ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第12章・02話

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バルガ王の誕生

 その日、崩壊し王を失った海底国家、カル・タギアに新たなる王が誕生した。

「みんな、よく戻ってくれた。知っての通り、オヤジのヤロウが大魔王にされちまってよ。悪いがしばらくの間、このオレが玉座に座るコトになった」
 新王は、海皇の象徴である蒼いマントを纏い、頭には真珠の散りばめられた黄金の王冠を被っている。

「バルガ王子ーーー、アンタに付いて行くぜーーーッ!!」
「バカ、もう王子じゃなくてバルガ王だろ!」
「イヤ、そうだった、アハハ!」

 街の広場に集まった海の民は、地上の王国ほどは格式ばってはおらず、王との距離も近かった。

「戴冠っつっても、正式なモンじゃねぇ。海皇の宝剣たる『トラシュ・クリューザー』も、オヤジのヤツが持って行っちまったからな」

「いえ、兄上。例えそうであったとしても、今のカル・タギアの王は、兄上を置いて他におりません」
 ギスコーネが、兄に向って片膝を付きながら傅(かしず)いた。

「オイ、ありゃあギスコーネのヤツじゃねェか!」
「アレ、バルガさまとギスコーネさまって、犬猿の仲じゃなかった?」
「自分の派閥まで作って、バルガ王子を目の仇にしてたクセに、どう言った風の吹き回しだ?」

「まあまあ、仲が戻ったのなら何よりじゃわい」
「でもよ。この国をこんなにしやがったサタナトスって野郎を、手引きしたのはアイツって話だぜ」
「そうだ、死んじまったヤツも、たくさん居るんだ。すんなり許せるもんか!」

 国民たちの憎悪の目が、ギスコーネに向けられる。

「コイツは、何発かぶっ飛ばしてやったんだが、そんなコトで死人が生き還るモンでも無ェコトは、解っている。だが今は、それ以上に重要な問題が……」

「バルガ王。ボクの罪は、自分が1番解っております。罪は、甘んじて受け入れましょう」
 民に向って、深く頭を下げるギスコーネ。

「スマンな……みんなの不満も、最もだ。だが今は、コイツの力も必要なんだ。どうかこの通りだ、コイツの罪を、オレに預けてくれ!」
 冠が落ちそうになるくらい、深く頭を下げるバルガ王。

「ま、まあ、王がそこまで言うんなら……な」
「仕方ないわね、もう悪さすんじゃ無いわよ」
「王子の右腕になって、補佐してやりな」

「済まない……みんな……」
 涙を零す、ギスコーネ。
このとき彼は、自分の罪深さを心底理解した。

「バルガ王、罪深き弟を救うなど、王として立派な心掛けだと思いますわ」
 グラマラスな身体に、真紅の鎧を纏った女将軍が言った。

「ウン、そだね。マント着てると、確かに王さまっポイかも」
 ライム色の水着に、透明な鎧を来た少女も続く。

「ガラ・ティアに、スプラ・トゥリーか。お前らは、オレに従ってくれるか?」
「もちろんですわ。このガラ・ティア、バルガ王に忠誠を誓いましょう」
「ボクも、王に忠誠を誓うよ。愛するのは、ダーリンだケドね」

 2人にまで減ってしまった、7海将軍(シーホース)も、王に対しヒザを付き、頭を下げた。

「まずはこのカル・タギアの、復興を目指すぜ。みんなの力を、貸してくれ!」
 バルガ王のぶっきら棒な演説に、海の民たちから歓声が沸き起こる。

「おうよ、バルガ王。任せな!」
「こうしちゃいらねぇ。潰れた建物を撤去して、建て直すぞ!」
「まだ、避難したままのヤツらも、呼び寄せようぜ!」

 広場は活気に溢れた民で、ごった返した。
けれども、物陰からその様子を見ていた1人の少女が、広場を立ち去る。

「ン、アレは……」
 王の後ろに控えていたベリュトスだけが、そのコトに気付き後を追った。

「おい、キティ。こんなところに居たのかよ」
 海底都市の漁港の桟橋に立つ、鍛えられた体躯の男。

「うわ、ベリュトス……なんでお前が、ここにィ!?」
 漁港と言っても漁船は殆ど存在せず、あったとしても半壊している。
倉庫も市場も加工場も、それぞれが大きく崩れていた。

「お前の気持ちは、解るつもりだ。オレも、兄貴を亡くしたからよ」
「そう……でもわたしは、姉さんが死んだのを、この目で見たワケじゃない」
 男が見つけた少女は、瓦礫の上に座って海を見つめている。

「ティルスが死んだのが、信じられないのか?」
「当たり前でしょ、姉さんが簡単に、死ぬハズが無い」
 海と言っても、海中のため水平線は無く、魚が泳ぐ海がそこにあった。

「まあ、そうなるよな。オレだってまだ、兄貴が死んだなんてウソみてーに思ってるし」

「そう……やっぱ姉さんは……」
 少女はうずくまりながら、むせび泣く。
ベリュトスは、その背中をいつまでも見守った。

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