ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第9章・14話

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死と再生の天使

 澄んだ水が沸く砂漠のオアシスは、トカゲの狩り人たちの格好の狩場でもあった。

「イヤ……そんな……いやあ!!?」
 真っ青な顔を覆い、恐怖し絶望するアズリーサ。

 水は紅く染まり、かつて少女だったモノの欠片がそこら中に浮かんでいる。
数分前までは、一糸纏わぬ少女たちが水遊びに戯れていた。
それが、地獄絵図に変わる。

「アズリーサ!!」
 金髪の少年は、生き残った妹だけでも助けようと、果敢にリザードマンの群れへと飛び込んだ。

「に、兄さん……!?」
 けれども、少女たちの頭部を跳ね飛ばした丸太の様な尾が、サタナトスを襲う。

「グッ……うわあッ!!?」
 腹に強烈な一撃を喰らった金髪の少年は、オアシスの低木に叩き付けられた。

『グルル……』
 邪魔者を追い払ったリザードマンたちは、泳ぎながら散らばった肉片を喰い漁る。

「いやぁ……それはジルやミリィ、シアなのよ……」
 アズリーサは手を伸ばすが、それは何の抑止力にもならなかった。

『ギヒヒィ!』
 別の数匹が、頭部の無い少女たちの遺体を、草むらへと引きずり込んで行く。

「セ、セリアとサティを、連れて行かないでェ……」
 生気の無い顔をした蒼髪の少女は、揺ら揺らとリザードマンに近づいて行った。

「よ、止せ、アズリーサ」
 金髪の少年は、苦痛に耐えながらも何とか起き上がって、妹を止める。

「に、兄さん、みんなが……みんなが食べられちゃう」
「残念だがアイツらは、もう人間じゃない。ただの肉の破片だ」
「な、何を言ってるの。さっきまで、みんな笑ってたじゃない」

「今のうちに逃げるぞ。アイツらは食事の真っ最中だが、いずれボクたちにも牙を向けて来る」
「イヤよ。みんなを、置いてなんか行けない!」

「いいから来るんだッ!」
 金髪の少年は、妹の細い手首を掴んで、強引にオアシスの泉から連れ出そうとする。

「止めて、みんなを……みんなを助けなきゃ!」
 兄の手を振り解いた少女の蒼い髪が、ふわりと舞い上がる。

「ア、アズリーサ?」
 少年に隙が生まれ、敵の感知が遅れてしまった。

「ガハッ!!」
 リーザードマンの岩のこん棒が、サタナトスの身体を粉砕する。

「に、兄さん!?」
 蒼髪の少女の瞳に映ったのは、身体を捕食されつつある兄の姿だった。

「アズ……リーサ……お前は……逃げ……」
 虚ろな目の少年は、死の間際にも妹の身を案じる。

「兄さんを……兄さんを、離してェーーーー!」
 蒼い髪の妹が、叫んだ。
すると、彼女を中心に風が渦を巻き、激しい衝撃波が巻き起こる。

『グルル!?』
『ギィ!?』
 泉を我が物顔で泳ぎ回っていた、リザードマンたちの巨体が吹き飛んだ。

 少女の背中からは、天使のような真っ白い1対の羽根が生える。
そればかりで無く、白い羽の下には、黒い蝙蝠の羽根も4枚備わっていた。

「お前……その姿……」
 リザードマンに半身を喰われ、上半身だけとなっていたサタナトスは、幼き日より聞かされて来た出生の噂を思い出す。

「兄さんを……みんなを食べたお前たち……許さない」
 少女の瞳が、妖しくピンク色に輝く。
右手に、巨大な鎌が出現した。

『ギァアア!』
『グギャア!?』
 砂漠棲のリザードマンの、ゴツゴツとした鱗に覆われた身体が、易々と斬り刻まれる。

 紫色の血が滴る鎌は、骸骨の背骨のような湾曲した柄を持ち、ろっ骨すらも備わり、先端には無数の髑髏が飾られていた。

「ヤレヤレ……キミはまるで、死神じゃないか……」
 血が泉に流れ出て、瀕死のサタナトス。
彼が生きていられたのは、彼もまた魔族の血を引く者だったからに他ならない。

「兄さん……今、助けるわ」
 アズリーサが、死神の鎌を天にかざした。
すると、神々しい光が鎌から溢れ出す。

「こ、これは……身体が!?」
 サタナトスの失われた下半身が、見る見る再生されて行った。

「みんなも……直ぐに蘇らせるわ」
 アズリーサが鎌を泉に浸すと、鎌を中心に波紋が広がり、紅く染まった水が元の清らかな青へと浄化されて行く。

 無数に転がったリザードマンの遺骸から、少女たちが甦生された。
生き返った少女たちは、元の姿より遥かに幼く、可愛らしいお尻からはトカゲの尻尾が生えていた。

 

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