ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP031

ヴァロンとルネ

 真新しい芝に、新設されたばかりのピカピカのスタンド。
背の高い照明が四方に立っていて、恐らくは公式戦にも使えそうな練習用スタジアム。

 言っちゃ悪いケド、デッドエンド・ボーイズの設備とは雲泥の差だよな。
ロランさんを始め、才能あふれる選手たちが揃っている。
こんなチームに、ボクたちは勝てるのだろうか。

「一馬!」
 ロランさんの声が、聞えた。
フォワードの位置に入ったボクの足元に、正確なパスが来る。

 あッ、しまった!
けれども他事を考えていたボクは、トラップミスをしてしまう。

「フッ、流石に体力切れか?」
 ボクをマークしていたヴァンドームさんが、ルーズボールをそのままビルドアップ(持ち上がる)して、前線に進出する。

「チェ。褒められた途端、コレかよ」
「仕方ないですよ、イヴァンさん。彼はまだ高1で、フランスのプロリーグで戦っていた選手たちを相手にしてるんですから」

 そう言い残すと、ロランさんは守備へと戻って行った。

 ダ、ダメだ、ゲームに集中しないと!
褒められて、浮かれてる場合じゃないんだ。
パンパンと頬を叩き、気合を入れる。

「さて、相手の坊やはお疲れのご様子だが、お前たちは入って来たばかりだ。壬帝オーナーの眼鏡にかなった実力とやらを、見せて貰おうじゃねェか」
 ヴァンドームさんはセンターサークル付近から、スピードのある低い弾道のパスを左サイドに入れた。

「うわッ、戻らねェと!」
 右のサイドハーフのワルターさんが、背後にパスを入れられ、慌てて戻る。

「そうですね。言われなくとも、見せて差し上げますよ」
 ボールを受けたのは、金髪の長い髪の選手だった。
ヴァンドームさんからの難しいボールを、完全に勢いを殺し足元に止めてしまう。

「やらせるか!」
 赤いモヒカンをなびかせたワルターさんが、後ろからプレスをかけた。
前からも、控え組の蒼いビブスを着た右サイドバックが迫る。

「2人程度で、わたしからボールを奪えますか?」
 クスッと微笑むと、ワルターさんら2人を相手に、華麗なボールテクニックを見せた。
白いビブスに金髪が舞い、足の裏でボールを巧みに操作する。

「コ、コイツ、なんてテクニックだ!」
 フォワードからコンバートされたばかりのワルターさんでは、歯が立たなかった。

「ルネ、延長戦は10分ハーフなんだ」
 アルマさんが、金髪の選手に声をかける。

「では、そろそろ仕掛けるとしましょう」
 ルネと呼ばれた選手は、一気に加速し2人を置き去りにした。

「行きますよ、ヴァロン」
 ボクたちから見た右サイドを突破し、鋭いクロスを上げるルネ。

「ガハハ、任せな」
 ペナルティエリアでは、酔っぱらったような赤い肌をした、少し太り気味の大男が待ち構えていた。

「ユース上がりに、得点されてたまるか」
「ココは、クリアだ」
 オリビさんとリナルさんが、宙を舞う大男に身体を当てディフェンスする。

「ヌルいプレスですな、先輩がた。ガハハ」
 体格的に勝るヴァロンと呼ばれた大男は、2人が相手でもビクともしなかった。

「ドラァッ!!」
 雷鳴のような大声が響き、強烈なヘディングが、ボクたち蒼いビブスのチームのゴールネットに突き刺さった。

 ボクのミスから、決められた失点。
しかも、始めて相手にリードを許すコトに……。

「へェ。やるじゃねェか、あの2人」
「アレは、直ぐにトップチームに定着するよ」
 ヴァンドームさんとヴィラールさんが太鼓判を押す、ヴァロンさんとルネさん。

「オイ、気ィ抜いたプレイをしてると、一気に持って行かれちまう。気合入れろ」
 センターサークルで、イヴァンさんに背中に気合を入れられるボク。
痛いケド、今のボクにはありがたい。

「ヴァロンと、ルネか。面白い選手が、上って来てくれたな」
「面白がっている場合じゃないだろ、ロラン」
 オリビさんが、注意喚起した。

 それは直ぐに、現実のモノとなる。

 ボクへのボールをヴィラールさんにカットされ、左サイドハーフのルネさんに出される。
今度は裏をかいてカットインして、ペナルティエリアに進入したルネさん。
そのままシュートを放つかと思いきや、センター付近にボールを戻す。

「ガハハ、お膳立てご苦労だ、ルネ!」
 酔っぱらった肌のストライカーが、丸太くらい太い右脚を振り抜く。

 豪快にインパクトされたボールは、大砲のような勢いで撃ち出され、ゴールネットを引っ張ったまま固定した。

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