ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・39話

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深海の宮殿での激闘

「まさかオヤジと、こんな場所で戦うコトになるなんて、思ってもみなかったぜ」
 黒に赤とオレンジの、シャチのようなデザインのサーフボードで波を切る、バルガ王子。

 親子の決戦の場は、深海の海溝の下に眠る、失われた古代都市の中央に位置する宮殿であった。
王子は、父・大魔王ダグ・ア・ウォンが生み出した、巨大渦巻きの荒れ狂う表面を滑りながら間合いを詰める。

「王子、助かりやしたね。シドンが、咄嗟にボードを召喚してくれたお陰でさあ」
「サーフボードなんて遊びって思ってましたが、こんなカタチで役立つとはね」

 ビュブロスとベリュトスの漁師兄弟も、それぞれ舞人とスプラを背中に乗せながら、巨大なカジキマグロのようなサーフボードで王子の背中を追った。

『降らぬ稚戯で、なにを浮かれておる。そんなモノで我が攻撃が避けられるものか』
 大魔王は、再び深紅の三叉の槍を掲げ、更なる巨大渦巻きを発生させる。

「うわあぁ、ダーリン上、上!」
「ビュブロスさん、上から渦巻きが!?」
 渦巻きを滑る王子や舞人たちの上に、別の巨大な渦巻きが覆い被さろうとしていた。

「そいつァどうだかな。ティルス、頼んだぜ!」
「ハイ、王子」
 可憐な白イルカのようなサーフボードに乗った少女が、手にした細い剣を振るう。

「氷結の剣『コキュー・タロス』!!」
 ティルスの一撃によって、舞人たちを飲み込む寸前だった巨大渦巻きは凍り付き、天にそびえる氷柱となった。

「よっしゃあ、次はこっちの番やで!」
「アラドス、まだ接近するのは止せ」 

「わーっとるで、王子。この剣にゃ、こんな使い方もあるんやで!」
 マンタのようなサーフボードに乗った料理人見習いは、両手の剣から斬撃を繰り出す。
けれども攻撃は、大魔王に届く前に弾かれた。

「どうやら大魔王は、水の結界を張っているようですね。高圧の水が、攻撃を弾いたのです」
 カレイのようなサーフボードに乗った海洋生物学者は、大魔王の防御法を分析する。

「ンなアホな。水なんかで、斬撃を弾けるんか!?」
「ええ、それに高圧の水は、鋭利な刃物と化します。王子、お気を付けください」

『フッ、シドンか。確かにお前の言った通りよ。我が水の攻撃を、喰らうがいい!』
 大魔王ダグ・ア・ウォンは、周りの水を高圧で射出した。
鋭利な水のカッターが、海皇パーティーを襲う。

「こ、こんな攻撃、どうやって避けりゃイイんだよ!?」
「水に潜るのです。そうすれば水圧は、分散されます」
 シドンの指示で、渦巻きの中に潜るバルガ王子たち。

『小賢しいマネを。だが、水に潜っていては、我は倒せぬぞ』
 海溝の宮殿での死闘は、尚も続けられた。

 ~時は、少しだけ遡る~
カル・タギアを離れたサタナトスは、海の近くの主の失われた廃城で、部下の報告を受けていた。

「申し訳ございません、サタナトスさま。このアクト・ランディーグ、バルガ王子を討つと言う使命、果たせずに舞い戻ってきてしまいました」
 紫色をした海龍の7海将軍(シーホース)が、うやうやしく頭を下げる。

「ヤレヤレ、7海将軍で戻って来たのが、キミ1人とはね。やはり聖槍とは言え、天下7剣を素材にした魔王には遠く及ばないか」
 古びた玉座で、ため息を付く金髪の少年。

「ボクの『プート・サタナティス』も沈黙したままだし、どうしたモノか。ギスコーネは上手く、大魔王ダグ・ア・ウォンを復活させられたみたいだが」
 すると、海に繋がった玉座の間にある亀裂から、サメのような男が飛び出して来た。

「なんだ、7海将軍はまだ生き残っていたのか。キミ、名前なんだっけ?」
「あ、藍玉の魔王ベク・ガルです」
 陥没した顔を押さえながら、片膝を付くベク・ガル。

「サ、サタナトスさま、大変です。蒼い髪の勇者が凶暴化して、オレやスプラを……」
「キミは、剣を封じられたアイツにやられたのか?」

「は、はい。ですが蒼髪の小僧は、とんでもない闇の力でオレの顔をこんなにしやがったんです。直前に、スプラの断末魔みたいな悲鳴も聞こえました」

「闇の力? ヤツの剣に、まだ隠された能力があると言うのか!?」
 サタナトスは、アメジスト色の剣を天に掲げる。

「じゃあ、ボクの魔晶剣・『プート・サタナティス』にも、なにか秘められた力が?」
 太陽の光を受けた魔晶剣は、妖しく輝いていた。

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