計画されていた反逆
「オレの剣、フェーズ・ド・ア・レイの光弾は、どこまでもお前を追いかけるぜ!」
ペイト・リオットの剣から放たれた光弾は、避けようとするミノ・テリオス将軍を自動で追尾する。
「少年と思って、侮(あなど)ってしまったな……」
ミノ・テリオス将軍は、ジェイ・ナーズを振って鏡を出現させると、その中へと入り込んだ。
「チッ! 鏡の中へと、逃げ込みやがったか。フェーズ・ド・ア・レイの光弾と言えど、鏡ン中までは入れ無ェからな」
目標を失った光弾は、1斉に上空へと舞い上がる。
「そんなら、イヤでも出て来られるようにしてやるぜ!」
ペイト・リオットが、黒鉄色の剣を観客席のパルシィ・パエトリア王妃に向けた。
すると、上空から光弾が、王妃に目掛けて急降下を開始する。
「見くびられたモノですね。光の矢(シャイン・アロー)!」
麗(うるわ)しの王妃は、金色の長髪を靡(なび)かせながら光の矢を放つ。
光弾と矢は正面衝突し、全てが相殺(そうさい)され消し飛んだ。
「マジかよ。王妃が魔術師だってウワサは、本当だったみてェだな!」
苦虫を噛み潰したような顔をする、ペイト・リオット。
「リオット、アンタの後ろ!」
「背中に、鏡が……」
「危ない、避けて!」
父親を失ったばかりの、グリィ・ネ、ズリィ・ネ、ブリィ・ネが叫ぶ。
「チイィッ!!」
ペイト・リオットは、間一髪でミノ・テリオス将軍の剣を受け止めた。
「ほう。中々、反応が鋭いな」
「敵に褒められたって、嬉しか無ェよ!」
鍔(つば)迫り合いを終えると、2人は大きく間合いを取る。
「お前に問う。お前たちが命をかけたところで、我らがラビ・リンス帝国は揺るがぬ。犬死にとなるコトが、解らんのか?」
「へッ、ソイツァ、どうかな?」
再び剣を構える、ペイト・リオット。
「やはりな。キサマらには、首魁(しゅかい)が他に居るのだな」
「ケッ! 誘導尋問だったのかよ」
唾(つば)を吐き捨てながら、赤毛の少年が言った。
「ま、いつかは自分が王になるとかほざいてる、おかしな野郎だがよ。なんでかは解らんが、ソイツの言葉は信じる気になるんだ」
「そうか。それが王に必要な、最も大切な資質かも知れんがな……」
「何か、言ったか?」
「別に……」
ペイト・リオットと、ミノ・テリオス将軍は、再び剣を交える。
崩れた闘技場にて、激しい戦いを繰り広げた。
「大変ですよ、テリオス。クレ・ア島を、多数の軍艦が取り囲んでいます!」
警備に出ていたミノ・テロぺ将軍が、慌てて闘技場に入って来る。
「へへッ! ソロソロ外の連中も、動き出したか。これで、ラビ・リンス帝国もお終いだぜ!」
光の弾を飛ばしながら、軽口を叩くペイト・リオット。
「お前たちは、揺動と言うコトか。してやられたな」
「呑気に構えている場合では、ありませんよ。すでに港が、砲撃されてしまってます」
同僚にモノ申す、ミノ・テロぺ将軍。
「なんだと! 大海の7将の艦隊は、何をしている!?」
「どうやら、彼らの艦隊が帝国を裏切って、攻撃をしている模様です。もちろん、7個艦隊全てが敵に回ったとは、思いませんがね」
「すでに敵の調略の魔の手が、この強大なるラビ・リンス帝国に伸びていたと言うのか!」
珍しく、激昂するミノ・テリオス将軍。
「そう言うこった。オレたちは、ラビ・リンス帝国に弑逆(しいぎゃく)され、その尖兵としても戦わされて来た。これからは、オレたちの若き王が、アンタらを軍門に降してやるぜ!」
「小賢しいマネを……これ以上、キサマらに時間をかけている場合では無くなった。勝負を、急がせて貰うぞ!」
「オレとしちゃあ、時間は有り余っている。まあ、じっくり戦おうぜ」
赤毛の少年は、あえて間合いを開け、光弾の長距離攻撃でミノ・テリオス将軍をいなす。
「どうやら闘技場(ここ)にも、敵の間者が入り込んでいたようですね」
ミノ・テロぺ将軍も、ノコギリのような刃をした剣を抜いた。
軍艦からの砲撃音が轟き、剣や槍がぶつかる金属音が響き渡る闘技場。
「ン……なんだ……?」
その時、ルーシェリアの膝の上に頭を乗せていた、蒼髪の勇者が目を覚ました。
前へ | 目次 | 次へ |