ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第8章・EP035

試合終了のホイッスル

 ペナルティーエリア、わずか手前からのフリーキック。

「よし、オレが決めてやるぜ!」
 キッカーに立ったのは、ファウルを受けたイヴァンさんだった。

「待って下さい。キッカーは、オレです」
 蹴る気が満々の野生児ストライカーに、声をかけるロランさん。

「残念だが、譲る気は無ェぜ。これは、オレが奪ったフリーキックだ」
 イヴァンさんはボールを強引に置き、ロランさんを腕で跳ね飛ばそうとした。

「アナタじゃ、決められないから言ってるんです。この試合オレは、勝たなくちゃならない」
 ロランさんは、イヴァンさんの腕首を掴んで押し返す。

「なんだと、テメー。自分なら、決められるとでも言うのか?」
「はい。絶対に決めます」
 青いビブスの10番は、そう言い切った。

 ス、スゴい自信だ。
そこまで、言い切るなんて。

「ケッ、しゃ~ない。今回だけは、お前に譲るがよ。決めなかったら、承知しねェぜ」
「心配いりませんよ、決めますから」
 ロランさんが、左斜め後ろに下がって助走幅を取る。

 リベロのヴィラールさんとヴァンドームさんを中心に築かれた壁は高く、その向こうにはヴォーバンさんが控えていた。
前線にはルネさんとヴァロンさんが残り、アルマさんやラフェルさんも壁に加わっている。

「姉さん、オレはオレのサッカーを、貫くよ」
 助走を開始する、ロランさん。
右脚のインサイドで、ボールを蹴り上げる。

 ……決まった。
ボールは美しい弧(シュプール)を描き、ゴールの右隅へと納まっている。

 キーパーが1歩も反応できない、美しいフリーキックだった。

「よっしゃ、これで1点差だぜ」
 キックを譲ったイヴァンさんが、ボールを抱えて戻って来る。

「あと1点取って、同点にするぜ」
「違いますよ、イヴァンさん。あと2点取って、逆転です」
 試合が再開され、ボールを受け取ったばかりのルネさんから、ボールを奪うロランさん。

「ここは、通させない!」
 アルマさんが直ぐに反応し、ロランさんのドリブルコースに立った。

「一馬!」
 前回は、強引なドリブル突破を試みたロランさんだったが、今度はパスを選択する。
パスの相手は、ボクだった。

 さっきは、ボクがボールを奪われたせいで失点したのに……。
それでもボクに、ボールをくれるんだ!

 ロランさんの期待に答えようと、必死にボールをキープする。
でもヴィラールさんは、簡単には前を向かせてくれない。

「ボウズ、こっちだ!」
 中盤から上って来たイヴァンさんが、ボールを要求した。

 ヴィラールさんを相手に、いつまでボールキープできるか解らない。
ココは……。

「待て、一馬。ヴァンドームが狙っている!」
 オリヴィさんが、叫んだ。
ボクは慌てて、パスを止める。

「チッ、余計なマネを……」
 パスカットをしようと飛び出したヴァンドームさんの背後に、スペースが生まれた。

 よし、ここだ。
ボクは出来たスペースに、スルーパスを出す。

「ナイスだ、一馬!」
 声でアドバイスをくれたオリヴィさんが、生まれたスペースに走り込んだ。

「マズい、オリヴィはシュートを持っているぞ!」
「わかってるぜ、ヴィラール!」
 直ぐにオリヴィさんに対応する、2人のフランス人リベロ。

「オレは、シュートは本職じゃないんですがね」
 裏をかき、フワリとしたボールを上げるオリビさん。

「流石は相棒だ、オリヴィ」
 ヴィラールさんの前に飛び込んで来たのは、ロランさんだった。

 華麗なボレーが、キーパーのニアサイドに決まる。
またしても動くコトの出来なかったヴォーバンさんが、ピッチを叩いて悔しがる。

「これで、同点だぜ」
 イヴァンさんが、ロランさんの肩を抱いた。

「いえ、まだ同点です。早く試合を……」
 その時、ホイッスルが鳴る。

 得点を認めるホイッスルは鳴っていたので、それは試合終了のホイッスルだった。

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