ミーティング
特例として、東海・中部の地域リーグ2部に所属するコトが許された、デッドエンド・ボーイズ。
「Zeリーグの下部組織に当たる地域リーグでは、今年だけ特例で12チームがエントリーしている。オレたちの当面の目標は、まずは地域リーグ1部を目指すコトだ」
学校を終えたボクたちは、デッドエンド・ボーイズの事務所に集まっていた。
「以上が、大会のレギュレーションだ。各自、頭に入れておいてくれ」
キャプテンである、雪峰 顕家(ゆきみね あきいえ)さんが、説明を終える。
「ようするに、雪峰。12チームによるホーム&アウェイの総当たり戦を、2回やるんだな?」
紅華 遠光(くれはな とおみつ)さんが、質問した。
紅華さんは、ボクが始めて勧誘したチームメイトで、ピンク色のお洒落な髪が特徴的だ。
「そうだ、紅華。今年はウチを含めて、4チームが新規参入したからな。試合日程も、例年に比べてハードになるだろう」
「なーホドな。12かける4だから、48試合もこなさなきゃいけねェのかよ?」
黒浪 景季(くろなみ かげすえ)さんが、ウンウンと納得する。
茶色の肌にクセ毛の、黒狼とあだ名される人だ。
「アホか、テメーは。自分のチームとやる気かよ。11かける4で、44試合だわ!」
「う、うっせー、知ってたし。冗談が通じねェよな、ピンク頭は」
「ハイハイ、負け惜しみいってろ」
「他に質問あるやつは、居るか?」
キャプテンは、2人のドリブラーのケンカを無視して、会議を続けた。
「初戦の相手は、どこでありますか?」
杜都 重忠(もりと しげただ)さんが、手を挙げる。
杜都さんは、軍隊(ミリタリー)マニアだ。
始めてあった時は、パラシュートで降下して来たんだよね。
「フルミネスパーダMIEだ。日高グループの資本が入った、新規参入する3チームの内の一角で、実力的にも格上だろう」
フルミネスパーダMIE。
ボクが、エトワールアンフィニーSHIZUOKAの練習試合に出たとき、コテンパンにされた相手だ。
カイザさんやスッラさんが指揮する組織的で統率された守備から、ロングパスでエースのバルガさんが点を決めまくる。
戦術重視のカウンタースタイルで、正直勝てる気がしなかった。
「や、やっぱ、強いんだよな?」
「当たり前だろ、クロ」
まだイガミ合ってる、黒浪さんと紅華さん。
「ええ、モチロンですよ」
クールなボブヘアの、紫芭 師直(しば もろなお)さんが涼しい顔で答えた。
「キーパーとセンターバック、ボランチに有力な選手を抱えてますね。彼らを中心に組織的な守備陣形を敷き、カウンターからストライカーが決めるスタイルです」
「お前、いつの間に調べたんだよ。ロランさんの事件の調査で、手一杯じゃ無かったのか?」
「開幕も、近かったですからね。雪峰くんに指示されて、情報を集めていたのですよ」
紅華さんの疑問符に、答える紫芭さん。
「守備がえげつないんは、わかったわ。ストライカーは、大したコト無いんか?」
金髪ドレッドヘアが注目を集める、金刺 導誉(かなさし どうよ)さんが問いかけた。
「ストライカーは、かのバルガ・ファン・ヴァールですよ」
「どないすんねん。資本力にモノ言わせよってからに。ホンマ、反則ちゃうか!」
文句が止まらない、金刺さん。
「倉崎さんは勝つ気でいるみたいだが、正直厳しい相手だ」
「キャプテンの言う通りですね。場合によっては、大量失点を覚悟しなくてはなりません」
デッドエンド・ボーイズの誇る、頭脳2人が言った。
「初戦から、大敗かよ。キーパー、反論はあるか?」
紅華さんは、恩師であるコーチに視線を投げる。
「おう。モチロン大量失点は、覚悟しておいてくれ!」
メタボなゴールキーパーは、堂々と言い放った。
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