ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第13章・92話

計画されていた反逆

「オレの剣、フェーズ・ド・ア・レイの光弾は、どこまでもお前を追いかけるぜ!」
 ペイト・リオットの剣から放たれた光弾は、避けようとするミノ・テリオス将軍を自動で追尾する。

「少年と思って、侮(あなど)ってしまったな……」
 ミノ・テリオス将軍は、ジェイ・ナーズを振って鏡を出現させると、その中へと入り込んだ。

「チッ! 鏡の中へと、逃げ込みやがったか。フェーズ・ド・ア・レイの光弾と言えど、鏡ン中までは入れ無ェからな」
 目標を失った光弾は、1斉に上空へと舞い上がる。

「そんなら、イヤでも出て来られるようにしてやるぜ!」
 ペイト・リオットが、黒鉄色の剣を観客席のパルシィ・パエトリア王妃に向けた。
すると、上空から光弾が、王妃に目掛けて急降下を開始する。

「見くびられたモノですね。光の矢(シャイン・アロー)!」
 麗(うるわ)しの王妃は、金色の長髪を靡(なび)かせながら光の矢を放つ。
光弾と矢は正面衝突し、全てが相殺(そうさい)され消し飛んだ。

「マジかよ。王妃が魔術師だってウワサは、本当だったみてェだな!」
 苦虫を噛み潰したような顔をする、ペイト・リオット。

「リオット、アンタの後ろ!」
「背中に、鏡が……」
「危ない、避けて!」

 父親を失ったばかりの、グリィ・ネ、ズリィ・ネ、ブリィ・ネが叫ぶ。

「チイィッ!!」
 ペイト・リオットは、間一髪でミノ・テリオス将軍の剣を受け止めた。

「ほう。中々、反応が鋭いな」
「敵に褒められたって、嬉しか無ェよ!」
 鍔(つば)迫り合いを終えると、2人は大きく間合いを取る。

「お前に問う。お前たちが命をかけたところで、我らがラビ・リンス帝国は揺るがぬ。犬死にとなるコトが、解らんのか?」

「へッ、ソイツァ、どうかな?」
 再び剣を構える、ペイト・リオット。

「やはりな。キサマらには、首魁(しゅかい)が他に居るのだな」
「ケッ! 誘導尋問だったのかよ」
 唾(つば)を吐き捨てながら、赤毛の少年が言った。

「ま、いつかは自分が王になるとかほざいてる、おかしな野郎だがよ。なんでかは解らんが、ソイツの言葉は信じる気になるんだ」

「そうか。それが王に必要な、最も大切な資質かも知れんがな……」
「何か、言ったか?」
「別に……」

 ペイト・リオットと、ミノ・テリオス将軍は、再び剣を交える。
崩れた闘技場にて、激しい戦いを繰り広げた。

「大変ですよ、テリオス。クレ・ア島を、多数の軍艦が取り囲んでいます!」
 警備に出ていたミノ・テロぺ将軍が、慌てて闘技場に入って来る。

「へへッ! ソロソロ外の連中も、動き出したか。これで、ラビ・リンス帝国もお終いだぜ!」
 光の弾を飛ばしながら、軽口を叩くペイト・リオット。

「お前たちは、揺動と言うコトか。してやられたな」
「呑気に構えている場合では、ありませんよ。すでに港が、砲撃されてしまってます」
 同僚にモノ申す、ミノ・テロぺ将軍。

「なんだと! 大海の7将の艦隊は、何をしている!?」
「どうやら、彼らの艦隊が帝国を裏切って、攻撃をしている模様です。もちろん、7個艦隊全てが敵に回ったとは、思いませんがね」

「すでに敵の調略の魔の手が、この強大なるラビ・リンス帝国に伸びていたと言うのか!」
 珍しく、激昂するミノ・テリオス将軍。

「そう言うこった。オレたちは、ラビ・リンス帝国に弑逆(しいぎゃく)され、その尖兵としても戦わされて来た。これからは、オレたちの若き王が、アンタらを軍門に降してやるぜ!」

「小賢しいマネを……これ以上、キサマらに時間をかけている場合では無くなった。勝負を、急がせて貰うぞ!」

「オレとしちゃあ、時間は有り余っている。まあ、じっくり戦おうぜ」
 赤毛の少年は、あえて間合いを開け、光弾の長距離攻撃でミノ・テリオス将軍をいなす。

「どうやら闘技場(ここ)にも、敵の間者が入り込んでいたようですね」
 ミノ・テロぺ将軍も、ノコギリのような刃をした剣を抜いた。

 軍艦からの砲撃音が轟き、剣や槍がぶつかる金属音が響き渡る闘技場。

「ン……なんだ……?」
 その時、ルーシェリアの膝の上に頭を乗せていた、蒼髪の勇者が目を覚ました。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第11章・第27話

好奇心旺盛な助手

「わたしには、あの子を殺す動機がありません!」
 普段は穏やかな伊鵞 昴瑠(いが すばる)の怒声が、舞台からドーム会場へと響き渡った。

「そ、そりゃ、そうですよねェ」
 警部の野太い声が、たじろいでいる。

「わたしは、遺産の相続権を放棄しております。あの子を殺したマスターデュラハンが、遺産目当ての犯行であれば、わたし以外の人物を疑うべきではありませんか!」

 けれどもスバルさんの怒声は、少し遠くから聞えて来ている気がした。

「吾輩は、スバルさんの部屋のドアの前に立っていた」
 見えない館の、状況を語るマドル。

「どうやら警部は、スバルさんの逆鱗に触れてしまったようだね。普段は温厚な彼女が、ここまで激昂するなんて、よほどプライドを持ってハリカさんを保護していたか……あるいは……」
 マドルは、歩き始めた。

 当然、スバルさんの部屋の前から立ち去ったのだろう。

「館での取り調べは、警部に任せるとしよう。吾輩は館を出て、外での調査を始めるコトにした」
 マドルが歩を進める先には、青い瞳に、白い肌の可憐な少女が立っていた。

「マドルさん、お出かけですか?」
 彼女は、雪のような真っ白な髪を、頭の左右から長く垂らしている。

「ええ、ハリカさん。少々、気になるコトがありましてね」
「それは、どの様な……こ、これはわたしとしたコトが、失礼致しました!」
 慌てて頭を下げる、嗅俱螺 墓鈴架(かぐら ハリカ)。

「ハリカさんは、本当に好奇心が旺盛な方なのですね。探偵の仕事に、興味がお有りで?」
「は、はい。大いに、有りますわ」
「どうです。吾輩に、同行しませんか?」

「よ、宜しいんですの?」
 真っ白な髪の先を指に巻き付けながら、マドルの顔色を伺うハリカ。

「実は、外での調査の1つは、嗅俱螺家にまつわるモノ。もう1つは、亡くなった竹崎弁護士に関連するモノなのですよ」
「それでしたら、わたしも微力ながらお役に立てるかも知れません!」

「警部の部下に、今日は外泊すると話は通してあります。同行、願えますか?」
「はい、喜んで!」
 2つ返事で、快諾するハリカ。

「こうして吾輩たちは、館を離れるコトにした。彼女を同行させたのは、今のところ館でしか殺人事件が起きていなかった……と言う理由もあるね」
 観客席に、ハリカを同行させた理由を述べるマドル。

「つまりはハリカちゃんを、危険な館から連れ出したかったのか」
「でも、ホントにそれだけかしら」
「探偵本人が、そう言ってんジャン。他に、どんな理由があんだよ!」

「例えば、ハリカが犯人な可能性もあるワケじゃない」
「ま、まあ、無くは無いか。でもそれだと、犯人と探偵が2人きりだぜ」
「あえて、監視下に置いたのかもよ」

 観客が推理を披露し合っている間に、墓場セットが黒いシルエットとなり、舞台裏の背景が大正モダンな街並みへと変わっていた。

「まずは、竹崎弁護士の事務所を訪ねましょう。彼は生前、弁護士組合に所属していたから……」
「お知り合いの弁護士や、法律関係の方々に、なにか事件の手がかりになるようなコトを、話してらしたかも知れないんですね!」

「は、はい。話が早くて助かります」
「では、手分けして聞き込みと参りましょう」
 ハリカの両手が、マドルの手を握る。

「こうして吾輩とハリカさんは、2手に別れて聞き込みを行った。別れたと言ってもそれ程大きな事務所では無く、少なくとも5分以上、吾輩にの前から彼女が消えるコトは無かった」
 竹崎弁護士での様子を語る、マドル。

「マドルさん、なにか解りましたか?」
「ええ、それなりに。そっちは、どうです?」

「実は、竹崎弁護士の後輩の方が、生前に奇妙なコトを聞いたと仰っておりまして」
「いったい、何と言われてたのです?」

「はい。遺言状は全て、偽せ物だったかも知れない……と」
 ハリカは、言った。

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キング・オブ・サッカー・第10章・EP003

あるメタボ監督の決断2

『カラン、カラン』と、ドアの上に付いたベルが鳴り、学生服姿の2人の男が喫茶店へと入って来る。

「おッ! 来たね、2人とも。ここは倉崎の奢(おご)りだから、まあ座ってよ」
 メタボ監督が、2人を自分たちの席に座らせ、呼び出し鈴を押した。

「雪峰に、柴芭じゃないか。お前たち、学校帰りか?」
「はい。今、終わったところです」
 倉崎 世叛が、学生2人に問いかけると、優等生然とした1人が答える。

「ではお言葉に、甘えさせていただきましょう。ボクは、アイスコーヒーで」
「オレも同じで、お願いします」
 丁度近くに居た女性店員に、注文する柴芭と雪峰。

「倉崎のサイフなんだから、もっとハデに注文して構わないよ?」
 遠慮を知らないメタボ監督は、どさくさ紛れにフィッシュフライバーガーを注文した。

「ですが、いくら倉崎さんでも、1年目のサッカー選手の年俸を考えると……」
「交際費として減価償却できるかも、解らないですしね」

「実は2人を呼んだのは、その為よ」
 倉崎に真面目な視線を向ける、メタボ監督。

「デッドエンド・ボーイズは、スポンサーを集めないとダメね」
 その時、メタボ監督が注文していたアイスココアが、グラスから溢(あふ)れ出た。

「ウワットット!? アイスが解けちゃって、ココアが……」
 慌ててアイスをスプーンですくって食べる、メタボ監督。
けれども、ドリンクココアの上にソフトクリーム並みに盛られたアイスは、中々減らない。

「チョ、チョット、ココアが零れてテーブルが!」
 メタボ監督は、1人パニックになっていた。

「あ、あの、セルディオス監督。お言葉ですが……」
「それ、ココアを先に飲み干した方が、早いのでは?」
 雪峰と柴芭が、冷静に言った。

「へッ……そ、それを先に言うね!!!」
 慌ててストローで、ココアを飲み干すメタボ監督。
ココアの水位が下がって、溢れ出るコトは無くなった。

 雪峰と柴芭が、汚れたテーブルをお絞りで拭く。
バツの悪くなったメタボ監督は、ココアとその上のアイスを食べ終わるまで、間を開けた。

「さて倉崎、話を本題に戻すよ。デッドエンド・ボーイズは、本格的にスポンサー集めをしなきゃならない時に来てるね」

「はい。それはオレも、前々から考えていました」
 倉崎が、メタボ監督の忠告に同意する。

「今は彼らも高校生で、給料が8万とかバイト並みの金額で納得して貰ってますが、いずれは彼らも大人になる。その場合、オレの給料だけでは到底足りなくなります」

「そうね。彼らが、サッカー選手として成長を続ければ、もっと多くの給料を求めるようになるね」

「日本では、金の交渉事はタブーのような文化がありますが……」
 雪峰が、言った。

「雪峰、それは日本独特のおかしな考えよ。世界じゃ、会社に入るのでさえ契約ね。仕事に対する金銭の要求は、プロとしては当然の行為だし、クラブも選手もお互いの主張をぶつけ合うのが普通よ」

「確かに、日本の方が世界基準から、外れているのかも知れませんね」
 アイスコーヒーを掻きまわしながら、納得する柴芭。

「日本だと、義理だの人情だの金銭に関係のないコトで、働かされている人多いね。ブラジルじゃ、考えられないよ」

「ですが正直、スポンサーを探すと言われても、どうするばイイのやら、サッパリで……」
「倉崎は、そっち系は苦手だからね。だから、2人を呼んだのよ」
 メタボ監督は、ビーフシチューにエビフライを食べ始めた。

「倉崎さん。あえて提言します。クラブとしてのデッドエンド・ボーイズの、代表取締役をどうするか決めるべきかと」

「このまま倉崎さんが続ける場合、ご自身の所属する名古屋リヴァイアサンズの遠征など、かなりの期間チームを離れるコトになります」

「確かに、雪峰や柴芭の言う通りではあるが、退くか代理を立てろってコトか?」
「はい。やはり、サッカークラブも会社です」
「給料の支払いなどに不備があれば、最悪税務署なりから監査が入りますからね」

「そ、それは困る!」
 倉崎 世叛は、頭を抱えた。

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一千年間引き篭もり男・第08章・84話

重力下の再会

 ゼーレシオンと、その剣に刺し貫かれたツィツィ・ミーメ。
2機のサブスタンサーは、見えないブラックホールへと急激に引き寄せられていた。

「このままじゃ、ブラックホールに飲まれて消滅してしまうぞ。ミネルヴァさん、聞いてるか!?」
 ボクは、ツィツィ・ミーメの大きなスカートに巻き付いた、ブリューナクの光の球と鎖を消し去る。

 フラガラッハを、ツィツィ・ミーメの胴体から引き抜くと、胸のコックピットハッチを斬り飛ばした。

「今から、そっちへ行く。なんとか2人で、ネメシスの重力から脱出するんだ!」
 ボクは、ゼーレシオンをしっかりとツィツィ・ミーメに固定し、巨人(ゼーレシオン)との1体化(リンク)を解除する。

「宇宙服を着て、宇宙遊泳か。布団の中で引き籠っていた頃のボクなら、絶対にあり得ないと決めつけていた未来だな……」
 氷の要塞(コキュートス)で装備させて貰った宇宙服で、深淵の宇宙へと飛び出すボク。

「ゼーレシオンの方が、1体化していただけあって、遥かに扱い易いな」
 宇宙服の各部にある噴射部から、気体を宇宙に散らしながら、ツィツィ・ミーメのパックリと開いたコックピットに向かって跳んだ。

「ミネルヴァさん……」
 異形のサブスタンサーのコックピット内部は薄暗く、大きな卵状のシートに少女が座っている。

「ボクが、解かるか?」
 コックピットに辿り着くと、ボクはミネルヴァさんとヘルメットを突き合わせた。

 少しピンク色を帯びたヘルメットバイザーの向こうに、時澤 黒乃の顔が見える。
ミネルヴァさんは、地球のラグランジュポイントにあるコロニーで、若き日の少女の姿へと戻っていた。

「元々貴女は、黒乃を大人にしたみたいな女性(ひと)だった。始めて顔を合わせたときは、キミが1000年前の約束を果たしてくれたのだと思ったよ……」

 1000年前の小さな都市の、小さな山にある忘れ去られた鉱山。
その地下深くにある坑道に置かれた、2つの冷凍睡眠カプセルの前で、彼女は確かに言ったんだ。

『どんなに時が流れても、アナタの傍には必ずわたしがいるから』

 ボクは、その言葉を信じて、1000年もの永い眠りに就く。
けれども目を覚ました時、彼女はすでにこの世界には居なかった。

「宇宙斗……」
 ピンク色を帯びたバイザーの中の、少女の唇が小さく動く。

「ミネルヴァさん、ボクが解かるんだな。そうだ、ボクは群雲 宇宙斗だ!」
 地球の、かつて日本と呼ばれた八王子の街での戦闘で、彼女は放射能の雨が降り注ぐ大地に投げ出され、亡くなってしまった。

「解かるわ、宇宙斗。わたしは貴方に、地球の未来を託した」
「そんな重たいモノ、託されたってどうするコトも……それより、帰ろう。キミは、時の魔女になんか操られてはダメな女性だ」

 彼女のクワトロテールが、紫色の光に包まれ、ヘルメットから伸びている。
その1束には、時澤 黒乃の形見である、星のカタチをした髪留めが結ばれていた。

「今、貴方の目の前に居るわたしは、ミネルヴァの残光に過ぎないのよ。生き還ったところで、もはやわたしに役割りは無い。帰る場所なんて無いわ」

「あるじゃないか! キミが愛した、地球だ……」
 ボクの両手が、ミネルヴァさんの両肩を掴んでいる。

「わたしは、地球を愛してなど居ない。ゲーが決定した地球の意志を、太陽系に反映させる為に存在していただけ……」

「だったら、どうして地球をボクに託した。ゲーの命令を聞きつつも、キミは地球を愛し、地球の幸せな未来を望んだんじゃ無かったのか!」
 ミネルヴァさんの肩を握る手に、力が入ってしまった。

 ツィツィ・ミーメとゼーレシオンは、尚もネメシスに向け、加速を続けている。

「地球は、人類にはもはや取り返しのつかない状態になってしまった。何もかもが、遅すぎたのよ」

「そうかも知れない。でも、可能性はゼロじゃ無いハズだ」
「ゼロで無くとも、限りなくゼロに……」

「解ってる。確かに今はそうだ。でも人類は、ボクが1000年もの間眠りこけている間に、火星や月を人類が居住可能な場所へと変えたんだ」

 ボクは、人類が1000年の間に成し遂げた、偉業の数々に敬意を感じていた。

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・91話

ペイト・リオット

 大魔王の去った闘技場に現れた、周辺諸国からの使者たち。
大量の貢物を携(たずさ)え、7人の少年と7人の少女の奴隷を伴(ともな)っている。
けれども使者たちは、反抗の意思を示した。

「フッ……お前たち使者風情が、ラビ・リンス帝国に対して反旗を翻(ひるがえ)すつもりか?」
 ミノ・テリオス将軍が、使者たちに鏡の剣を向ける。

「へッ、そうよ。オレの名は、ペイト・リオット。オレの国は、お前たちラビ・リンス帝国に蹂躙され、国土は荒廃し大勢の人間が死んだ。積年の恨み、晴らさせて貰うぜ!」
 奴隷として連れて来られたハズの、7人の少年の1人が剣を抜いた。

 彼は赤毛の短髪で、筋骨隆々の鍛えられた身体に、皮の鎧を装備している。
黒鉄(くろがね)の武骨な剣を持ち、左腕に鉄のバックラーを装備していた。

「悪いが、情報が足りぬな。我がラビ・リンス帝国が支配した国は、大方そんな有り様なのだ」
 ミノ・テリオス将軍は、全く動じない。

「澄ました顔しやがって。その威張り腐った態度が、気に入らないんだよ!」
 使者の隊を率いていた大柄な男が、突然ミノ・テリオス将軍に襲い掛かった。

「キサマも、歯向かうか。どうやら、最初から計画されていた様だな」
 尚もクールな、ミノ・テリオス将軍。

「なッ!?」
 襲い掛かった男は既に、宙に浮かぶ鏡の中に閉じ込められていた。

「シィニ・スさん!?」
 ペイト・リオットが、叫んだ。

「シィニ・スだと? この顔、覚えがある。旅人を襲っては、怪力で2つの木をネジ曲げ、旅人の両足に結び付け股を裂いて殺す、殺人鬼の名だ」
 鏡の中の男の顔を確認する、ミノ・テリオス将軍。

「お、親父が鏡の中にッ!?」
「キ、キサマ、親父を鏡から出しやがれ!」
「さもないと、生きて帰れねェかんな!」

 同じく奴隷の7人の少女たちの3人が、乱暴な言葉を吐き捨てる。
少女たちは、黒髪の長髪、オレンジ色の短髪、モスグリーンのお下げで、瞳の色もそれぞれ違っていた。
けれども、全員が右手に曲刀を持ち、左手に丸い盾を装備している。

「お前たち、この者の身内か?」

「そ、そうだ!」
「親父は、身寄りの無いアタイらを育ててくれたんだ」
「いいから、親父を出しやがれ!」

「大方、襲った旅人の伴侶や子女を襲い、生まれた娘たちであろう」
 ミノ・テリオス将軍が問い質すと、男はニヤリと笑った。

「お前たちラビ・リンス帝国が搾取(さくしゅ)したお陰で、盗賊に身を窶(やつ)す他無かったのよ。お前らがオレの行為を非難するのは、お門違いってモンだぜ!」

「盗人猛々しいとは、良く言ったモノよ。地獄にて、自らの罪を悔い改めるがイイ……」
 雷光の3将が筆頭は、鏡の剣ジェイ・ナーズで鏡を1閃する。

「ガアアアァァァーーーーッ!?」
 鏡は粉々に砕け、地面に散らばった。
粉砕された鏡の欠片それぞれから、男の肉体が肉片となって現れる。

「イヤアァア!」
「オ、親父が!」
「……そ、そんな」

 シィニ・スの娘と称する3人の少女たちは、混乱し涙を流した。

「グリィ・ネ、ズリィ・ネ、ブリィ・ネ。悲しむのは、後にしろ。元より、命を捨てるのは覚悟の上。オレたちには、目的があるコトを忘れるな!」
 ペイト・リオットが、少女たちを一喝する。

「ほう。お前たちの、目的とはなんだ?」
 ミノ・テリオス将軍が、整った顔をペイト・リオットへと向けた。

「知れたコト。ミノ・リス王を討ち、我ら抑圧された国々を開放する。その為であれば、この命など惜しくは無い!」
 赤毛の少年は、剣を抜き将軍に向け斬りかかる。

「同じ結果となろうコトが、解らんのか?」
 ミノ・テリオス将軍は、再び鏡の剣を振るった。

「お前の剣の弱点は、見抜いている!」
 ペイト・リオットの武骨な剣が、眩(まばゆ)い光を放つ。

「この少年、光の魔法を操るのか!?」
「光の中じゃ鏡は、オレの姿を映せねェからな」
 目を覆う将軍に、ペイト・リオットは追撃を仕掛けた。

「まだまだ行くぜ。フェーズ・ド・ア・レイ!」
 黒鉄の剣の左右が展開し、中から長細い物体が射出される。

「光の弾だと!?」
 発射された光の自動追尾弾は、回避を試みるミノ・テリオス将軍を、どこまでも追い駆けた。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第11章・第26話

2人の少女の首

「掘り返された、2人の少女の首。1つは首桶に入っていたため保存状態が良く、伊鵞 兎愛香(いが トアカ)さんであるコトが判明した。シャンデリアに潰された胴体の首とも、断面がほぼ一致したよ」

 墓暴きで発見された2つの首について、観客席に向け語るマドル。

「2人の少女にとっては可哀そうだとは思うが、掘り出された2つの首は、マスターデュラハンに向けた重要な手がかりになるだろう。これでやっと、事件の捜査が進展しそうだぜ」
 警部の声にも、少しだけ落ち着きがも出っていた。

「でもね、警部。もう1つの首は腐敗が進み過ぎて、10台の少女の頭部とは断定されたモノの、確実に渡邉 佐清禍(わたなべ サキカ)さんの頭部とは、判明しなかったのだろう?」

「だがサキカちゃんの頭で、ほぼ間違い無いだろうぜ。何せ2つの首は、同じ墓の下に埋まっていたんだからよ」
 楽観論を呈(てい)する、警部。

「普通に考えれば、そうだろうね……」
 マドルは、言った。

「吾輩の生きていた時代は、DNA鑑定などの高度な科学的鑑定方法は存在せず、鑑識のレベルも現代に比べれは稚拙なモノだった」
 同時に、観客たちに時代的な前提条件を説明する。

「何か、気に喰わ無ェところでもあンのか?」
「まあね。2つの首の状態が……余りに違い過ぎると、思わなかった?」

「そりゃ、思ったがよ。2つの首は、別々の時に埋められたんじゃ無ェのか」
 ゴホンと咳(せき)ばらいをし、自分の推理を説明し始める警部の声。

「例えば、最初の事件で殺された伊鵞 兎愛香(いが トアカ)さんの首は、首桶に収められるくらいの余裕があった。だが、第2の殺人である渡邉 佐清禍(わたなべ サキカ)ちゃんの時は、雨も降りまくって余裕がなく、仕方なく生首のまま埋めたって線だ」

「うん。その可能性は、けっこうあるよ。2つの首が、別々の日に埋められたのなら、その状態が極端に違っているのも説明が付く」
「そう言う割りにゃ、納得して無ェ顔だな。まだ他に、可能性があるってのか?」

「簡単な、話さ。犯人は、伊鵞 兎愛香(いが トアカ)さんの首を丁重に扱い、もう1つの首をぞんざいに扱った」

「どうして、2人の首の扱いに差を付ける必要が……」
 言いかけて、言葉を詰まらせる警部の声。

「アン? なんで2人の首の扱いが、違ったんだ?」
「まだ解らないの。トアカさんのコトを、大切に思っている人ならそうなるでしょ!」
「トアカさんを大切に……って、まさか!?」

 観客たちの推理も、核心を突き始めている。

「なる程な。お前が、言いたいコトが解ったぜ。オレとしては、疑いたくは無いが、私事と公事は分けにゃならんか。ヤレヤレだぜ……」

 ギィっと、扉を引く音が鳴った。

「警部は、部屋を出て行った。警部も、そこまで頭が回らない人じゃない。恐らく向かったのは、伊鵞 昴瑠(いが すばる)さんの部屋だろう」
 マドルは、舞台を歩き始める。

「マスターデュラハンが、スバルさんである可能性は高い。もし彼女が犯人であれば、彼女が愛した実の妹の娘であるトアカさんの首を、丁寧に扱ったのも説明が付く」

「そんなに単純な、モノかねェ?」
 舞台のマドルの台詞に、舞台裏から反論する久慈樹社長。

「ですね。確かにトアカさんが犯人であれば、首を丁重に扱ったのは説明が出来ますが、そもそもトアカさんを殺す動機が見当たりません」
 ボクも今回は、社長の意見に同調した。

「キミは、本当に探偵になれるぞ。今日のテストで結果が悪くとも、職に溢れる心配は無いな」
 本気なのかどうなのか、嘯(うそぶ)く久慈樹社長。

「そうならないコトを、願いますよ」
 ボクは、生徒たちがテストを受けているガラスの塔を見上げる。

 塔にに刻まれたデジタル時計の数字は、マドルたちが舞台に立ってから2時間が経過していた。

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キング・オブ・サッカー・第10章・EP002

あるメタボ監督の決断1

 名古屋の有名な喫茶店で、赤いビロードのシートに1人の太った男が腰を降ろす。
男は日系のブラジル人で、若い頃は高度なテクニックで鳴らしたサッカー選手だった。

「クリームココアとカレーカツサンド、あとビーフシチューとあんかけスパをお願いね」
 慣れた感じで、オーダーを店員に伝える男。

「倉崎は、何にするね?」
「オレは、アイスコーヒーで」
 太った男の前のシートに座った、男が答えた。

「畏(かしこ)まりました。クリームココアにカレーカツサンド、ビーフシチューにあんかけスパ、アイスコーヒですね」
「あ! あと、エビフライを追加よ」

「エビフライ追加で。畏まりました」
 オーダーを繰り返した女性店員は、注文を書き込んだ伝票を片手に、2人の男が座る席を離れる。

「今日呼び出された理由は……何となく、解っているつもりです」
 倉崎と呼ばれた男が、言った。

「忙しいトコ、すまないね。昨日もアウェーで、試合だったのに。でも1得点1アシストの活躍は、見事だったよ」
「いえ。オレが怪我明けってコトもあって、監督が試合後半の半ばには下げてくれましたから」

 向かい合った2人の男が話していると、さっきの女性店員がトレーを片手に戻って来た。

「アイスコーヒーに、なります」
 コーヒーとストロー、金属の小さなクリームカップをテーブルに置く、女性店員。
そのまま踵(きびす)を返して、去って行った。

「怪我の具合も良さそうで、何よりよ。さっそく、本題に入るね。倉崎も解ってると思うけど、やはりソロソロ限界が来てると思うよ……」
 メタボな男は、真剣な顔を目の前の男に向ける。

「海馬コーチの……コトですね?」
「1つは、そうよ」
「1つ? ……と言うと、まだなにか問題でも?」

「その話は、後でするね。まずは、海馬 源太(かいば げんた)。もはやプロのレベルで、戦って行けるキーパーじゃないね」

「はい。厳しいと思いますが、オレも同じ意見です」
 チームオーナーであり、高校生もである男は言った。

「厳しい? 自業自得ね!」
 メタボな男が、テーブルを叩く。
コップに入った水が、僅かに零れた。

「高校時代の大会でベスト8に入ったくらいでのぼせて、プロになってからは節制もせずに遊び歩いて、1年でクビ。奥さんにまで逃げられて、まったく情けないったら無いよ。プロじゃ、自分を制御できない人間は、生きていけないね!」

「クリームココアにカレーカツサンド、ビーフシチューにあんかけスパ、エビフライになります」
 男の前に、高カロリーな料理が並べられる。

「ご注文は、以上でよろしいでしょうか?」
「ああ、アリガト」
 倉崎が答えると、女性店員は伝票を伏せて去って行った。

「もっと早くから、キーパー問題の対処を始めて置くべきでした」
「今から後悔しても、仕方ないね。まずはウチの予算の範囲内で、獲得出来そうな選手を早急にリストアップよ。遅れれば、昇格なんて夢のまた夢ね」

「はい。実は死んだ弟のヤコブのノートに、キーパーもリストアップされていたんです。また一馬に頑張って貰おうかと、思っていました」

「そのキーパーも、高校生ね?」
 カレーカツサンドを頬張りながら話を聞いていた、メタボな男が問いかける。

「一馬たちと同じ、高校1年です」
「高校生……正直に言うよ、倉崎」
 カレーカツサンドは、1瞬にして男の胃袋に収まっていた。

「確かにウチの予算規模だと、安い給料の高校生で選手を揃えるのは、仕方ないとも思うよ。でも海馬をクビにするのなら、全員が高校1年生になってしまう。いくら地域リーグの2部とは言え、遠征もあれば平日に試合もあるね」

「アイツらも、オレと同じ高校生の学生ですからね。授業に出て勉強もしなきゃ行けないから、体の回復も遅れてしまう。かなりの負担を強いているのは、解っているのですが……」

「別に倉崎を、責めているワケじゃ無いよ。そろそろチームの体勢を、本格的に整えて行かなきゃならない時期に来てるね」
 メタボ男は、あんかけスパをフォークで巻きながら提言する。

「です……よね」
 倉崎は、アイスコーヒーの氷を、ストローでかき回しながら呟いた。

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