ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP033

ラフェル

 べリックさんは、そのままライン際をドリブル開始する。

「そう何度も、チャンスは作らせん!」
 青いビブスの左サイドバックであるリナルさんが、直ぐにべリックさんの進路を塞いだ。
事前に自身が、予測していたから対処できたのだろう。

「ライン際のドリブルだけが、オレの攻撃パターンでは無いのだがな」
 けれどもフランスから帰化した日本人は、ドルブルを一旦停止して真ん中にパスを送った。

「よし、相手のサイドの裏が空いたぞ」
 ボールを受けたアルマさんは、ダイレクトでリナルさんの背後のスペースにパスを入れる。
そこに走り込んだのは、ルネさんだった。

「流石は、アルマ先輩ですね。わたしの動きを、見ていてくれましたか」
 ルネさんが、ボクたちの左サイドをえぐるカタチでボールを受ける。

「だから、やらせないって」
 カバーに戻ったのは、エースのロランさんだった。

「それは、どうでしょう」
 ルネさんは足裏でボールを引くと、ヒールキックで中央にボールを戻す。

「勝負せず、安全策か?」
「いいですか、ロランさん。わたし達ユース上がりは、3人投入されたのですよ」

「な、なにッ!?」
 ロランさんが中央を確認すると、ボールを受けたのは延長戦から投入された3人の残る1人だった。

 その選手は、身長はボクと同じくらいで、オールバックの黒髪を頭の後ろで結んでいる。
ルネさんほど細身じゃない体格で、湖のように澄んだ目をしていた。

「ナイスパスだ、ルネ」
 ボールを受けた選手は小声で呟くと、ポッカリと開いたフィールド中央をドリブルし始める。

「来い、ラフェル。もう1発、お見舞いしてハットトリックだ!」
 巨漢のヴァロンさんが、オリヴィさんのマークをものともせずに、ペナルティエリアに進入した。

「お前に決めさせてやっても、良いのだが。オレも、アピールせねばならんのでな」
 ラフェルと呼ばれた選手は、そのままシュートを放った。

 そこそこの勢いのシュートが、ゴールへと突き刺さる。
キーパーもバックラインも、ヴァロンさんの挙動に集中してしまっていたからだ。

「これで、勝負あったな」
 満足げな笑みを浮かべる、壬帝オーナー。

 同時に、延長戦の前半終了のホイッスルが鳴り響いた。

「延長に入って、まさかの3点ビハインドとはな」
 流石のイヴァンさんも、言葉に覇気がない。

「ユース上がりの3人に、いっきに持って行かれた感じだな」
「前線だけで、ゲームメイクができてフィニッシュまで奪えるんだ。これは、厄介だぞ」
 オリヴィさんも、リナルさんも、3人の能力の高さを認めていた。

 元はと言えば、ボクのせいだ。
みんなにヘンに褒められて、舞い上がっていたから、相手を勢いづかせてしまった。

 落ち込むボクだったが、延長戦後半は直ぐに始まってしまう。
1分ホド経過したところで、ワルターさんの縦パスが、ルネさんにカットされてしまった。

「このままボールを回して、時間経過を狙っても良いのですが、ここはもう1点狙うとしましょう」
 金髪のチャンスメイカーが、再び動き出す。
可憐なドリブルで、今度はボクたちの右サイドを切り崩した。

「今度こそ、オレさまに来い。ハットトリックを決めてくれるわ!」
 ペナルティエリアにそびえる、巨人が大声を張り上げる。

「仕方ありませんね。ちゃんと、決めて……!?」
「まずは、自分の心配をするんだな」
 ルネさんがクロスを上げようとしたところを、ロランさんが狙っていた。

 鋭いスライディングタックルが決まり、ボールを奪ったロランさん。
今度は、前方に居たワルターさんにパスを出した。

「うおっと。ナイスタックルだ、ロラン」
 赤いモヒカンの右サイドハーフは、右サイドラインをドリブルで切り裂く。
強固な相手最終ラインではあったが、左サイドバックだけが弱点だった。

「あのサイドハーフは、得点力があるぞ」
「ここは、ボクが付きます!」
 警戒するヴィラールさんに、アルマさんが反応して圧力(プレッシャー)をかける。

「チッ、もう詰めて来やがったか」
「セーフティーリードと言えど、得点はさせないさ」
 粘り強い守備に持ち込むとする、アルマさん。

「せやケド、オレの役目はここまでよ」
 あっさりとボールを戻す、ワルターさん。

「サンキューな、ワルター」
 ボールを受けたのは、ロランさんだった。

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