ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP021

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静岡

 ボクは今、エトワールアンフィニーSHIZUOKAのチームカラーの、蒼いバスに乗っている。

 ど……どうしてこんなコトに!?

 記者会見を終えた数人の選手だけが乗ったバスは、半分以上の席が空いていてスカスカだ。
大きな窓からは、トラス橋を渡る電車が見える。
その向こうに小さく見えて来たのは、富士山だ。

 マズい、これは非常にマズイ。
このままじゃ、ホントに静岡まで連れて行かれちゃう!
静岡から帰る電車賃なんて、持ってないぞ!?

 隣を見ると、通路側の席にオリビが座っている。
頭にお洒落な銀色のヘッドフォンをしていて、小声で誰かと通話しているみたいだ。

 ついさっきまで、奈央と自分の家でテレビを見てたのに。
練習に出かけたばかりにロランと出会って、記者会見にまで出るハメになっちゃった。
挙句の果てに、静岡まで連れて行かれるなんて……。

 とは言え、極度の人見知りなボクは、知らない人となんて話せない。
最後列の席では、フランス人のヴォーバン選手、ヴィラール選手、ヴァンドーム選手と、フランスから帰化したべリック選手が、フランス語でガヤガヤ話している。

 フランス語なんて到底話せないし、そもそもボクは日本語だって覚束ない。
頼れるのはオリビだけなんだケド……一向に通話が終わらないんだよね。

 仕方ない。
エトワールアンフィニーSHIZUOKAの、ホームページでも見て見よう。

 ボクはスマホを取り出し、検索エンジンにチーム名を打ち込む。
すると、地域リーグとは思えない、豪華でデザインセンスに富んだホームページが現れた。

 一生懸命に作ってくれた雪峰さんには申しワケないケド、デッドエンド・ボーイズのホームページとは、完成度が全然違っている。
ハデな動画がたくさんあるし、それに今シーズンの選手名鑑まで出来ているじゃないか。

 ボクはこのまま、名古屋の自宅から遠ざかるバスに乗り続けるしか無いだろう。
喋らないばかりに知らない場所に行ったコトはあったケド、今回は最長記録だな。

 せめて対戦相手のチーム情報でも、頭に入れて置くか。
エトワールアンフィニーのチームカラーである、蒼いリクライニングシートに身を委ね、選手名鑑をつぶさにチェックする。

 茶畑が並ぶ山肌を眺めならが、高速道路を走るバス。
静岡までの道程は思った以上に長く、ボクはチームの成り立ちやスタッフ情報まで目を通していた。

 エトワールアンフィニーの前身は、沼津のサッカークラブだったのか。
それにロランや、隣に座っているオリビも、そのチーム出身みたいだ。

「こんな遠くまで付き合わせて、申しワケ無いと思ってるよ。御剣 一馬くん」
 いきなりオリビが、口を開く。

 ど、どうして、ボクの名前を!?
……という顔で、オリビを見る。

 蒼く雄大な裾野を持つ富士山の雄姿が、間直に迫って来ていた。

「なぜキミの名を、知ってるかって?」
 意志が通じたと思ったボクは、大きく首を縦に振った。

「倉崎 世叛と、話したからだよ。キミは、彼の創ったチームの一員なんだね」

 そうか……さっきヘッドホンで喋っていたのは、倉崎さんだったんだ。
ボクは、倉崎さんにも事態を把握して貰えて、安心する。

「御剣 一馬……ここまでロランに、そっくりとはね。子供の頃から一緒だったボクでさえ、遠目じゃ間違うかも知れないレベルだ。シャルオーナーや他のチームメイトなんて、キミを完全にロランだと信じて疑っていないだろう」

 やっぱ、似てるかな?
草むらで遭ったときも、確かに似てると思ったモンな。

「キミには悪いんだが、しばらく静岡に滞在して貰うコトになる。ロランには、済ませなければならない用事があるんだ」

 え……?
あわよくば、名古屋に帰れるかも知れないと思っていたボクは、耳を疑った。

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