ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP018

戦う決意

「合理主義者である、アナタらしい考えですね、壬帝オーナー」
 ロランさんが、目の前い座る男に言い放つ。

「ですが買収に憤(いきどお)ったのは、オレや昔のチームメイトだけじゃ無かったんですよ」
「フン。別に誰が憤ったところで、知ったコトでは無いがな」
 冷たい態度を貫く、エトワールアンフィニーSHIZUOKAの、チームオーナー。

「……も、もしか……ロランさんの……お姉さん?」
 ボクの普段なら動かない口が、勝手に動いていた。

「そうだよ、一馬。オレの姉であるアンジェは、ウチの事務所に潜入していた時にだと思うが、ウチの買収話を知ってしまったのさ」

 ロランさんの調査報告で、再び事務所は静まり返る。
静かなハズの空調の音が、大きく聞こえるくらいだった。

「アンジェは、オレやオリビの居るチームが買収されると知って、賀野 慈論(がの じろん)に計画の中止を迫ったらしいんだ。だけど賀野は、当然のごとくそれを突っぱねた」

「賀野と言う男は、かなりの野心家なんだな」
「そうだ、オリビ。賀野は番組の開始した当初は、ADだった」
「アシスタント・ディレクターってヤツか」

「ああ。前任のディレクターが数字が取れずに降板して、すぐにディレクターにのし上がっている。それからは番組を実質支配していて、アイドルたちにもかなり危険な企画をやらせたり、サービスカットを要求したりと、視聴率のためなら形(なり)振り構わない感じだったそうだ」

 そう言えば奈央のヤツも、途中から番組が下品になったとか言って、怒ってた気もする。

「オレはヤツの素性を調べた上で、ヤツに直接会って来た」
「彼の素性と言うのは、どんなだい?」
 アルマさんが、優しい顔で問いかけた。

「ロクなモンじゃ、ありませんでしたよ。芸能業界に入る前はいわば半グレってヤツで、パチンコやスロットに金を突っ込みまくって、女から金をたかっていたそうです。ただ、動画編集の才能はあったらしく、企業から案件を貰って金は稼いでたみたいですよ」

「それを活かせる仕事として、芸能界を狙ったのか」
「強引に押し入ったって方が正しいですよ、アルマさん」
「ン……どう言うコトだ?」

「動画編集って言えば聞こえはイイですが、ヤツは成人指定のコンテンツも大量に扱ってたようでしてね。無修正のナマ動画に、モザイクや加工をほどこしたりするんですよ。後にアイドルを目指そうとするコたちも、目先の金のために身を投じる場合もあるって、契約した弁護士が言ってました」

「酷いモノだね。アイドルたちの裏の顔を知っていて、それをネタに……」
「アイドルやアイドル事務所を、ゆすったんですよ」
「それで強引に、芸能界に押し入ったってワケか」

 人の夢を、食い物にする人間が居る。
ボクは生まれて初めて、実感できるレベルでそれを知る。

「芸能界入りしてからも、売れないアイドルに男女の関係を強要していたみたいですね。ただ、関係を迫った相手はちゃんとプロデュースして推したらしくて、だから関係性が表立つコトは無かったのかと思いますよ」

「ハイエナのような、姑息な男だな。まさか、キセラにも関係を迫ったのか?」
「それは、無いでしょうね。ハイエナは、ライオンにケンカは売りませんから」
 ロランさんの回答を聞き、少しだけ顔が緩む壬帝オーナー。

「なるホドな、ロラン。日高グループと、サッカー界のかつてのエースを後ろ盾にする彼女に手を出せばどうなるかは、彼自身が一番知っていたってコトか」

「そうだよ、オリビ。逆に言えば、オレの姉のアンジェは、なんの後ろ盾も持っていなかった」
「そ、それじゃあ、まさか!?」

「ああ。アンジェが自殺した真の理由が、ソレだよ」
 ロランさんが、哀しそうな瞳をしながら言った。

「賀野は、警察に連行されました。オレが、提訴したからです」
「これから、裁判になると言うコトか?」

「はい、壬帝オーナー」
「場合によっては、聞きたくない情報を聞く羽目になるぞ」
「覚悟は、できてます」

 ロランさんは既に、戦う決意をしていた。

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