ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第10章・EP026

スカウト話

 ボクたちは、ライブハウスの地下にある観客席で、宝城さんの話を聞き終える。

「え? えっと、つまり……いただきますって言わなかったから、退学になっちゃったんですかァ!?」
 沙鳴ちゃんが、思ったコトを口にした。

「だから言ったろ。とんでも無く、下らねェ理由だって」
 美浦さんが、ドヤ顔で頷(うなず)いてる。

「だが厳煌(げんこう)教諭も、それが理由で題醐(だいご)を退学させたワケじゃない。その後も、色々とあってな。とにかく2人は、折り合いが悪かった」

「宝城の、言う通りでな。厳煌はたまたまなのか、自ら名乗り出たのか、オレらサッカー部の顧問に就任しやがってよ。ま、去年までの顧問が、他の学校に移っちまったってのもあるんだが」

「厳煌教諭は、髪型や素行の悪さを理由に、題醐をレギュラーから外したんです。それからアイツは、部活にも顔を見せなくなってしまいました」
 宝城さんと美浦さんが語る、題醐さんの退学理由に、ボクも沙鳴ちゃんも口を開きっ放しだった。

「なんだかねェ。時代錯誤な教諭が、来たモンだ」
 呆れ果てる、ポエムさん。

「仏教高校ってのは、そんな感じなのかい?」
「今の時代ですからね。ウチはかなり、厳しい方かと思います」
「これでも昔よりマシになったって話だから、イヤになるぜ」

「ダーリン。そう言えばウチも、仏教系じゃなかった?」
「アレ……そだっけ?」
 はっきり、覚えてないや。

「仏教系って言っても、ピンキリなんだね。ま、かく言うアタシも、親父がイギリス人だからってのもあって、キリスト教系の女子校に行かされたんだ」
「そうだったんですね。ポエムさんの学校は、厳しく無かったんですか?」

「厳しかった気がするケド……ほとんど通わずに、退学しちまったからね」
「ええッ!? ポエムさんも、学校を退学されてたなんて!」

「親父が、死んじまいそうなときだったんでね。学校どころじゃ、無かったのさ」
 ポエムさんの哀しそうな視線の先には、オヤジさんの遺したと言う、ドラムセットがあった。

「ところで……キミたちは、題醐をスカウトに来たらしいが、詳しく聞かせてくれないか?」
 ボクたちに問いかけて来る、宝城さん。

「はい。実は、わたし達は……」
 沙鳴ちゃんが、ボクたちが題醐さんをスカウトしに来た経緯(いきさつ)を、丁寧にわかり易く説明してくれた。

 沙鳴ちゃんって、まだ中学生なのにしっかり者で優秀だよな。
ボクが、しっかりして無いだけだケド……。

「へッ!? く、倉崎 世叛って、あの倉崎 世叛!!」
「ま、まさか、Zeリーグ期待の新人王候補が、チームオーナーだなんて!!」
 美浦さんも宝城さんも、眼を丸くしていた。

「アンタらが驚くのも、ムリは無いよ。サッカーを知らないアタシですら、聞いた名だからね」

 倉崎さんは、名古屋出身で地元の名古屋リヴァイアサンズ所属なだけあって、地元のテレビでも度々特集されてるからな。
サッカーに興味無い人でも、けっこう知ってたりする。

「オイオイオイオイ。こりゃあ、スゴいコトだぜ、宝城よ!」
「わ、判っている。不本意なカタチでサッカーを諦めた、アイツにとってはこの上なきイイ話だ」

 少し前までチームメイトだった2人は、ボクたちの持ってきたスカウト話を、とても喜んでる。

「なあ、アンタら。水を差すようで悪いんだケド、当の本人はサッカーを辞めたって言ってるんだよ。アイツは、1度言い出したら曲げないからねェ」

「そ、そうでしたね。アイツの性格を、忘れてました」
「だけどよ、宝城。こんな旨い話を、放って置く手は無ェぞ」
「ああ。何とか翻意させられれば、良いのだが……」

「あッ、テメーら。まだ居たのか……って、なんで宝城や三浦まで居るんだよ!?」
 そのとき、題醐さんが階段から降りて来た。

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