ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP015

もう1人の指揮者(コンダクター)

「オフサイドだって、一体どのプレイがだよ!」
 審判に立てつく、紅華さん。

「キミにボールが出た時点で、キミはオフサイドポジションだった。これ以上の抗議は、カードの対象と成り得る」
 紅華さんに釘を刺す、審判の人。

 そう……ボクが紅華さんに出したボールが、オフサイドだったんだ。

「アレが、樹莉 海斬(じゅり カイザ)か」
 雪峰キャプテンが、相手バックラインの中央に立つ男を見ている。

「前線に上がっていたと、思ったのですがね。あのワンプレイの間に戻ってバックラインを統率し、紅華くんをオフサイドトラップにかけるとは、大したモノです」
 柴芭さんも、カイザさんのプレイを高く評価していた。

「カイザ……MIEの守備を統率する、リベロね。5枚のバックラインを自在に動かし、相手をオフサイドトラップに陥(おとしい)れるよ」
 ベンチで控え選手に向けて、サッカー解説を繰り広げるセルディオス監督。

 監督の言う通り、上がっていた左サイドバックのトラヤさんを除いた4枚のバックラインが、キレイに横1列に並んでいた。

「へへッ。お前もなかなかの読みだったが、まだまだ甘い甘い。ボールの出所に圧力(プレス)をかけるのは、オレの役目。上手いコト、オフサイドにかかってくれたな」

 起き上がったボクに話しかけて来た、ネロさん。
どうやらボクは、ネロさんにボールを出させられたらしい。
MIEとしても、あらかじめデザインされた守備のようだった。

「テメー、あえてオレに抜かれたのかよ?」
 左サイドを帰陣する紅華さんが、相手の右サイドバックに問いかける。

「当然だ。あの程度のドリブルで、早々オレを抜けると思うなよ」
 鉄壁の守備を誇るハリアさんは、堂々と言い放った。

 試合は、MIEのゴールキーパー、アルマさんのキックで再開する。
甘いマスクのキーパーがボールをカイザさんに入れると、観客席からは黄色い声援が飛んだ。

「キャー、アルマー!」
「カイザァ、もうカッコ良過ぎだよォ」
「2人ともに、抱かれたい……」

「ケッ! なんだってんだ。サッカーに関係ない応援、すんなっての!」
 気を悪くした黒浪さんが、右サイドから俊足を飛ばし、カイザさんにプレスをかける。

「このオレから、ボールを奪えるとでも?」
 カイザさんは、そのままドリブルを開始した。

「あのヤロウ、クロのプレスに焦ってボールを前線に蹴り出すかと思ったが、ドリブルだとォ?」
 逆サイドの紅華さんが、驚いている。

「オォ~イ、どこ行くんだよォ!」
 慌てて方向を変え、弧を描くように走ってカイザさんに追いつく、黒浪さん。

「なるホド、大したスピードだ。サッカーに置いても、脚の速さは武器にはなる。だが、それは個性の1つに過ぎん」
 キャプテンマークを巻いたリベロは、黒浪さんのプレスを受けつつも、ボールを前へと運んだ。

「クッ、なんだコイツ。人がプレスかけてんのに、余裕のドリブルかましやがって!」
 向きになって、カイザさんの前に出ようとする黒浪さん。
その時、カイザさんはドリブルを止めた。

「なッ……しま!?」
 黒浪さんとカイザさんの間に、必然的に大きく間(スペース)が開く。
カイザさんは、その瞬間を見逃さなかった。

「今度こそ決めろ、バルガ」
 ライナー性の鋭いボールを、ペナルティエリアに入れるカイザさん。

 屈強な身体のチュニジア人ストライカーが、高く宙を飛ぶ。

「やらせは、しません!」
「ココは、なんとしても……」

 バックラインに入っていた柴芭さんと、左のセンターバックの亜紗梨(あさり)さんも、バルガさんに身体をぶつけるように跳んだ。
けれどもバルガさんは空中でもビクともせず、凄まじい威力のヘディングを放つ。

「……アラ?」
 当然、海馬コーチは1歩も動くコトが出来ず、ボールはゴールネットを激しく揺さぶった。

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