ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP039

無口な死神

 ボクの目の前に、立ちはだかった大男。

「……お前か、呼んだのは?」
 美堂 政宗は、振り返ってそう言った。

 ロングのドレッドヘアに、日に焼けた肌。
身長は、公式のサッカー選手名鑑には、197センチと書いてあった。

 しまったと思いつつ、コクリと頷(うなず)くボク。
大男はボクを睨んだまま、言葉を発さない。

 うわあ、せめて文句の1つでも、言ってくれないかなあ。
ボクが、言えた義理じゃないケド。

 心の中で願っては見たものの、状況に変化は無かった。

 この人、もしかしてボクと同じで、喋るの苦手なのかな?
197センチもあるのに、ボクと同い年の高1なんだよね。

 それなのに、Zeリーグ1部でレギュラーとして活躍しているなんて、スゴイよな。
でも、倉崎さんにケガを負わせた相手でもある。

 無言の美堂 政宗を見上げながら、様々な思いを廻らせるボク。

「どうした、美堂。ンなところで、立ち止まって。後ろが、つっかえてんだが」
 席の後ろから、声がした。

「お前いたいなデカいのが通路で突っ立ってると、他の客に迷惑になるだろうが」
 声の主は、大男に上から口調で命令する。

 クラウド東京スカーフェイスの中盤の司令塔である、紅城 邨匡(くじょう むらまさ)だった。

「無視かよ、まったく。相変わらず、コミュ力ゼロなヤツだぜ」
 紅城さんは、真っ赤な髪をツンツン立てた髪型で、真っ白なキレイな肌をしている。

 移動中に着るチーム指定のスーツも、後ろが燕尾服のようになっていた。
名鑑だと177センチの長身だケド、美堂さんを前にすると小さく見えてしまう。

「Why are you standing still?(どうして、立ち止まっているのですか)」
 また、別の声がした。

「アローンか。そのセリフは、コイツに言ってくれ」
 紅城さんが、親指で美堂さんを指し示す。

 デビッド・アローン選手。
イングランド国籍の外国人枠で、紅城さんと共にクラウド東京スカ―フェイスを、トップリーグに押し上げた原動力となったストライカーだ。

「What are you doing, Mido?(なのしてるんですか、美堂?)」
 アローンさんは、美しい金髪に蒼い目をしている。
175センチの身長で、移動用スーツもクールに着こなしていた。

 でもやっぱり、美堂さんはなにも答えない。
ボクが呼び止めちゃったせいなのに、どうしよう!

「なにしてるね、アンタら。さっさと行くよ」
 さらに別の声が、聞こえた。

「チーシン、お前もか。美堂が、動かないんだよ」
 紅城さんが、ため息を吐く。

「ちょっと、いいか」
「なッ、どうしたんだよ、チーシン」
 チーシンと呼ばれた人は、紅城さんとアーロンさんの間を抜け出し、ボクの前に立った。

 ボウズ頭ではあるが、かなりお洒落な感じのボウズだ。
背も高く、大きめのスーツをキレイに着こなしている。

「ミドウ、アンタを見てるね」
 少しぎこちない日本語で、ボクの顔を覗き込んで来るチーシンさん。

 後々名鑑を調べてわかったコトだケド、名前は龙(龍)七星(ロン チーシン)。
中国だと龍をそう書くらしく、つまりロンさんは中国人だ。

「マジかよ。別に、普通な感じの青年だが?」
 紅城さんも、後ろからチラ見する。

「He's a football player(彼は、サッカー選手だよ)」
 アーロンさんが、言った。

「そっかぁ。例えそうだったとしてだ。まだ若いし、美堂が気にするホドの選手でも無かろう?」
「タブン、彼の足につまづいたね」
「オイオイ、美堂。そんなんで怒るな……って、居ねェし!」

 美堂さんは、前の車両に移るところだった。

「クソ。なんだよ、まったく」
「騒がせたな、にーちゃん」
「See you(またね)」

 3人も、前の車両へと消える。

 ボクの前を通り過ぎて行ったのは、倉崎さんと同じ国内トップカテゴリーで活躍する、プロサッカー選手たちだった。

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