ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・62話

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覇王の剣

「クッ、流石に魔王の力を解放させたキミを相手には、限界が近いか……」
 サタナトスは、ジェネティキャリパーに蓄積された魔王や邪神の能力を使う舞人を相手に、劣勢を極めていた。

『ククク、金髪の小僧よ。この世界の王となるなどと豪語した割りには、苦戦しておるではないか』
 黄金の鎧の戦士が、機械的な声で嘲(あざけ)た。

「彼は、魔王や邪神の強大な魔力を、肉体強化に使っている。対するボクの剣が奪ったのは、人間どもの善の心や人間性だからね。大したパワーアップにも、ならないのさ」
 それでもサタナトスは、舞人の獣じみた攻撃を寸でのところでかわし続ける。

「マ……マズい。心が、真黒に染まっていく……でも、パレアナを助けるまでは!!」
 舞人の人間としての意識は、幼馴染みの少女の存在によってのみ、繋ぎ留められていた。

『金髪の小僧よ。キサマには、失望したぞ。その程度の力で、世界を統べるなど片腹痛いわ』
「そう言うなよラ・ラーン。ボクの剣は、本調子では無くてね。ま、今のボクの力じゃ、世界を統べるには不足しているってのは、事実だケドね」

『そうでは無い、小僧よ。キサマは自分の剣が、どんな代物かは知らぬであろう?』
「『プート・サタナティス』の、コトかい。古(いにしえ)より大勢の人間の魂を吸い続けた、呪われた剣であると言うコトくらいかな」

『……で、あろうな。故にその剣は、キサマを真の主とは認めておらぬのだ』
「まるで剣に、意志でもあるみたいな言い方じゃないか」

『その通りだ。お前の剣は、『覇王剣』よ。アト・ラティアの皇帝が手にした、人々を服従させ無敵の軍隊を生みだす、覇者の剣なのだ』

「ボクの『プート・サタナティス』が、覇王の剣だって!?」
 自らの手にした、アメジスト色の刀身の剣に目をやるサタナトス。

「ガアアアアァァァァ―――――――ッ!!」
「……な、しまッ!?」
 一瞬の隙が生まれ、サタナトスは舞人によって吹き飛ばされる。

『故に我らは、キサマに興味を持ったのだ。だが、いささか早計が過ぎたようだな』
 ラ・ラーンは、アト・ラティアの建物の瓦礫に埋まるサタナトスに向かって、金色の剣を抜いた。

「それこそ……早計と言うんじゃやないか。ボクたちの戦いは、まだ終わっちゃいない」
 白と黒の6枚羽を広げた金髪の少年が、瓦礫から飛び上がって空を舞う。

『フッ、それがキサマ本来の、魔族としての能力か。だが、半端な力だ』

「言ってくれるね、ラ・ラーン。確かにボクは、人間の母と、魔族の父との間に生まれたまがい物の魔族さ。だけど、ボクは……!?」
 会話の途中で、目の前に真黒な髪に染まった舞人が現れる。

「ギュアアアァァァァーーーーッ!」
「グハアァァッ!!?」
 鋭利なナイフのような爪を得た舞人の手刀が、サタナトスの右腕を断ち斬った。

『サタナトスよ、どうやらクシィー様と共に現在の世界を統べるに相応しいは、キサマが戦っている少年の方ではないのか?』

「だから、早計と言っているじゃないか。この程度の危機など、今までに何度も味わってきたさ」
 サタナトスは、千切れた右腕の付け根から、鱗に覆われた腕を生やす。
そして、地面に転がった自分の右腕から、プート・サタナティスを奪い取った。

『無駄な足掻(あが)きよ。キサマの能力だけでは、その少年には勝てん』
『まあ、待つのじゃよ、ラ・ラーン』
 黒鉄色の鎧姿の魔女が、サタナトスに止めを刺そうとする黄金の戦士に語りかけた。

『どうした、マ・ニア。何故、止める?』
『お主とて、認めておるのであろう。あの剣は、覇王となる素質のある者にしか、扱えぬ代物じゃとな』

『だが、まだ未熟よ。覇王の剣が、泣いておるわ』
『されど覇王剣が相対すは、調和と安寧の剣じゃ』
 マ・ニアも、アト・ラティア最強の戦士を前に、一歩も引かない。

『だから、どうしたと言うのだ。あんなモノは、穏健派の科学者共が創った失敗作ではないか』
 ラ・ラーンは再び、サタナトスに剣を向ける。
すると、その切っ先に栗毛の少女が立った。

「お止めなさい、ラ・ラーン。今しばらく、あの者たちの戦いを、見守ろうではありませんか」
 凛とした瞳で、黄金の戦士を見つめるパレアナ。

『クシィ―さまが、そう仰られるのであれば……』
 黄金の戦士は、剣を鞘に納める。

 少女の瞳に映る、幼馴染みの少年と金髪の少年。
2人の少年の闘いは、しばらくの間続いた。

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