ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第9章・20話

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蜃気楼の剣士とマホ・メディア

 灼熱の砂漠にあって唯一、生物が安らぎを得られる場所、オアシス。

「ここ数日、何事もなく過ぎているわね、兄さん」
 低木に囲まれた泉は澄み、キラキラと太陽の光を反射させている。

「これからも、こうであってくれると良いんだがね」
 水の中を気持ちよさそうに泳ぐ、無邪気な13人の少女たち。
楽園のような光景を眺めながらも、サタナトスとアズリーサは不安を感じていた。

「マルクやケイダンたち、無事に村で暮せているかしら」
「心配は無いさ。きっと上手く村長に言い訳して、元気にしているよ」
「そう……ね。だよね」

 兄妹は、4人の少年たちの辿った運命を、この時はまだ知らない。

「それより、ボクたちの方が問題じゃないか。確かにここは、食料も水も事欠かないが」
「そうね。だからと言って、永遠にここで暮らせるかは不安だわ」
 蒼い髪の妹は、脚を抱え込んで水面を見つめる。

「まずは、村から一番近い街の、キャス・ギアに行ってみようと思う」
「そこは、どれくらいの距離なの?」

「ここからなら、半日くらいで行けるよ。城塞都市じゃ無いから、昼間に行けば入れるハズさ」
「でも、あのコたちを見たら、街の人はどう思うかしら」
 アズリーサは、泉から魚を獲って戻って来る少女たちを出迎える。

「どうだろうか。ボクたちの村みたいに、よそ者に冷たい大人が多いなら、最悪の場合……」
「そ、そんなコトは、させないわ」
 アズリーサは、トカゲのシッポが生えた少女たちを抱きしめる。

「わかってるさ、まずはボクだけで行ってみるよ。街で服や日用品を買って来る」
「お金はどうするの。まさか、盗む気じゃ?」
「そんなコトはしないよ。実は保存食も兼ねて、余った魚を干しておいたのさ」

「いつの間に……その魚を売るのね?」
「他にも、礫の砂漠の岩は染料として売れるし、近くの岩山には鉱石も地表に出ていた」
「兄さんったら、抜け目ないわね」

「アズリーサ。キミはコイツらと、留守番を頼む」
「ええ、わかったわ」
「万が一誰か来たら、どこかに隠れるんだぞ」

「兄さんこそ、無茶はしないように。わかった」
「ヘイヘイ、なんかシスターみたいになって来たな」
「なんか言った?」

「それじゃ、言って来るよ」
 金髪の少年は、逃げ出すように砂漠を駆けだした。

~その頃~

 村長と数人の村の大人たちは、キャス・ギアの街へと辿り着く。

「アナタが、ムハー・アブデル・ラディオ様ですね」
「蜃気楼の剣士の功名は、伺っております」
 街外れにある酒場で一行は、丸テーブルにビアジョッキを置いた男に話しかけていた。

「オレに何の用だか知らんが、消えろ……酒がマズくなる」
 男は左目に大きな傷があり、グレーの長い髪に、顎には不精髭を生やしている。
つまみの干し肉を口にくわえ、それを酒で豪快に流し込んだ。

「用件はただ一つ、農作物を食い荒らすバッタを呼び寄せた、兄妹を始末したいのでございます」

 村長は酒場の窓に視線を移す。
ガラスは割れ、その向こうには無数の羽虫が飛び回っていた。

「その兄妹がどこのどいつか知らんが、バッタを呼び寄せたなど誰かの虚言であろう」
「わたくし共も、その可能性があるのは承知いたしております」
「ですがその兄妹は、魔王の血を引いている者たちなんですよ」

「魔王の……血だと?」
 酒に酔っていた、男の目付きが変る。

「はい。兄をサタナトス、妹はアズリーサと言って、我が村の巫女の子供たちなのでございます」
「母親の名は……何と言う?」

「マホ・メディアと言います」
「な……マホ……メディアの子たちなのか?」

「はい。貴方と共に魔王討伐へと向かい、命を落としたかに思われた娘にございます」
「魔王との闘いより数年後、生きて帰って来たとは聞いていたが……」
「娘は腹に、父親の解らぬ双子を身籠っており、出産の後に死んでしまいました」

「マホの子供たちってのが、件(くだん)の……」
「始末するべき、双子の兄妹にございます」
 男はそれを聞くと、顎髭を撫でながら大きく息を吐き出した。

 

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