ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~外伝・3話

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金髪の天使の追憶~3

 サタナトスと、彼を恐れていた孤児たちは、夜陰に紛れて村を出る。

「なんだか随分と、寒いな。オイ」
「砂漠や渓谷って、夜だと殆ど何も見えないわ」

「今日は月が出ているから、見える方さ。新月の時は、自分の手すら見えないからね」
「兄さん。またみんなを、怖がらせるようなコト言って!」
「仕方ないだろ、アズリーサ。真実なんだから」

「真実は、真実でしかないのよ。正しいかってコトに、今は意味がないわ」
「難しいコトを言うな、アズリーサは」
 金髪の少年に率いられた孤児たちは、渓谷を南下する。

「今頃シスター、慌ててるかしら」
「村長さんと話してる隙に、出てきちゃったからきっとそうよ」
「オレたち、ホントに村を出て来てよかったのかなあ?」

 孤児たちは、後ろを振り返る。
けれども入り組んだ谷に、故郷の村の姿を見付けるコトは出来なかった。

「それなら、試してみたらどうだい」
「試すって、もし村長の言った通りだったら、どうすんだよ」
「そりゃあ魔王の生贄にされて、焼き殺されるだけだろ」

「ヒィィッ!」
 互いに身を寄せ合う、少女たち。

「ところでサタナトス。これから、どこに行くんだ?」
「さあな。カス・ギャアの街までは、かなりの距離があるし」
「それに門に検問所があって、たぶん子供だけじゃ入れて貰えないわ」

「そうなのか、アズリーサ」
「だったらいっそ、サタナトスが見つけた遺跡に、潜るってのはどうだ?」
「大人たちに見つかったら、祭壇まで連れて行く手間が省けるな」

 孤児たちは、行く充てもなく渓谷を進む。
美しい景色が代り映えなくスクロールして、後ろに通り過ぎて行った。

「は、腹減ったなァ」
「急いで出て来たから、食べ物も持って来てねえぜ」

「そんなモノは、元々なかっただろう。パンもクッキーも、前に食べたのは何時だったか」
 足取りの遅くなった少年たちに向けて、サタナトスが言った。

「最近は、雑草の入ったスープがやっとだったよね」
「それも、朝と夕方だけ」
「シスターの好きな絵の具の顔料なら、いくらでも手に入るんだケドね」

「絵の具なんて、喰えねえよ」
「なんか、喰えるモンはねえのか」
「そ、それに、水も飲みたいわ」

「さっき、無駄に出すからだろ」
「……!?」
 金髪の少年の言葉に、顔を真っ赤に染める5人の少女。

「兄さん!」
「ヘイヘイ、悪かったよ」

 黄土色や赤茶けた岩の渓谷が、月明かりに照らされて紫色に染まる。

「仕方ない。今日はここで宿営(ビバーク)しよう。少しだけブッシュが残っているから、焚火の材料になるし、虫がいるかも知れない」
 サタナトスは、ブッシュを揺さぶって芋虫と枝を持ってきた。

「さっすが、サタナトス」
「いいからお前らも、集めて来いよ」
「わ、わかったよ」

 少年たちは命令に従い、ブッシュに分け入って行ったが、直ぐに戻って来る。

「なんだよ、お前ら。手ぶらじゃないか?」
「ち、違うって、なんか居たんだよ」
「真っ白い目が幾つも、こっちを睨んでたんだ!」

 少年たちが帰って来た暗闇の先から、ゴロゴロと低い音が聞こえた。

「兄さん、これって……」
「ああ。どうやら野生の、オオカミだな」

 するとそのウチの一匹が、金髪の少年に向け飛び掛かる。

「に、兄さん!?」
「サタナトスゥーーーッ!!」
 綺麗な月が、鮮血で隠された。

「なあ、アズリーサ。オオカミって……喰えるのかな?」
 無邪気に微笑む、金髪の天使。
顔は紅く染まり、手にはオオカミの首がぶら下がっていた。

「うあああッ!?」
「ヒイイィィ!!」
「きゃあああああ!?」

「犬だって喰う地域があるって話だから、オオカミも大丈夫だろう」
 孤児たちの隙を見て飛び掛かってくるオオカミを、鋭利な手刀で次々に切り倒すサタナトス。

 大勢の仲間を失ったオオカミは逃げ去り、辺りには無数の獣の死体が残された。

 

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