ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第08章・60話

謎だらけの機体(アンノウン)

 蒼い惑星と評された地球は、今はその殆(ほとん)どを黒い雲に覆われている。
隕石の大量突入によって、地獄絵図と化した地表。
けれども宇宙から見た地球は、相変わらず美しい宝石のままだった。

「なんてコトなの。このままじゃ、地球は崩壊してしまうわ。あの機体は一体、何者なのよ?」
 テル・セー・ウス号の艦長であるアンティオペーが、望遠カメラの映像を確認しながら乗組員(クルー)に問う。

「宇宙斗艦長の乗る、ゼーレシオンに似ていると言う以外に、わかっているコトなんて無いわ」
 オペレーター席の、オリティアが答える。
レンガ色のストレートヘアをした軍略家は、望遠映像を拡大させた。

「これを見て、艦長。謎の機体の、拡大映像よ」
「機体全体が、まるで色が失われたみたいに真っ黒ね」
 アンティオペー艦長が、率直な感想を述べる。

「それに背中にヘビの頭と、翼が生えているわ。艦長の娘さん達が言ってた、ケツァルコアトル・ゼーレシオンって、形体(フォーム)なのかしら?」
 言わば参謀的立場である、メラニッペーが言った。

 ライム色の天然パーマの彼女は、地球との通信を担当している。
マレナ、マイテ、マノラの3姉妹を介して、ドス・サントス代表とやり取りをしたのも彼女だ。

「まさか、アレに乗ってるのは、宇宙斗艦長だって言うの?」
「そうは、言って無いでしょ。ただ、機体を奪われた可能性だって、考えられるじゃない」
 アンティオペーに反論する、メラニッペー。

「それは、無いわね。ゼーレシオンは、宇宙斗艦長の専用機(オリジナル)よ。他の人間が、操縦できるとも思えない」
 オリティアが、2人を仲裁するように言った。

「ホンット、謎だらけの機体(アンノウン)ね~」
 艦長の椅子に座って、伸びをするアンティオペー。

「1つ言えるのは、今のところアンノウンが追撃をして来る気配は、無いようだな。お陰でこちらとしては、船体の修理が出来るのだが」

 謎の機体の攻撃を受け退避した、テル・セー・ウス号。
レンガ色のストレートヘアをした軍略家は、修理の状況を確認しながら言った。

「アンノウンの目的は、あくまで地球に隕石を降らすコトみたいね。避難民を乗せたアフォロ・ヴェーナーを収容するのも、あっさりと見過ごしてくれたわ。メラニッペー、そっちはどうなってる?」
 アンティオペー艦長が、確認する。

「船体の放射線除去が手間取ったケド、避難民を降ろしてもう出られるわ」
「だったら、直ぐに出発させてあげて。地球には、アフォロ・ヴェーナーの帰りを待っている避難民が、大勢居るのだから」

 しばらくしてイーリ・ワーズ型艦である、テル・セー・ウス号の中央ハッチから、アフォロ・ヴェーナーが発艦して行った。

「アレで、どれだけの人命が救えるのかしら?」
 宇宙の海を泳ぐ、真珠色のイルカを見つめながら呟く、アンティオペー艦長。

 アフォロ・ヴェーナーは、蒼き惑星へと降下して行った。

 ~その頃~

 ユカタン半島に端を発する企業国家トラロック・ヌアルピリ領内の地下洞窟で、時の魔女の尖兵(せんぺい)との戦いを繰り広げる、少女たち。

「ここは、もう持たない。放棄して、下のドッグドームに逃げ込もう」
 溶岩のドレスを纏(まと)ったクホオ・ネ・エヌウを駆る、ハウメア・カナロアアクアが叫んだ。

「聞いたかい、アンタたち」
「あのコンドルが生み出した異次元の空は、水漏れだらけでもう役に立たねェ」
「とっとと、ズラかるよ」

 セシル、セレネ、セリスの3人の少女が、妹たちに指示を出す。

「了解だよ、姉貴たち」
「ラビリアとメイリンも、聞いたね」
「ここは放棄して、地下のドームに防衛ラインを築く」

「了解メル」
「わかったリン」
 マレナ、マイテ、マノラの指示に、メイリンとラビリアも従った。

 セノーテ地下空間の攻防戦は終わりを告げ、戦線はさらに地下のドームドッグへと移行する。

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