ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・44話

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ラ・ラーン

「ビュブロス、お前まで逝っちまったのかよ。せっかくお袋が、命と引き換えにしてまで甦らせてくれたってのによォ……」
 大魔王と化したダグ・ア・ウォンの破壊によってもたらされた道なき道を、必死に舞い戻る一行。

「人間って、どうしてこんな簡単に死んじゃうんだ……」
 前を行くバルガ王子は、後ろを振り返るコトは無かったが、やり切れない気持ちを抱えたままなのは、舞人には解かった。

「パレアナも、あのシャロリュークさんでさえ、死には抗(あらが)えなかった」
「え、ウソでしょ。シャロリュークって、赤毛の英雄のコトだよね!?」
 スプラが、驚きの表情で舞人を見る。

「お主は魔王とされておったから、知らぬのじゃな。赤毛の英雄はサタナトスの部下である、ケイオス・ブラッドの手によって殺されたのじゃ」
「そ、そんな……」

「人間とは、儚(はかな)き生き物よ。妾も人の身となったが故、その儚さには抗えぬであろうな」
 かつて魔王と呼ばれた少女が、小声で呟く。

「お喋りしとるヒマは、アラへんで。あの金属の巨人ども、岩を目ェから出る光線で溶かしながら、追って来よる!」
 アラドスが、背後の岩が溶け墜ちる爆音を耳にしながら、パーティーに注意を促した。

「王子、兄貴が稼いでくれた時間だ。絶対に、無事に逃げ切るぞ!」
 最前列に躍り出たベリュトスが、邪魔な障害物を両手の槍で吹き飛ばしながら、進路を切り拓く。

 その様子をずっと、巨大な目玉の魔物が捉えていた。
斥候の魔物の目に映った映像は、遠く離れた虚城の魔物の目にも映し出される。

「ククク。虫けらどもが、必死になって逃げ惑ているじゃないか」
 映像を見ながらほくそ笑む、亡国の虚城の玉座に座った少年。

「サタナトス様。巨人兵の足では、バルガ王子たちに逃げ切られてしまうと思われますが?」
「心配はいらないよ、アクト。あの遺跡を護っているのは、なにも巨人兵ばかりじゃ無いんだ」
 サタナトスは玉座を立つと、栗色の髪を2本のお下げにした少女の元へと歩み寄った。

「そうだろう、クシィー。クシィー・ギューフィン」
 金髪の少年は、栗毛の少女を抱き寄せる。
すると、少女のネックレスが蒼く光り輝いた。

「な、なんだ、なにが起きやがった!?」
「み、見て。空からなにか、降りて来るっしょ!」
「ホ、ホントだ。に、人間かな?」

 メディチ・ラーネウス、ペル・シア、ソーマ・リオが見上げた空から、3つの影がサタナトスとクシィーを囲むように舞い降りる。
大魔王ダグ・ア・ウォンや配下の5人の魔王らが居並ぶ王の間に現れた、全身を鎧で覆った者たち。

「い、一体、何者っすか?」
 ベク・ガルが、主に伺いを立てた。

「フフフ、彼らは彼女の護衛……親衛隊さ。最も『生前の彼女』の話だケドね」
 サタナトスは、腕に抱いていた少女を開放する。

『ワレラガ アルジ、クシィーサマ ニ キガイ ヲ クワエル モノ ハ、キョウセイテキ ニ ハイジョ スル』
 3体のうち、男性的なフォルムの黄金の鎧をまとった1体が、ノイズの混じった声を発した。

「コ、コイツ、喋りやがった!?」
「マジあり得ないっしょ。中身は、人間なのォ!?」
「兜を取って欲しいべ」

「恐らく中に、人間は入ってないと思うよ。仮に入っていたとしても、とっくにミイラ化してるんじゃないかな」
 サタナトスはほほ笑みながら、栗毛の少女の顔を覗き込む。

「クシィー、彼の名前はなんだい?」
「『ラ・ラーン』、炎と太陽の戦士……」
 生気の失われた顔で、答えるパレアナ。

「ラ・ラーンか、中々に勇壮な名前じゃないか」
 金髪の少年は、ラ・ラーンの周りを歩きながら観察した。
「太陽をモチーフにデザインされた黄金の鎧兜、腰にも剣をはいでいるし、黄金の翼も中々に美しい」

『キサマ ハ ダレダ。クシィーサマ ニ テキタイ スルノデ アレバ ヨウシャ ハ セン』

「ラ・ラーン。キミに敵対するつもりは無いが、キミの力を少しばかり見たいんだ。模擬戦に応じてくれるかな?」
『センシン ガ イクサ ヲ イドマレテ ニゲル ワケニモ イカヌ。ヨカロウ』

 全身を黄金の防具で固めた戦神は、鞘から黄金の剣を抜いた。

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