ファミレスでの捜査
幹線道路沿いにあるファミレスの前には、紅いランプを灯した車の群れが長蛇の列を成していた。
「とりあえず、ロランの姉さんの顔は特定できたワケだ」
「あとはロランの姉ちゃんが、番組内でどんな扱いされているかチェックすんだろ?」
亜紗梨 義遠(あさり よしとお)と、板額 奈央(ばんがく なお)が談笑をしている後ろの席で、 紅華と黒浪がキャプテンに問いかける。
「そうなるな。だが今の動画は、亜紗梨が受け取った円盤の3枚目だ」
「そっか。深夜枠とは言え、1時間番組だからな。1枚に6話分ってところか」
「……ってコトは、もうチョットしか録画されてねェジャン!」
「この中に、事件のヒントが隠されていれば良いのですが、そうで無ければ亜紗梨くんに頼んで、続きを録画して貰えるように頼む必要がありますね」
「そうだな、柴芭。連絡を、頼めるか」
「もちろん。では、ドリンクバーでも取って来ましょうか」
キャプテンにそう告げると、占い魔術師の異名を持つ男は、コップを手に席を立った。
「柴芭のヤツ、連絡するとか言って、ドリンクバー取りに行っちゃったぞ」
「アイツなら、なんとかするだろ。それよりオレらは、動画のチェックだ」
黒浪と紅華は、雪峰のノートパソコンに映し出される番組の映像に、噛(かじ)り付く。
「あ、あの、亜紗梨さん。一馬のコトって、倉崎って人に任せておいて、大丈夫なんでしょうか?」
パンケーキを食べる手を止め、奈央が問いかけた。
「心配は、要らないよ。倉崎さんは、ボクや御剣くんの所属するチームのオーナーなんだ。それに、ボクたちのキャプテンである雪峰くんが、静岡のチームと連絡を取ったりしているからね」
亜紗梨は、目の前の少女にしい笑顔を向ける。
「そ、そうなんですか。カーくんったら、昔からヘンなトラブルに巻き込まれるコトが多くて。目が離せないんです」
「やはり、彼のコトが心配なんだね」
「へッ……ま、まあ一応は、幼馴染みなんで」
「板額(ばんがく)くんは、優しい女性だな」
そう吐露する亜紗梨の手には、フォークに巻かれたままのアラビアータが残っていた。
そのとき、2人の席の隣の通路を、ボブカットの男が通り過ぎる。
「これは……」
亜紗梨がテーブルを見ると、アラビアータの盛られた皿の下に、カードが1枚刺さっていた。
「亜紗梨さん、どうかされたんですか?」
「イ、イヤ、なんでも無いよ。それより例のバラエティ番組って、まだ続きが録画されてるかな?」
「たぶん、録画してあると思いますよ。また、続きを持って来ましょうか?」
「そうして貰えると、助かるよ」
要件を済ませた2人は、そのまま食事を続ける。
「どうですか、お2人とも。事件の手がかりになりそうなモノは、見つかりましたか?」
コーヒーを持って席に戻ってきた、柴芭が言った。
「アイドルのコーナーだけチェックしたケド、残念ながら見つかンね~よ」
「初期の頃は、ただのバラエティだな。中盤辺りから、もっと過激になって行くんだがよ」
「なるホド。まだ試行錯誤の、時期と言うコトですか」
「そうなると、続きが必要になるが」
「今、亜紗梨くんに頼んで来たところですよ」
「流石だな、柴芭」
そう言うと雪峰は、ノートパソコンから円盤を取り出す。
「杜都、金刺、このディスクを、ロランさんに届けてくれるか?」
「ロラン士官は、駅前のビジネスホテルでありますな?」
「連絡は、取れてるんか?」
「ああ。駅前の例の待ち合わせ場所で、落ち合えるハズだ」
「了解したであります」
「ほなちょっくら、行って来るわ」
日焼けした筋肉質の男と、金髪ドレッドヘアの男は、ファミレスを出て行った。
「我々は、どうしますか?」
「地域リーグの開幕も、近い。ロランさんの事件ばかりを、追っているワケにも行くまい」
雪峰キャプテンは、練習日程の画像をノートパソコンに表示させる。
「来週には、いよいよ開幕か」
「そ、そうだな。やるしか無いよな!」
デッドエンド・ボーイズは、新たなステージへと旅立とうとしていた。
前へ | 目次 | 次へ |