ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第六章・EP032

f:id:eitihinomoto:20191113233812p:plain

サーファーVS小柄なキーパー

「金刺のヤツ、流石はサーファーと言うべきか。重馬場を苦にする事無く、ボールのイレギュラーも直ぐに軌道修正して、ライン際を駆け上がってるな」
 倉崎さんが、金刺さんのドリブルを評価する。

「それに金刺がドリブルしてるの、左サイドよ。対峙する曖経大名興高校の右サイドバック、左サイドの棚香に比べれば、大した相手じゃ無いね」
 セルディオス監督の指摘した通り、相手の右サイドバックをあっさりとかわした。

「よし、こっちだ、イソギンチャク!」
「裏にくれ、オレさまが決めてやる!」
 ペナルティエリアの、ニアサイドに紅華さん、ファーサイドに黒浪さんが進入する。

「やらせはしない!」
「裏は、任せろや!」
 けれども紅華さんには斎藤さん、黒浪さんには棚香さんがマークに付いた。

「誰がお前らなんぞに、パス出すっちゅうねん。ここはワイ自ら持ち込んで、キーパーかわしてシュート決めたるわッ!」
 左サイド際から、強引にペナルティエリアに進路変更する金刺さん。

「バッド(悪い)な判断ね、金刺。相手キーパーの川神は、背が小さい分、ボールへの飛び出しは一流で素早いよ」
 勇猛果敢に、ゴールを飛び出す川神さん。

「ゴールは、許さん。ボールは、貰ったァ!」
 金刺さんの足元目掛けて、低い体勢で迫る。

「ケッ、甘いわ」
 金髪ドレッドヘアのサーファーは、足元のボールをつま先でフワリと浮かした。

「どっちがだ。その程度は、読んでいる!」
 ネコのような素早さで瞬時に方向を変え、ボールに食らいつく小柄なキーパー。

「それがどないした。こっちは普段、自然の波(ウェーブ)を読んどんのや!」
 サーファーは浮いたボールを、空中で足裏を使って引き戻す。
それからボールの上で身体を半回転させ、川神さんに背を向け着地した。

「金刺のヤツ、相変わらず凄まじい滞空時間だな」
「普通なら、ボールを引くだけで終わってるね」
 やっぱ、サーファーって凄いんだな。

「クソ、コイツ。だが、ゴールに背を向けたままだ」
「せやな、しゃーないからゴールは譲ったるわ」
 金刺さんは、ペナルティエリアに走り込んで来た柴芭さんにパスを戻した。

「ナイスファイトです、金刺くん」
「やらせはしないよ」
 けれどもボランチの桃井さんが、柴芭さんの少し後を追う。

「ここは、決める!」
「させないと、言っている!」
 柴芭さんがシュートを放った瞬間、桃井さんのタックルが前を横切った。

「よし、脚には当てたぞ!」
 桃井さんの伸ばした脚に当たって、大きく跳ね上がるボール。

「だが、威力は死んで無い」
 けれども空中に舞い上がった柴芭さんのシュートは、かなり勢いを削がれたものの、相手から見てゴール左隅に向って飛んでいた。

「マズイ、間に合ってくれ!」
 金刺さんによって、右に釣り出されていた川神さんが、ゴールの逆サイドに必死に走る。
ハデなデザインのユニホームに身を包んだ小柄なキーパーが、伸ばした右腕でボールを止めた。

「アレに、反応するのか」
「でも、チョット間に合わなかったね」
 セルディオス監督が、ほんの少し先の未来を予見する。

「おっしゃ、決めたったでェ!」
 ゴールを決め、拳を突きあげる金刺さん。

 川神さんは、柴芭さんのシュートを止めはしたものの、片手で完全にキャッチするコトは出来ず、零れたボールを決められたんだ。

『ピ――――ッ!』
 審判を務める曖経大名興高校サッカー部の顧問の先生が、前半終了のホイッスルを鳴らす。
1番を背にした川上さんは、右腕を押さえながら引き上げて行った。

「ヤレヤレ、なんとか2点差で折り返せたな」
「つっても、まだ2点ビハインドだぜ」
 言葉を交わしながら引き上げて来る、2人のドリブラー。

「黒浪のいう通りだ、紅華。後半、お前たちが点を取らなければ、ウチは負ける」
「ヘイヘイ、わ~ってるよ、雪峰キャプテン。相手キーパーもどうやらケガしたみて~だし、まあなんとかなるだろ」

「そいつはどうかな、紅華」
「な、なんスか、倉崎さん。相手キーパーのケガは、演技だとでも?」
 ボクの押す車椅子に座る倉崎さんに、喰ってかかる紅華さん。

「イヤ、着地時に利き腕をケガしたのは、オレも見ていた。だがケガをしてくれなかった方が、良かったまであるぞ」
「言ってる意味が、解りませんよ」

「フフ、直ぐに解るさ……」
 不敵に笑う、倉崎さん。
ボクたちはやがて、その言葉の意味を知るコトとなる。

 前へ   目次   次へ