ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP004

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連行される一馬

 地域リーグの開幕直前、ギリギリ滑り込むカタチで加入が認められた、清棲デッドエンド・ボーイズ。

「カーくんたちのチーム、地域リーグだっけ。加入が、認められたのよね?」
 オレンジジュースを飲みながら、自宅のリビングでくつろいでいると、奈央が言った。

「奈央がどうして、知ってるんだよ?」
「ん~、亜紗梨さんに聞いた」
 どうやら奈央と亜紗梨さんは、まだ親しくしてるみたいだ。

「その割には、ぜんぜんテレビで放送されないわね」
 気怠そうに呟く奈央は、向かい側のソファーに座っている。

「放送されていたよ、深夜のニュースでチョットだけ……」
「なんで、もっと放送されないのよ?」
「名古屋には、Zeリーグのトップリーグに所属する、名古屋リヴァイアサンズがあるからだよ」

「そっか。確か、倉崎って人も居るんだよね?」
「倉崎さんは、ウチのオーナーでもあるんだ。今はケガして、試合には出て無いケドね」

「最初に遭ったときは、胡散臭い人だと思ったケド、まさかホントにサッカークラブのオーナーだったなんてね。しかも、高校生なんでしょ?」

「ウン、今は高校3年生」
「高校生で、プロサッカー選手で、チームオーナーかぁ。だったらもっと、放送されていても良さそうじゃない?」

 再放送のドラマを見終わった奈央は、ボクの家のテレビをリモコンでポチポチと変え始めた。

「あッ、もしかしてコレ、そうじゃない?」
 ボクの方に顔を向ける、奈央。

「アレ、カーくん?」
 けれどもボクは、既に家を飛び出していた。

「奈央のヤツ、サッカーなんて興味無かったハズなのに、今日はやけに喰いついて来たな。ひょっとして、亜紗梨さんの影響かな?」
 サッカーボールを転がしながら、近所の公園に向かうボク。

「そうだ、練習場に行ってみよう。誰か、居るかも知れない」
 モヤモヤした気持ちを振り払うように、川べりの練習場へと向かった。

「やっぱ、誰も居ないや。元々、デッドエンド・ボーイズ専用の練習場ってワケでも無いモンな」
 湿った土と砂の入り混じったグランドに降りると、ボクはボールを置きシュート練習を始める。

 まずは破れかけのゴールに向けて、普通にシュート。
それから段々と距離を取って、ミドルシュートの練習に移行した。


「杜都さんは強烈なパワーミドル、柴芭さんは外から巻いてくるシュートを持っている。ボクもこのシュートを、ある程度はモノにして置かないと……」
 オーバーレイ狩里矢との練習試合で、偶然決められたシュート。

「ドライブシュートだッ!」
 ボクはあのときの感覚を呼び起こしながら、ミドルシュートを放つ。
ボールの下側を、こそぎ上げるようにして撃ち上げた。

「うわあぁ!」
 するとボールは、ゴールバーの遥か上空を越え、遊歩道の方へと飛んで行ってしまう。

「ダメだ、セルディオス監督みたいに、上手く行かないや」
 慌ててボールを追いかけていると、一級河川をまたぐトラス橋の上で、スーツ姿の大人が数人駆けずり周っているのが見えた。

「こんなところにスーツって、見かけないよな。なにか慌ててるみたいだケド……まあいいか?」
 ススキの群棲してる辺りを、探し始めるボク。

「お、あったあった……ンンッ!?」
 ススキの中でボクは、自分と同じ顔を見つけた。

「うわあ、なんだッ!?」
 目の前のボクの顔も、ボクを見て驚いている。
けれども、よく見ると髪の色が少し違うし、長い気がした。

「オイ、今声がしなかったか?」
「橋の下かも知れん。行ってみよう」
 するとナゼか、橋の上の大人たちが降りて来る。

「マ、マズい、見つかったのか!」
 目の前のボクの顔は、ボクの口を塞ぎススキの群棲の奥深くに、ボクを引きずり込んだ。

「どうやらまだアイツら、ボクには気付いていないみたいだ。でもこのままじゃ、時間の問題か……」
「ムウ……グウゥ!?」
「あ、ゴメン、苦しかった?」

「プハッ……、ゼハー、ゼハー!」
 手を離され、必死に息を吸い込むボク。

「それにしてもキミ、ボクにそっくりでメチャクチャ良い男じゃないか?」
 少しだけ髪色の違う、ボクが言った。

「キミは……?」
 自分にそっくりなせいか、初対面なのに話せる。

「ボクは、詩咲 露欄(しざき ロラン)。それよりキミ、このジャージを着てくれないか」
 ボクはジャージを手渡される。

 なんだか、星がいっぱいついた黒いジャージ……なんでこれを、ボクに?
 疑問に感じながらも、ジャージを着るボク。

「悪く思わないでくれ」
「う、うわあッ!」
 ボクはロランと名乗った人に、ススキ野から押し出される。

「ロランくん、こんなところに居たのか」
「さあ、記者会見場に戻るぞ」
 2人のスーツを着た大人が、ボクの両腕をガッシリとホールドした。

「へ……なんで?」
 ボクは2人の大人に、連行されて行った。

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