ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第08章・06話

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セノーテ(地下貯水池)

「復活させない……か。だけどドス・サントスが、どういった手段で復活するのかもわからんぞ」
 手すりから下を眺めながら、背後に立つ2人に質問だけ投げかけた。

「ドス・サントスは、自分の身体をいくつも持っているのですよ。ですがこのどこかに、本体(オリジナル)が隠されているハズです」
 まず、メリクリウスさんが答える。

「本体を……ですか。そんな単純な、話でしょうか?」
「確かにそこまで単純じゃ、無い気もしますね」

「アステカ神話なんぞに結び付けちゃァいるが、結局は自分の命を守りたいだけさ」
 プリズナーの、ドス・サントスに対する評価は、あくまで低かった。

「アステカ神話の情報って、コミュニケーションリングで得ているんだよな?」
「ああ、そうだぜ」
「だったら、次の王は誰になっている?」

「なるホド、コイツらに聞くまでも無いってか。待って……オワッ!?」
 プリズナーの首に巻かれている、髑髏(ドクロ)の接続部を持ったコミュニケーションリングから、電流がほどばしる。

「どうした、プリズナー!」
「わ、わからねェ……が、コミュニケーションリングからの通信が、いきなり途絶えやがった」
 それを巻いたコトもないボクにとって、どんな感覚なのかすらも解らなかった。

「メリクリウスさんのは、どうです?」
「ボクのも、ダメですね。ノイズしか聞こえません。ここの地形の影響かも知れませんが……」
「アステカのコトを調べようとした途端、こうなりやがった。コイツらの誰かか、全員の仕業だろうぜ」

 プリズナーとメリクリウスさんは、ドス・サントスの3人の娘たちに疑いの眼を向ける。
ショチケ、マクイ、チピリの3姉妹は、身を寄せ合いながら反論した。

「アタシたちじゃ、無ェよ」
「だけど、既に次の太陽は目覚めつつあるのさ」
「そうだよ。次の太陽は、生贄を欲しがっているんだ」

「生贄か。丁度おあつらえ向きの娘が、3人居るじゃねェか、なあ」
「だが、まだ殺るのは早いよ。彼女たちは、この茶番劇(アステカ神話)の、ストーリーテラーだ」
「その可能性も、無くはないですね。殺してしまって、ストーリーが進まなくなるのも困りものです」

「可能性ねェ。下らん」
 とりあえず自分を納得させたプリズナーは、銃を収める。

「なあ。あの噴水の水は、やけに綺麗だよな。汲み上げた後に、浄化でもしているのか」
 ショッピングモールのような建物中央部の、吹き抜けの底に見える噴水。
外界の濁り切った雨や黒い海を見て来たボクには、拭き上がる水が美しく澄んで見えた。

「この岩盤の街の地下は、セノーテ(地下貯水池)になってんだよ」
「完全に外界の水から、隔絶してるんだ。もっとも、造ったのはオヤジ直属の科学者らだケドね」
「故郷の風習じゃ、昔はセノーテに生贄を沈めたって話だよ」

「セノーテに、生贄を……雨乞いのための儀式でしょうか」
「アメリカに、おかしな風習を持ち込んでんじゃねェよ、まったく」
「1度、見て置きたいんだが、できるか?」

「アタシらにとっちゃ、神聖な場所なんだ」
「でもまあ、案内くらいはしてやるさ」
「だケド生贄になるのだけは、ゴメンだからね!」

 ボクたちは、ドス・サントスの3人の娘たちに案内されて、岩盤の街を下へ下へと降りて行く。
そこに暮らす人々は、八王子の街とは違って陽気で、手を振ったり挨拶までして来る子供も居た。

「ショッピングモールならよ。エスカレーターくらいは付けて置け。客から、クレームが入るぞ」
 少年兵の時代には戦争をしていた相手国だけあって、辛らつな態度を取るプリズナー。

「今歩いているここも、かつてはセノーテだったのさ」
「それがこんなに深く掘らなきゃ、綺麗な水と出会えなくなっちまってね」
「地上もあんなだから、掘ったセノーテの壁を利用してんだよ」

 話をしている間にボクたちは、エメラルド色の水の巨大噴水へと導かれていた。

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