ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第9章・13話

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オアシスの惨劇

 黄色い月が、荒野を照らす。

「残ったオオカミも、逃げ去ったみたいだ。もう襲っても、来ないんじゃないかな」
 月を眺め微笑む少年の右手には、オオカミの首がぶら下がっていた。

「あ……ああ……」
「ヒッ、ヒィ!?」
 命を永らえるコトになった少年少女たちだが、余りに凄惨な光景に言葉を失う。

「なあ、マルクにハンス。お前たちは、近場のオオカミの死骸を集めて来い」
「え……」
「ああ、解ったよ」

「キノとケイダンは、火を起こして集めた虫を焼け」
「う、うん」
「了解」

 少年たちは従順だった。
そうするコトで彼らは、自身の恐怖が少しだけ薄れるのを感じる。

「女のコたちは、オオカミの解体を……」
「包丁も無しに、無理に決まっているでしょう」
 少女たちの中で、唯一正気を保っていたアズリーサが言った。

「仕方ない。オオカミは、ボクが解体するか。キノたちも、オオカミの死骸集めに廻ってくれ」
「それじゃあわたし達で、焚火の準備をするわね」

 孤児たちは、焚火を囲んでオオカミの肉と芋虫の丸焼きを頬張った。

「砂漠の夜は冷えるな。アズリーサ、こっちに来な」
「はい、兄さま」
 金髪の少年は、蒼い髪の少女を慈しむように抱えながら寝転ぶ。

「男たちは、2人1組みで交代しながら焚火の番だ。ま、ボクは寝るケドね」

 孤児たちは、砂漠の固い地面の上で眠りに着く。
砂漠と言っても礫(れき)で出来た礫砂漠は、教会の貧相なベットでもマシと思えるくらいには苛刻で、孤児たちの肌に血が滲んだ。

 月は谷間の向こうの山々に隠れ、替わりに朝日が顔を出す。
礫砂漠の小さな瓦礫の一粒一粒が、小さな影を伸ばした。

「ン……もう朝か。ロクに眠れや……」
 金髪の少年は辺りを見回して、蒼い髪の妹がいないコトに気付く。

「アズリーサ。それに、他の女の子たちも居ない。もしかして……」
 サタナトスは、眠りコクっている4人の少年を置き去りにして、辺りの探索をする。

「辺りが暗闇の時は気付かなかったケド、それなりに植物も生息しているな」
 すると金髪の少年の耳に、バシャバシャと水の音が聞こえた。
ブッシュをかき分け進んでみると、緑が生い茂りオアシスが湧き出している。

 水音の正体は、6人の少女たちだった。
朝日を浴びながら、衣服を脱ぎ捨て水浴びをする少女たち。
その中には、蒼い髪の少女も詰っていた。

「アズリーサ、心配させてくれるねえ」
 少年は、ホッとため息を吐く。

 普段は孤児として、みすぼらしい衣服を纏っている少女たち。
けれども今は、妖精か女神の様に美しく思えた。

「これ以上は、無粋と言うものかな」
 気付かれない様に、その場を立ち去ろうとするサタナトス。

「ン……なんだ?」
 少女たちがはしゃぐ近くの水面が揺らぎ、水の中の影が迫る。
それは、1つだけでは無かった。

「アズリーサ、何かいるぞ!」
「え、きゃああッ?」
 その瞬間、大きな水柱が無数に吹き上がる。

「アレは、リザードマンだ!」
 水から出現したのは、砂色や赤茶けた色の巨大なトカゲの化け物だった。

「いやああッ!?」
「な、なんなのォ!?」
 少女たちは小さな胸を手で覆い隠しながら、身を寄せ合う。

「沼地か湿地帯に生息しているリザードマンが、こんな砂漠のオアシスを根城にしているのか!?」
 サタナトスは、リザードマンの装備を確認する。

「本来なら、槍か曲刀を装備しているコトが多いが、ヤツらの装備は岩のこん棒だ。それにラウンドシールドも、巨大ガメの甲羅なのか」

 リザードマンの一匹が、こん棒を振り上げる。

「きゃああぁぁ……グェッ!」
 抱き合う3人の少女が、頭部から身体ごと粉々に砕かれ、水面に血や内臓が飛び散った。

「ジ、ジル、ミリィ、シアーーッ!?」
 姉妹のように育った少女たちを目の前で失い、悲鳴を上げるアズリーサ。

「ヒイイィィーー……ベゲッ!」
 リザードマンが巨大なシッポを振り抜くと、恐怖に歪んだ2人の少女の顔が消える。
次の瞬間、頭部を失った2つの身体が、飛沫を上げて倒れた。

「セリア、サティーーッ!?」
 砂漠のオアシスは、血の池地獄と化した。

 

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