ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第05章・34話

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スカイダイビング

「ど、どうするんですか、おじいちゃん!?」
「このままじゃゴンドラに激突して、ぺシャンコだぞ!」

 エレベーターと言っても、ゴンドラをぶら下げる鋼鉄製のケーブルなど、どこにも見当たらない。
恐らくは重力を制御するコトで、ゴンドラを動かしているのだろう。

「後ろから、狩りの女神が迫ってる……」
「登って来るゴンドラとで、挟み撃ちにする気だよ」

「アルテミスの化身とは、よく言ったモノだな」
 イーピゲネイアは、この小惑星のシステム全体を使って、狩りを愉しんでいるかの様だった。

「真央、ハウメア。今のうちに壁に穴を開けて、外に出よう。地球とは重力の向きが真逆で、星の中心から地表に近づくにつれ重力が強まって行くからな」

「それしかねェか。空に飛び出すコトに、なっちまうが……」
「これ以上加速したら、開けた穴から出られなくなるからね」
 二人はエレベーターの壁に立ち止まって、自らのチューナーで大きな穴をあける。

「うわああ、か、風が!?」
「いやああぁぁぁ、こっち見るなぁ!?」

 真央の白とグレーのテニススカートと、ハウメアの丈の短いモスグリーンのムームーが、気圧の差で生じた強風によって捲きあがった。

「まったく、世話が焼け……ひゃん!」
 親友の元に駆け付け、アクア・エクスキュートで二人の服を押さえつけるヴァルナ。
けれども今度は彼女の、ブラウンのタイトスカートが翻る。

「チキショウ、艦長に見られたァ!」
「こ、こんなコトなら……」
「私服なんか、買わなきゃよかったよォ」

 三人のオペレーター娘が、恨めしそうなジト目でボクを睨んだ。

「ふ、不可抗力だから」
「なにが不可抗力ですか。しっかり見ちゃってるクセに……」
 隣でボクを支えるセノンが、プンプン怒っている。

「今はイーピゲネイアさんから、逃げるコトが先決じゃないか」
 ボクたちも、三人に合流し穴の上に立った。

「きゃああ、ス、スゴイ風ですゥ」
 ピンク色のフレアスカートを、必死に押さえるセノン。
当然ながら、ボクを支えていた両腕を使って。

「うわあッ!?」
 支えを失ったボクは、空中に投げ出される。
けれどもそこはまだ、星の中心に近く重力も弱かった。

「落下スピードが遅くて、助かったよ。アレが、さっきまでいた人工太陽か」
 上を見上げると、星の中心に太陽が輝いている。

「巨大な光源の近くだってのに、そこまで熱くない。ボクの時代のLED電球なんか、光への変換効率が悪くて周りまで熱くなっちゃうのに」
 千年の時間の間に培われた技術の進歩に、驚かされるボク。

「ゴメンなさい、おじいいちゃん。大丈夫でしたか」
 セノンも、ゆっくりとしたスカイダイビングをしながら、ボクに近寄って来た。

「ああ。頬の傷も、ヴァルナのチューナーが治してくれたみたいだしな」
「うっす。既に、治している……」
 水色のセミロングの髪の少女が、ピースサインを送っている。

「だけど、悠長なコトは言ってらんないぜ」
「これから地表に近づくにつれて、ドンドン加速して行くからね」

「プリズナー達に連絡を取って、空中で拾ってもらえないかな?」
「コミュニケーション・リングで、試してみますね」
 セノンが、首に巻き付いたリングに手を当てた。

『艦長……りょうか……そっちに、オモチャを……』
「やっぱこの小惑星の中じゃ、ジャミングされて電波の状態が悪いみたいですゥ」
 ボクには、コミュニケーション・リングでの会話は聞こえない。

「艦長。後ろォ!?」
 真央の叫び声が聞こえた。
振り返ると眩い閃光が、ボクの顔の横をかすめ飛び去って行く。

「うわあ、あ、危な!?」
「狩りの女神さまの、お出ましだぜ」
 閃光は、真央がカエサル・ナックラーで弾いてくれたお陰で、逸れたのだ。

「イーピゲネイアさん……」
 金色の髪の美少女は、急降下しながらボクたちに迫って来ていた。

 

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