ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第11章・第50話

サキカと孤児院

 渡邉 佐清禍(わたなべ サキカ)の件に、孤児院の3人のシスターが関わっていると言うマドル。
それに対し、ドームに集った観客から様々な声が沸き上がった。

「警察が、シスターたちを殺人に関わってると見ているって、どう言うコトだ?」
 観客の1人が、叫んだ……と言うより、それが彼本来の声量だったのかも知れない。

「サキカちゃんが殺された事件に、孤児院が関わってるってコトよね?」
「あり得なくはない話だケド、孤児院って今までそんなに関わって来なかったジャン?」
「館と孤児院って、けっこう離れてるっポイけど、どうやって関わったんだろ?」

「まさか3人のシスターが、館まで赴(おもむ)いてサキカちゃんを殺したってのか?」
「それは無いでしょ。大体、動機が不明過ぎるわ」
「ウ~ン。だったら、なんで?」

 騒(ざわ)めく観客席からも、疑問符しか浮かんで来なかった。

「わたし達が、あのコの殺人事件に関わっているだって?」
「残念ですがわたし達は、館に赴いたコトはございません」
「とんだ見当違いの、推理だったね」

 中年女性の3人のシスターたちの声が、ニヤニヤと笑っている様に聞こえる。

「オ、オイ、マドル!」
「落ち着いて、警部」
 マドルが、慌てる警部を制した。

「我輩は、サキカさんの件と言ったのであって、殺人とは言って無いのですがね」
「同じコトだろう。他に、なにがあるってんだい?」
 長女の珠の声が、反論する。

「我輩は、サキカさんの次に殺された、第3の殺人の被害者となったトアカさんを殺したのは、サキカさんだったと推理してるのですよ」

「チョット、警部さん。この警部補さんは、自分がなにを言っているのか解っておいでなのでしょうか。気が動転して、矛盾に気付いていないとしか思えません」
 次女の菊が、冷静な口調で言った。

「この人の言う通りだぜ、マドルよ。お前、どうかしちまったのか!?」
 更に慌てる、警部の声。

「サキカちゃんは、マスターデュラハンによる第2の殺人の被害者なんだぜ。浴室で、首無し死体となって発見されている。お前だって……」

「もしその死体が、サキカさんのモノで無かったとしたら?」
 神於繰 魔恕瘤(かみおくり マドル)は、言った。

「なに言ってんだ。渡邉 佐清禍のモノで無かったんなら、他に誰の……!?」」
 途中で口籠る、警部。

「そう。サキカさんは私生児であり、彼女が彼女と証明できる人物は、ほぼ皆無だ」
 マドルの推理に、ドーム会場が大きく騒めいた。

「だ、だったらお前は、サキカはまだ……」
「ああ。彼女は恐らく、まだどこかで生きている」

 マドルが台詞を終えると、背後のガラスの塔に渡邉 佐清禍の血文字が浮かび、それが流れ落ちるように消える。

「ふ、ふざけんじゃ無いよ!」
「どこに証拠が、あると言うのですか!」
「冗談もたいがいにしないと、訴えるよ!」

「随分な、慌て様ですね。サキカさんが生きていると、お困りのコトでもあるのですか?」
「そ、それは……」
「別に、無いさ」

「我輩には、そうは見えませんね。サキカさんが生存しているのであれば、浴室で発見された首無し少女はいったい誰なのか?」

「さ、さあね」
「わたし達には、関係が…」

「貴女方は、サキカさんの替わりとなる少女を用意できた。この孤児院にも、サキカさんと同年代の少女は大勢いる。身寄りの無い少女に、サキカさんと同じ服装をさせて、殺人のあった重蔵氏の館へと向かわせたのではありませんか?」

「な、なるホド。同じ服装の見ず知らずの小娘なら、警備の目も掻い潜れるって寸法か!」

「モチロン、代役となった少女は、自分が首を落とされて殺されるとは、露(つゆ)にも思わなかったでしょう。孤児院では見れない豪華な家具や食べ物をエサに、貴女方は少女を送り出したと、我輩は考えているのです」

 マドルの推理劇は、終焉(クライマックス)を迎えようとしていた。

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