ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第7章・EP049

f:id:eitihinomoto:20191113233812p:plain

陰謀論の正体

「悪ィ、ロランさん。どうやら、オレのガールフレンドたちや姉貴たちも、番組は撮っていないか、撮っていたものの、観たらすぐに消しちまってたみてェだ」
 紅華が、申し訳無さそうに言った。

「千鳥さんも、深夜アニメなら撮ってるケド、バラエティは撮ってないってさ」
「偉いジャンか、クロ。ありったけの勇気を総動員して、千鳥さんに連絡とったんだな?」
 倉崎たちの頭上で、黒浪が紅華にヘッドロックされている。

「すまないな、ロラン。大した情報を、集められなくて」
「イイんですよ。実はある程度、わかってました。バラエティの性質上、録画した番組をいつまでもとって置くってのは、普通しませんからね」

「オレさまだって、レコーダーに録画したままにしてんのは、サッカーの試合かせいぜい気に入ったアニメくらいだモンな」

「アニメ好きが、アニメを撮りまくってるってのはチョクチョク聞くが、バラエティともなるとな。根っからのお笑い好きか、落研に入ってるヤツとか当たらないと、ムリかもだぜ」

「オレはサッカー以外はよくわからんが、そんなモノか……」
 黒浪と紅華の、頭の上からの声を聴き、組んだ腕に頭を乗せる倉崎。

「恐らく、ロランさんの方でも、似たような調査をされたのでしょう?」
「流石だね、柴芭。よく当たる、占いだ」

「いえいえ。占いではなく、ただの人間観察ですよ。それよりロランさん。残念ですが、ロランさんの問題は、1日2日で解決するモノではありません」

「まあな。だけど名古屋は、宿泊費が安いから助かるよ。駅前のビジネスホテルで、1週間くらいやり過ごせる金は持っている。しばらくは腰を据えて、事件を探るつもりだ」

「そうなると、エトワールアンフィニーSHIZUOKAには、完全に戻れなくなるぞ?」
 倉崎が隣の席に顔を向けると、男は窓の外を眺めていた。

「元よりアレは、オレのチームじゃありません。オレの愛したチームも、もうこの世には無いんですよ」
 バスの古びた窓ガラスに、寂しそうなロランの顔が映っている。

「そんじゃ今日のところは、この辺で解散ってコトでイイか?」
 会話をどこまで聞いていたのか、恰幅の良い運転手が言った。

「その辺、ちょっと入ったところでイイぜ。地下鉄の駅が、近いからよ」
「了解だ」
 海馬コーチは、紅華の提案を瞬時に承諾する。

 マイクロバスは、高速道路が通る3車線の大通りを左折すると、大きな公園の脇に停車した。

「今日は、本当に世話になりました。それに、たくさん迷惑をかけてしまって……」
 大きなスポーツバックを持って降りる乗客の中で、1人だけなにも持たない男が頭を下げる。

「気にしないでくれ。オレはケガも治ったコトだし、明日からはチームと合流する予定だ。良かったらウチを、名古屋の拠点に使ってくれて構わないが」

「そこまで、甘えるワケには行きません。それにこれは、オレの姉さんの事件なんです。できる限り、自分の手で真実を確かめたいんですよ」
 そう言うとロランは、公園を囲う街並みの中に消えて行った。

「一人で行かせて、良かったのでしょうか」
「今はスマホでホテル予約もできる時代とは言え、名古屋のコトなどほとんど知らないでしょう」
 いつの間にか、柴芭と雪峰が倉崎の背後の立っている。

「それに事件って、ホントに黒幕が絡んでたりすんのかな?」
「お、オメーにしちゃあ、やけにいいトコ突いてるじゃねえか、クロ」
 黒浪と紅華も、相変わらず言い合っていた。

「陰謀論などは結局のところ、自分ではどうにもならないコトを、社会を陰で操る黒幕とやらの責任にしている場合が、大半ですからね」

「実際に、影の権力者が裏で世界を動かしてるなんて、ファンタジーに過ぎません。今回の事件も、ロランさんの思い込みという線も、否定できませんよ、倉崎さん」

「わかっているよ、柴芭、雪峰。だがそれが事実でも、ロランには必要な儀式なのかも知れない」
 倉崎が、言った。

 彼の見上げる視線の先には、巨大な高層ビル群が夜の闇にそびえ立っていた。

 前へ   目次   次へ