ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第13章・14話

f:id:eitihinomoto:20190914042011p:plain

マー・メイディアの女王

 太陽の光が底まで届くほど、澄んだ海。
マー・メイディアの兵士たちも、半分は監視役としてスグアバ号の周りに残り、もう半分は王たちを先導して、サンゴの街へと案内した。

「間近で見ると、より一層キレイなのがわかるな。まるで絵画みたいに、色取り取りのサンゴの家が建ち並んでる」
 海人であるバルガ王と2人の側近は、苦も無く海中深くへと潜って行く。

「そうだな、キティオン。遠目にはサンゴをくり抜いて、家にしてるのかと思ったけどよ。どうやらサンゴ自体を、家のカタチに生育させてるみたいだぜ」
 ベリュトスが、サンゴの家の建築方法を推測する。

「それにしたってだ。サンゴなんて生育するのに、とてつもねェ時間がかかるぞ。これだけの規模の街を創るのに、何年の歳月をようしたんだ」
 バルガ王の感嘆の声を聴き、マー・メイディアの兵士たちも少しだけ警戒を緩めた。

「バルガ王。わたしは防衛隊の隊長を務める、ステュクスと申します」
 名乗りを上げる、女性のマー・メイディア。

「オケ・アニスの女王ペイトーさまは、地上にあった交易の街が津波で失われてしまい、お嘆きでございます。同じ海に生きる者として、どうかお力添えをお願いしたいのですが」

 彼女は、ウェーブのかかったサックスブルーの髪に、コーラルグリーンのホタテ貝を装飾した胸当てをしている。
バイオレット色の瞳に、ミントブルーの魚の下半身をしていた。

「実はこちらも、同じ考えを持ってやって来たのさ」
「誠でございますか、バルガ王?」
「ああ。詳しい計画は、女王に会ってから話すぜ」

 ステュクスに案内されたバルガ王ら一行は、海底からそびえるサンゴのタワーへと辿り着く。
3方向に巨大な根を伸ばした、艶やかな城の内部へと入って行った。

「城の中は、海水が抜かれているんだな」
「はい。我らマー・メイディアは、かつては海の中のみでしか生きられませんでした。ですが秘薬によって人の脚を得てからは、むしろこちらの方が暮らしやすいのです」

 ステュクスの魚の下半身はいつの間にか、先端が割れてマーメイドスタイルのドレスとなっている。
他の兵士たちも同様で、ドレスの中には人の脚があって、普通に城の床を歩いていた。
尾ヒレは、後ろにピンと跳ねあがっている。

「秘薬とは、凄まじい効果だな。便利なモノだぜ」
「かつて地上に憧れた、同胞の犠牲があってのコトです」
「そうかい。事情も知らず、軽口を叩いちまったな」

 ステュクスに率いられた一行は、らせん状の階段を上へ上へと昇って行く。
巻貝の中を歩くように、上へ行くホド階段の幅も狭くなって行った。

「ここが、女王ペイトーさまの玉座にございます」
 話しているうちに一行は、大きな白い扉の前に立っていた。
ステュクスに従っていた、マーメイドスタイルのドレスの兵士たちが、左右に別れて扉を開く。

「久しいですね、バルガ。もっともお前は赤子だったゆえ、わたくしのコトは覚えてはいないでしょう」
 真珠やサンゴの宝飾が散りばめられた、玉座に座った女性が言った。

「悪ィな、ペイトー女王。オレと、会ったコトがあるのかい?」
「そうですね。お前と言うより、お前の母親に会ったと言うべきでした」
「お袋……か」

 女王は、真っ白な髪が上に向かって伸びている盛り髪で、白いドレスに真珠を散りばめている。
肌も透き通っていて、蒼い宝石のような瞳をしていた。

「残念だがよ。海の女王であるシャラ―・ベラトゥは、サタナトスの手下によって……」
「いいえ、そうではありません。お前の、本当の母親に会ったのです」

「オレの、本当の母親……ま、まさか!?」

「わたくしは、まだ人の心を持っていた頃の、美しいメ・ドゥーサに会ったのです」
 マー・メイディアの女王は、バルガ王の過去に関わる秘話を伝えた。

 前へ   目次   次へ