撃闘の海皇パーティー
大魔王と化したダグ・ア・ウォンは、全身を蒼いウロコに覆われ、オレンジ色のヒレの付いた4本の大木のような腕を持っていた。
けれども今は、そのうち2本が地面に転がっている。
「お、王子。わたくし達の武器でも、ほぼ無効化していた大魔王サマを相手に、アラドスたちの武器の攻撃が通ってます!?」
氷の剣を手にしたティルスが、目を見開いた。
「こりゃあ驚いたぜ。ビュブロスの槍から放たれた光で、オヤジの腹に風穴があいてやがる!?」
大魔王の胸からは、無数の触手がマントのように生えていたが、その下の腹に大きな穴が穿(うが)たれている。
「この宮殿の武器庫で、手にしたと言っていたな。もしや、古代の武器か?」
若き海洋生物学者が、言った。
「そうだぜ、シドン。この槍みてーな武器の真ん中に穴が開いていて、そっから光が出るんだ」
「せやケド、無尽蔵に撃てるワケや無うて、このエネルギーパックをとっ替えなきゃダメなんや」
ベリュトスとアラドスが、使い終わったパックをそれぞれの武器から外し、新しいパックを付ける。
「ホレ、シドン。お前の武器だ」
漁師兄弟の巨漢の兄であるビュブロスが、シドンに武器を放った。
「この武器は、お前たちのモノとはずいぶん形が違う。グリップが2つあるところを見ると、両手持ちだな。ベルトが付いている……肩にかけて使うのか?」
シドンはベルトを肩にかけ、武器のグリップに両手をかける。
「オイ、シドン。のんびり観察してる場合じゃないぜ!?」
「危ない、大魔王さまのマントの触手が襲って来てます!」
シドンに向けて伸びる無数の触手に、注意を喚起(かんき)するバルガ王子とティルス。
『ビョッ、ビョッ、ビョッ、ビョッ、ビョッ!!』
引き金を引く、シドン。
光の弾が連射され、マントの触手を次々に破砕した。
「こ、これだけの連射スピード……弓の名手であっても、とうてい不可能なスピードだぞ!?」
光弾を連射しながらも、自らの武器の性能に驚く海洋生物学者。
「王子やティルスの武器も、担いで持ってきやしたぜ」
「ありがてェぜ、ビュブロス。シドンのと、似た感じだな?」
「わたしのは、お2人のモノより、かなり小型ですね」
「2人は、剣を持ってますからな。逆の肩にベルトをかけて使える大きさのを、持ってきました」
「気が利くじゃねえか。剣と同時に仕えるな。行くぞ、ティルス!」
「ハイ、王子!」
バルガ王子とティルスは、受け取った武器で無数の光弾をばら撒きながら、大魔王に攻撃を仕掛ける。
「ヨシ、オレらも王子に続くぞ、ベリュトス!」
「了解だ、兄貴!」
「ワイも、混ぜてェな!」
漁師兄弟と見習い料理人も、王子たちに加勢した。
6人のメンバーが揃った海皇パーティーは、大魔王と化した海皇を圧倒する。
「これは、何とも荒々しい戦いをする人たちだねェ」
「お前の国の王子と、その仲間であろうに。イカの小娘よ」
戦いを見守る、スプラ・トゥリーと、ルーシェリア。
「そりゃそうだケド、バルガ王子は問題児だったからね」
「え、そうなのか。街のみんなからは慕われていたし、そうは見えなかったケド?」
「最近はね。でも、昔は素行が悪くて、王子を廃嫡させられそうになったんだって」
「それであの、ギスコーネとか言う弟が、王子の座を狙っておったのじゃな」
「まあボクも王子より年下だから、詳しくは知らないんだ。今のも、人伝に聞いた話だしね」
舞人と、2人の少女が話しているうちにも、戦いの決着は付こうとしていた。
「王子、ダグ・ア・ウォンさまはかなり、弱っております」
「わかってるぜ、シドン。今、この黄金剣『クリュー・サオル』で、オヤジを黄金像に変えて封印してやるぜ!!」
バルガ王子の黄金の長剣が、腕を全て失っていた大魔王を斬り伏せる。
『ギャアアアァァァォォォーーーーーーンッ!!?』
苦しそうな断末魔と共に、ホールの床に崩れ落ちる巨体。
その身体は、見る見る黄金へと変化して行った。
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