ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP022

アルセーヌ・ド・ヴァンドーム

 屈強な身体を大きく揺らしながら、コーナーポストまで走って行くイヴァンさん。
コーナーフラッグを掴んで、征服者のようなポーズを決める。

「身体能力しか取り柄の無い男に決められるとは、何たる失態だ」
 ベンチで、苦虫を嚙み潰す壬帝オーナー。

「よし、まずはウチが先制だ。ナイスゴール、イヴァンさん」
「おお、ロラン。ベンチを見てみろよ、壬帝オーナーのあの顔。悔しくて、たまんなさそうだぜ」

 豪快に笑う、イヴァンさん。
してやったりと言った顔で、自陣に引き上げて来る。

「一馬も、ナイスシュートだった。あれで、イヴァンさんが押し込めたワケだからな」
 ロランさんは、ボクのプレーも褒めてくれた。
やはり、カリスマってヤツがある気がする。

「ロラン、まだ1点取っただけだ。油断はできないぞ」
「わかってるさ、オリビ。相手はランスさんを使って来るか、あるいは……」
「最終ラインから、リベロたちが前線に出て来るかだな」

 ロランさんとオリビさんは、すでに相手の次のプレーを予測していた。

『ピーーーッ!』
 再びホイッスルが鳴らされ、試合が再開する。

 一旦ボールをアルマさんに預ける、ランスさん。
そのまま右サイドに流れて、オフサイドラインを気にしながら、後ろからのボールを待っていた。

「さて、どう動くかな。ボクには、ロランのようなドリブルで突破する能力はない」
 ボールを受けたアルマさんも、さらに後ろへとボールを戻す。

「ずいぶんと消極的なプレーじゃないか、アルマ」
 そこには、アルセーヌ・ド・ヴァンドームさんが待っていた。

「こっちはレギュラークラスが、ディフェンス陣に集中している」
 なにやら独り言を言っている、ヴァンドームさん。

 ヴァンドームさんは、フランスリーグ1部カテゴリーのボルドーのチームで、技巧派のリベロとして名を馳せた人物だ。
センターバックにしては、かなり多彩なテクニックを持っている。

「もしくは前線の枚数を増やすために、オレにボールを預けたってところか?」
 スライドの大きいドリブルを使って、前線へとボールを持ち上がるヴァンドームさん。

「これ以上、貴方に突破を許すワケには行かない」
 その進路を塞ごうと、ロランさんが立ちはだかった。

「そりゃそうだろうな。そっちのディフェンス陣は、控えメンバーしか居ないんだからよ」
 嫌味そうな顔をしたヴァンドームさんが、右サイドから前線に走るランスさんの位置を確認する。
けれどもランスさんには、オリビさんがマークに張り付いていた。

「予想通りだねェ。だが、こんなパスコースもあるんだ、ロラン」
 ヴァンドームさんは、左サイドからペナルティエリアに走り込む、アルマさんへのパスを狙っていた。

「それくらい、読んでいる。ナメてくれるな!」
 ロランさんがパスコースを切りながら、タックルでボールを奪いにかかる。
けれどもヴァンドームさんは、パスを出すそぶりを見せただけだった。

「なにィッ!?」
 勢い余って、ヴァンドームさんの脚を刈り取ってしまうロランさん。
技巧派リベロは地面に転がり、痛そうに脚を抱え込んでいる。

『ピーッ!』
 レフェリーが笛を鳴らし、試合が中断され、ロランさんにイエローカードが提示された。

 ペナルティエリアの10メートルくらい手前からの、直接フリーキック。
キッカーは、さっきまで転げまわっていた、ヴァンドームさんだった。

「この距離なら、べリックのヤツに蹴ってもらうまでも無い。オレが直接、叩き込んでやるさ」
 控え組のキーパーが指示を出し、ヴァンドームさんの前に壁が構築される。

「aucun problème(問題ない)」
 アルセーヌ・ド・ヴァンドームさんの蹴った直接フリーキックは、左から壁を避けるように大きく弧を描いて、ボクたちのゴールへと吸い込まれた。

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