ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP021

オーナーへの答え

「まずは、オレたちのボールからだ。一馬、予定通りに行くぞ」
 背番号10の青いビブスを着た、ロランさんが言った。

「……はい」
 なんの背番号もない青いビブスのボクは、小さな声でコクリと頷(うなず)く。

『ピーーーーーッ!』
 ホイッスルが鳴り響き、30分ハーフの試合が始まった。

 センターサークルでボクは、ロランさんにボールを蹴り出す。
そして、試合前に指示されていた通りに、フォワードのポジションである前線へと走った。

「なるホド。あの影武者を、フォワードに使うつもりか」
 ベンチでボクたちの出方を伺う、壬帝オーナー。

「サンキューな、一馬。オレの我がままに付き合わせちまって、本当にすまないと思っている」
 ボールを受け取ったロランさんが、華麗なドリブルを開始した。

 やっぱ、エトワールアンフィニーの10番を任されてるだけあって、メチャクチャ上手い。
相手のフォワードや中盤のプレスを、軽々とかわしちゃった。

「やはり、控えのフォワードや中盤では、お前は止められんか。だが、そこから先は、ウチのレギュラークラスが待ち構えている。たとえお前とて、一筋縄では行かんぞ」

 ベンチの壬帝オーナーの言葉なんて聞えるハズも無かったが、今まさにロランさんの前に、アルマさんが立ちはだかっていた。

「ロラン、ボクもキミやキミの姉さんの想いには、賛同する。だけどこれは、サッカーの試合だ。手を抜くコトは、出来ない」
 ロランさんやオリビさんにとって、優しい兄貴分のアルマさん。

 壬帝オーナーから、ロランさんに替わってチームキャプテンに指名されていた。
責任感の強さは伝わって来たし、手を抜けないのも仕方ないのかも知れない。

「もちろんですよ、アルマさん。こっちこそ、迷惑をかけまくって申しワケなく思ってます」
 ロランさんが右脚で、ボールを大きく刈り込むように内側に持って行き、突破を図る。
アルマさんも瞬時に身体を右に寄せ、ドリブルのコースを切った。

「ですがオレも、サッカーの試合で手を抜くなんて出来ない。このオレを、簡単に止められるとは思わないで下さいよ」
 ボクは知らなかったケド、名古屋では倉崎さんともやり合った、ロランさん。

「なッ、しま……!?」
 今度は、右脚のアウトでボールを右側に出し、アルマさんの左を抜き切った。

「C'est un beau dribble(イイ、ドリブルだ)」
 ヴィラールさんが、フランス語で呟く。

 白いビブスのバックラインは、エトワールアンフィニーのバックラインをそのまま切り取って持ってきたモノで、レギュラークラスが顔を揃えていた。

「フランスのトップリーグで、レギュラークラスだったアナタたち。さて、オレのドリブルでどこまで斬り込めるか」
 言葉とは裏腹に、迷いなくドリブルで斬り込むロランさん。

「ヤレヤレ、ここは通さんぞ」
「エースと言っても、まだ若いね」
 センターバックでリベロの、ヴィラールさんとヴァンドームさんが立ちはだかった。

「まずはオレが行く。ヴィラール、フォローを頼む」
 ヴァンドームさんが最終ラインから前に出て、ロランさんに接近する。

「よし、一馬!」
 ヴァンドームさんを自分に引き付け、ギリギリでボクにパスを出すロランさん。
ボクはペナルティエリアに入ったくらいで、足元にボールを受けた。

 2人しか居ないセンターバックが縦に並んでいるから、シュートコースがガラ空きだ。

「マズい、間に合わないね!」
 ヴィラールさんが、必死に距離を詰めて来る。

「遅い……」
 ボクはヴィラールさんの居ない左側に向けて、シュートを撃った。

「ヴォーバン!」
 ヴィラールさんが、信頼するキーパーの名前を叫ぶ。

「Laisse le moi(任せな)!」
 フランスのトップリーグのチームで、正ゴールキーパーを務めたコトもあるドミニク・ヴォーバンさんが、横っ飛びに跳んでボールに触れた。

 アレを止めるなんて……完全に、決まったと思ったのに。
落ち込むボクの、左側に転がるボール。
反応が遅れ、先に触られてしまう。

「オラ、これが答えだ、壬帝オーナー!」
 ボールに反応したのは、野性的な体躯のイヴァンさんだった。
筋肉で覆われた脚が、強烈にボールをインパクトする。

 圧倒的な威力のシュートが、相手ゴールの右サイドネットに突き刺さった。

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