ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP029

ベルナール・フィツ・べリック

 イヴァンさんは、強靭な体躯や野性的な嗅覚で勝負するタイプのストライカーであり、トラップなどの技術はそこまで高くない。
ロランさんからのパスを胸トラップしたが、ボールは足元には落ちず、少しズレたところに落下した。

 よし、このボールだ!
ボクは、そのボールに走り込んでシュートする。

「やらせるかよ!」
 けれどもヴァンドームさんが、一早く気付いて脚を伸ばした。

 ……あ!

 間に合わないと思ったのに、シュートはヴァンドームさんの脚に当たって大きく宙に舞う。
ヨーロッパトップリーグの1つであるフランスリーグを戦って来ただけあって、そのカバーリング能力や守備範囲の広さは流石の一言だ。

「ナイスディフェンスだ、ヴァンドーム」
 落ちて来たボールは、ヴォーバンさんが難なくキャッチする。
着地した勢いのまま、パントキックで前線へとボールを蹴り出す。

「マ、マズい。戻れ!」
 オリビさんが叫んだ。

 グングンと伸びるボールは、前線に張るランスさんの元へと飛ぶ。

「よし、これでやっとチャンスが来たぜ」
 ボールをトラップし、ドリブルを開始するランスさん。
けれども、その前にリナルさんがマークに付く。

「控え組風情が、オレを止められると思うな」
「失点をしてしまったのは、オレの判断ミスのせいだ。ここは、確実に抑える」
 得点を取ろうと焦るランスさんに対し、リナルさんはゆっくりと時間をかけて突破を防いだ。

「こっちだ、ランス!」
 アルマさんが手を挙げたが、あくまで単独でのドリブル突破にこだわるランスさん。
その間にも、蒼いビブスのボクたちは、守備陣形を再構築するコトが出来た。

「なにをやっている、ランス。見す見す、チャンスを潰しているのだぞ」
 ベンチで苛立つ、壬帝オーナー。

「ナイス守備だ、リナル」
 オリビさんも加わって、ランスさんを追い込む。

「ク、クソッ!」
 仕方なく、ボールを後ろに戻すランスさん。

「ヤレヤレ。サッカーと言うスポーツは、攻撃も守備も1人じゃできないよ」
 ボールを受けたのは、ヴィラールさんだった。
再び前線へと押し上げて来たリベロは、ボールを右サイドに展開する。

「良いコト言うじゃないか、ヴィラール。だがオレも、少しはアピールしないとな」
 ボールを受け、ライン際を疾走するべリックさん。
脚が特別速いワケではないケド、スライドが長く突進力がある感じだ。

「来い、べリック!」
 ランスさんが、ペナルティエリア中央でボールを呼び込む。
けれどもオリビさんとリナルさんが、そのままランスさんのマークに付いていた。

「行けるか!」
 右サイドバックのべリックさんが、サイドからアーリークロスを上げる。

「べリックのヤツ、どこに上げてんだ!」
 強烈にインパクトされたボールは、ランスさんからはかなり距離のある軌道を描いた。

「違う、シュートだ!」
 ロランさんが、叫ぶ。

 ……でも、時すでに遅かった。
ボールは右側にスライドし、クロスに反応するために前に出ていたキーパーの左手側を抜き、ゴールの右サイドネットを揺らしていた。

「流石は、べリック。フリーキックじゃなくとも、美しいゴールだ」
 ヴィラールさんが、べリックさんに近寄ってハイタッチをかわす。

「クソッ。べリックのヤロウ、オレを囮(おとり)に使いやがって」
 同点に追いつけたにも関わらず、苛立つランスさん。

 アーリークロスと思いきや、直接ゴールを狙って来たべリックさん。
現代サッカーに置けるサイドバックは、ロングレンジでも沈めてしまう能力を持っているんだ。

 スコアボードに、3-3の数字が並ぶ。
ゲームは、振り出しに戻ってしまった。

 ボクたちが、センターサークルでボールを蹴り出したと同時に、後半終了のホイッスルが鳴る。
紅白戦にしては珍しく、延長戦の設定があるゲーム。

「フウ、流石に一筋縄ではいかないか」
 ボールを受けただけのロランさんが、嬉しそうに言った。

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