ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・56話

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人間とは……

「ヤレヤレじゃ、完全に劣勢ではないか。これは困ったのォ、ご主人サマよ」
 ルーシェリアは、サタナトスに注意を払いながらも、ベク・ガルの向こうで巻き上がった土煙を見た。

「フフフ、やはりその『能力』を、使うほか無かったようだね」
 サタナトスのヘイゼルの瞳も、漆黒の髪の少女の紅い瞳と同じ対象を写す。

「ざ、残念だケド……今のボクには……もうこれしか……ガアッ!」
 土煙が晴れると、そこには黒いオーラを纏った蒼い髪の少年が立っていた。
けれども少年は、苦しそうに胸を押さえている。

「ダ、ダーリン。その能力(ちから)は、使っちゃダメだって!?」
「なに余裕ぶっこいてるっしょ。お前の相手は、このペル・シアっしょ!」
 舞人を心配する、スプラ・トゥリーに、襲い掛かる黄玉の魔王。

 シドンとベリュトスも、それぞれの相手に完全に押され、舞人を助けるどころではない。

「サ……サタナ……トス、お前さえ……倒せば!」
 漆黒の闇に意識を支配されそうになるのを振り払い、舞人はサタナトスに向かって突進する。

『グハハ、小童が、やらせはせぬ!!』
 舞人の前に立ちはだかった、大魔王ダグ・ア・ウォンが4本の腕で竜巻を繰り出した。

「こんな……モノォォ!!!」
 黒いオーラを放つガラクタ剣が、4つの巨大竜巻を両断する。

「パ、パレアナが……生きていたんだ。絶対に……取り返す!!」
『グハハ、身のホドを弁(わきま)えぬ小童だ。周りを、よく見てみよ!』
 偉大なる蒼きドラゴンは、戦闘態勢を解除し4つの腕を組んでいた。

「な、なんじゃ……斬られたと思った竜巻が、1つの巨大な竜巻になっておるのじゃ!?」
「ぐッ……うわあッ!?」
 巨大竜巻にシェイクされ、空中高く舞い跳ぶ蒼き髪の少年。

「舞……人……」
 その時、クシィ―と名を変えた栗毛の少女の瞳に、ほんの一瞬輝きが戻る。
少女を手をかざすと、それだけで巨大竜巻が四散した。

「ガハッ!!!」
 竜巻が消えたコトで、落下し地面に叩きつけられる舞人。
ジェネティキャリパーで身体が強化されていなければ、危ない高さだった。

「へえ。キミたちって、そう言う関係だったんだ?」
 金髪の少年が、天使のように涼しい顔でパレアナを見る。
けれども栗毛の少女は、元の無機質な表情に戻ってしまっていた。

「因幡 舞人……考えてみれば、キミやルーシェリアと最初に出会ったのは、ニャ・ヤーゴとか言う街の近郊だった」

「あの時は、妾がキサマの腕を、切り落としてやったがの」
 会話を引き伸ばし、舞人が回復する時間を稼ごうとする、ルーシェリア。

「シャロリュークを完全なる魔王にしてやるつもりが、とんだ邪魔が入ったモノだよ。ま、その教訓が、海皇を大魔王にするとき活きたケドね」

「クッ……ソ。悪党が、学んでんじゃねェよ」
 瓦礫から立ち上がった、バルガ王子が言った。

「キミも、まだ生きていたのかい。死ぶといね」
「テメーを倒すまでは、オチオチ死んでられねェからな」

「まあいいさ。話を、戻そうじゃないか」
「確かご主人サマと、パレアナの話じゃたの」
 嘯(うそぶ)く、ルーシェリア。

「あまり気に留めてなかったケド、キミのご主人ってのはニャ・ヤーゴの出身なんだ」
「そうじゃの。妾の城も近くで、のこのこ退治に来よったわ」

「そしてボクは、クシィーをニャ・ヤーゴの教会から奪った。つまりキミたちは……」
 サタナトスは、蒼き髪の勇者に視線を移す。

「ボクとパレアナは……孤児で……お前の襲った教会で育った幼馴染みだ」
「へえ。ボクとキミは、境遇が似てるねえ」

「お前の故郷の村を探って……ボクもそう思った。ボクだって孤児だから……お前の気持ちが……少しはわかる」
 魔剣に意識を支配されないよう、争(あらが)いながら話す舞人。

「キミらは、孤児であっても人間だろう。ボクは魔族として、人間どもを滅ぼすつもりでいる」
「キサマとて、人間の血も流れておろうに」
「だからさ。ボクの中に流れる人の血が、そうさせるんだよ」

「人は……争うだけの生き物じゃない!」
「いいや。争うだけの生き物さ。血に飢え同族を騙し、理想とやらの旗の元で、互いに殺し合うのが人間なんだ」

 主張を曲げない2人の少年は、互いの剣を抜き身構えた。

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