口唇が、ボクの言葉を遮(さえぎ)った。

「わたくしには、どこにも帰る場所がございません」
 ボクの胸で、弱音を吐露するクーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダ。

『ボクが、キミの帰る場所になってあげる』……とでも、言えばイイのだろうか?
 だケド、そんな気の利いた台詞は、ボクの口からは出て来ない。

「クーリア。キミは、ボクが護る」
 それが、精一杯だった。

「まったく……仕方ありませんわね」
 呆れ顔のクーリアが、上目遣いでボクを見ている。
少し膨れッ面で、少し笑顔も混じっていた。

「ゴ、ゴメン。こう言うのは、苦手で……」
「フフ。わたくしだって、大して得意ではありませんのよ」
 急に無邪気になる、クーリア。

 それから、色々な要件を済ませたボクは、再びクーリアと1夜を共にする。
1度きりの関係かと思っていたが、そんなコトも無くクーリアはボクに身を委ねてくれた。

 太陽の光が、ボクたちが過ごしたベッドに差し込む。
宇宙で見る太陽は、地球で見る太陽とは違い、星の海の中でポツンと小さく輝いていた。

「クーリア。ボクと、結婚してくれないか……」
 懐(ふところ)に感じる温もりに向って、問いかけるボク。

「はい……わたくし……ずっと……宇宙斗のコトが……」
 たくさんのモノを背負って来た少女は、涙声で応えた。

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