ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・43話

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死にゆく者たち

 重厚な扉の向こうから現れた、褐色に輝く金属の巨大人型兵器。
全部で5体が確認でき、舞人やバルガ王子目掛けて襲い掛かって来た。

「う、うわあッ!!?」
 金属の拳が、舞人が数秒前まで居たドームの地面を陥没させる。

「ダーリン、だいじょうぶッ!?」
「なんとかね。でもコイツ、大きいのに凄いスピードだ」
 駆け寄って来たスプラに助け起こされる、蒼髪の少年。

「ビュブロス、ベリュトス。オメーらの武器を、ぶっ放せ!」
「おうよ、王子!」
「任せな!」

 まずはベリュトスの2本の槍が、先端から閃光を放った。
2つの光線が巨人の身体を横切り、直後に激しい爆発が発生する。

「やったか?」
 けれども漁師兄弟の弟は、巻きあがった爆煙の向こうに、巨人の赤く光る目を目撃する。

「まだだ、ベリュトス。オレがやる!」
 漁師兄弟の兄が構えた巨大な槍が、光の束を巨人の1体にブチ当てる。
弟の攻撃よりも更に大きな爆発が巻き起こり、辺り一面を炎が包んだ。

「今度こそ、やったな。それにしたって、凄まじい威力の槍だぜ。古代の兵器ってのはよ」
 バルガ王子は、燃え盛る炎を見ながら、ビュブロスの槍の威力に感心する。

「イヤ、まだじゃ。彼奴(きゃつ)らは、生きておるぞ!」
 ルーシェリアの叫びと同時に、炎の中から赤い閃光が走った。

「王子、危な……きゃああぁぁッ!?」
 バルガ王子を突き放す、ティルス。
赤い閃光は、王子に付き従っていた少女の身体を、瞬時に消滅させる。

「ティ、ティルスーーーーーッ!!?」
 ドームに、バルガ王子の絶望の声が響いた。

 赤い閃光は、炎柱の列となって大きく吹きあがる。
渦巻く炎の中から、ギシギシと音を立て姿を現す、金属の巨人の部隊。

「コ、コイツら、ビュブロスさんの槍を喰らってるのに、なんとも無いぞ!?」
「ご主人サマよ、これはとんでもない相手じゃ」
「そんなのが5体もいるなんて、どうしたら……」

 かつては魔王と呼ばれた2人の少女も、巨人の圧倒的な戦闘力の前に舌を巻く。

「ティ、ティルス……お前……死んだのか?」
 灼熱の床に転がった、氷の剣を見つめるバルガ王子。

「王子、彼女の死を悲しんでいるヒマはございません。ここは、撤退すべきです」
「ふざけるな、シドン。ティルスを殺したアイツらを放って置いて、オメオメと逃げろって言うのか!?」

「そうです。今の我々では、あの巨人たちに勝ち目がございません」
 シドンが説得する間にも、5体の巨人の金属の拳や、目から放たれる赤い閃光による激しい攻撃が、舞人たちや海皇パーティーにを襲う。

「ど、どないせいっちゅねん。こっちの攻撃は、まるっきり通らんでェ!」
 アラドスの双剣も、金属の巨人の装甲に傷すら付けられず跳ね返された。

「アレは恐らく、古代の超兵器じゃ。武器庫にあった古代の一般的な武器では、歯が立たんのじゃ」
「それってボクたちに、対抗手段が無いコトだよね?」
「不本意じゃがそうなるの、イカの小娘よ」

「王子、さあ早く!」
「イヤ、オレは帰れねェ。ティルスの仇を討つまでは……!?」
 そのとき若き海洋生物学者の拳が、王子の頬を打った。

「彼女の死を、無駄にするおつもりですか?」
「シ、シドン……オレは……」

「貴方はこれから、ダグ・ア・ウォンさまに替わって王となられるお方です。王となれば、ときに多くの味方の死に直面するコトでしょう。王とは、死んでいった者たちが命をとして生きた様を、礎(いしずえ)にして君臨せねばならぬのです!」

 シドンの必死の説得に、バルガ王子は涙を流しながら小さく頷く。

「この宮殿から、撤退する。引くぞ……」
 王子の決断に、海皇パーティーの残るメンバーが従った。

「だけど兄貴。コイツら簡単には、逃がしちゃくれねェぜ」
「そうだな、ベリュトス。お前、王子を頼むわ」
 兄の台詞に、弟は耳を疑う。

「な、なに言ってんだ、兄貴。王子の面倒は、これからも2人で……」
「そうしたいのは、山々だがな。これからは、お前が王子の面倒を見ろ」
「そ、そんな、どうしたってんだよ、兄貴!?」

「王子を、頼んだぞ……ベリュトス」
 兄は弟に対し優しく微笑むと、巨大な槍を手に炎の中へと消えていった。

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