ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第08章・37話

圧壊する宇宙戦艦

 突如として、通路の壁がネジ曲がり破壊されたかと思うと、剥(む)き出しの配線が目の前に落下して、真っ白なスパークを上げた。

「な、なにが起きている!?」
 ボクは慌てて、辺りの状況を確認する。
宇宙戦艦がギィギィと悲鳴を上げ、乗組員(クルー)たちが慌てふためきながら走り回っていた。

「宇宙斗艦長、敵の襲来だ。時の魔女の配下が、襲って来たのだ」
 バルザック・アインは、かつて失った宇宙探査船でも同じ光景を間の辺りにしたのだろう。
現状を、時の魔女の配下によるモノと断定した。

「艦橋(ブリッジ)、状況はどうなっている。そちらから、確認できるか?」
 首に巻かれたドクロのコミュニケーションリングから、通信を試みる冥界降りの英雄。

「どうです。なにか、わかりましたか?」
 メルクリウスさんが、ある程度の時間を置いて聞いた。

「残念だが、わたしの予想は的中だ。時の魔女の配下らしき巨大な機体が、この艦に張り付いている」
「艦に、張り付いている?」

「敵は、クーリアでもミネルヴァさんでも無く、最初にボクの艦と交戦した艦ですよ」
「ど、どうして宇宙斗艦長に、それがわかるんです?」
 驚く、メルクリウスさん。

「艦の外に、ケツァルを飛ばして置いたんです。巨大なアームを持った異形の艦が、このプロセルピナに取り付いています」
 ボクの脳裏に、ケツァルの目が見た艦外の映像が投影される。

「現状は、巨大ダコか巨大イカみたいな形体ですが、スカートを穿いた魔女のような形体に変形するんです。ボクたちはそれを、『漆黒の海の魔女』と名付けました」

「漆黒の海の魔女とは、面白いネーミングだ。かつて我々を襲った機体も、似た特徴を持っていた」
「本当ですか、バルザック艦長」
 通路を走りながら、ボクは再確認した。

「ウソなど言って、なんになる」
「すみません。ですがボクの艦であるMVSクロノ・カイロスは、漆黒の海の魔女を撃破したんですよ」
「漆黒の海の魔女とやらは、2機以上は存在する。あるいは、量産されているのかも知れませんね」

「詮索は、後だ。艦橋は、部下に任せて置いた」
「ええ、格納庫に急ぎましょう」
 ボクたちは、歪んだ通路を必死の思いで進み、なんとか格納庫へと辿り着く。

「ここも、ギシギシ言ってますね。押し潰されるのも、時間の問題でしょう」
「その前に、外に出る。急げ!」
 メルクリウスさんと、バルザック・アインは、それぞれのサブスタンサーに搭乗した。

「ボクも、ゼーレシオンで……」
 遅れまいと、壁を蹴って重力の低い格納庫内を浮遊した瞬間、強力な力で圧縮された壁が迫って来る。

「グアッ!?」
 壁にぶち当たったボクは、格納庫の開いたハッチから、宇宙の広がる方へと投げ出された。

「宇宙斗艦長!」
 テオ・フラストーに乗った、メルクリウスさんの叫び声が聞える。

「宇宙空間に投げ出されれば、生身の人間など一瞬で蒸発して凍り付く。我々だけでも、圧壊する前に外に出るのだ!」

 バルザック・アインは、瞬時に非情な決断を降した。
押し潰された壁や天井によって、格納庫内の空間は狭まり、ボクがどうなったかなど確認できないのだ。

「ケツァル!」
 ボクは、叫んだ。
脳裏には、宇宙空間に放り出される寸前の、ボク自身の姿が映っている。

「……間に合ってくれ」
 猛スピードで、格納庫内に飛び込むケツァル。
爆発が起き、辺りが白い閃光に包まれた。

「そ、宇宙斗艦長、無事ですか!」
「え、ええ。なんとか無事です。またコイツに、助けられました」
 庫内の爆発は、ケツァルが翼を広げて防いでくれて、ボクは九死に一生を得る。

「焦らせないでくださいよ、まったく」
「すみません。直ぐに合流します」
 ケツァルに放してもらって、なんとかゼーレシオンのコックピットハッチに辿り着いた。

「まるで、子供の頃に見たロボットアニメみたいな展開だな」
 巨人と1体となったボクは、背中にケツァルを装着し、ケツァルコアトル・ゼーレシオンとなる。

「漆黒の海の魔女と、もう1度戦うコトになるなんて……」

 宇宙に飛び出したゼーレシオンの目は、巨大戦艦が異形の機械の魔物に襲われている姿を捉えていた。

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