ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第三章・EP018

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初勝利

「うおおおォォっしゃあ、これで逆転だぜ!!」

 黒浪さんが、オオカミの如く吼える。
試合時間も、残り数分だった。

「これで勝ったな、オレさまたちの勝利だ」
「油断するな、黒浪。サッカーもフットサルも、試合が終わる前のリードなど意味がない」
「相変わらずクールだねェ。ま、油断せずに行こうや」

 再び、センターサークルのメタボなオジサンの足元に、ボールがセットされる。

「いいですか。アナタた~ちに、メタボリッカーの真の恐ろしさを、教えてあげま~す」
 ボールを受け取った、セルディオス・高志がドリブルを開始する。

「だからなんだよ、メタボリッカーってのは?」
「メタボリック・ストライカーの略で~す」

「うおお、なんかカッケー」
「相変わらずアホだな、クロは」
 紅華さんと黒浪さんが、メタボリッカーのドリブルを阻止しようと立ちはだかる。

「ディフェンスは、苦手みたいで~すね」
 セルディオス・高志は、小さなエラシコの後に二人の中央に割って入った。

「コイツ、オレのマネして中央突破を!?」
「ヤッべ、抜かれちまった」
 紅華さんと黒浪さんは、一瞬だけ置き去りにされる。

「流石にスピードは、あるんで~すね」
 後ろから追ってくる黒浪さんに圧倒されたのか、パスを出すセルディオス・高志。

「それは、読んでいたぜ!」
「こっちもですよ、ボーイ」

 パスはアウトサイドで回転が掛けられ、紅華さんの伸ばしたつま先をかすめ、ゴール前に張り付いていたオジサンの足元に通る。

「ク、マズイな。前で、ボールを受けられた」
 パスを受け取ったオジサンには、雪峰さんがマークについていた。
けれども体格差と横幅がモノを言って、パスカットできない。

「やっぱ、あのセルディオスってオッサンだけ、技術が段違いっスね」
「ああ、それにあの人には経験もある。仲間のパス精度が落ちた今、ポストプレイで局面を打開しようとしているんだ」

 柴芭さんの分析通り、セルディオス・高志がポストプレーヤーのオジサンに向かって走る。

「確実に、繋いでくるな。ならば……」
 雪峰さんが、ポストプレーヤーの広すぎる背中から、ボールを受けようとするセルディオス・高志のポジションを確認し、自身の左手側に動いた。

「それも、計算通りで~す」
 右利きのセルディオス・高志は、右に身体を傾けボールを受けると思いきや、直ぐに体を反転させてポストプレーヤーの左側にてボールを受ける。

「マズイ、逆を抜かれ……なッ!?」
「ノ、ノォ(Não)ッ!?」

 そのまま左を抜けて、ゴールを決めようとする、セルディオス・高志。
でもボクだって、それくらいの動きは予測できた。

「か、一馬が……!?」
「ドリブルコースを読んで、止めやがった!」
 黒浪さんと紅華さんが、驚いている。

 ……と言うか、相手チームのオジサンたちも、驚いたのか疲れているのか棒立ちだ。

 キーパーまで前に出てる。
これ、決まるんじゃね?

 ボクは起き上がると直ぐに、シュートを放った。
大きな弧を描きコートを横断したボールは、パサリとゴールネットを揺らす。
それが、ダメ押しのゴールとなった。

「か、一馬の野郎、あの距離を決めやがったぞ」
「キーパーなのに2点も取りやがって、スゲーな」

 体育館に、試合終了のホイッスルが鳴り響く。

「やったやった、カーくんのチームが勝ったァ!」
「もう、冷や冷やさせ過ぎだよ、トミン」
 体育館の2階通路で、奈央が他の女子高生たちと喜んでいる。

「すまない、一馬。オレの判断ミスを、よくカバーしてくれた」
 雪峰さんが、ボクに右手を差し出す。

 5点も取られちゃったのに、なんだか照れるな。
ボクは、慣れないキーパーグローブのまま、握手に応じた。

 難敵、背・アブラーズとの激闘を何とかモノにし、デッドエンド・ボーイズは初陣を勝利で飾った。

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