ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第7章・EP044

f:id:eitihinomoto:20191113233812p:plain

大都会のターミナル駅

「さて、そろそろ話してくれないか。ロラン、キミがチームを抜けてまで、やろうとしている目的を」
 倉崎 世叛が言った。

 大都会を流れる1級河川をまたぐ交通量の多い橋は、車のヘッドライトとテールランプで輝いている。
練習とミニゲームを終えた、デッドエンド・ボーイズの選手たちは、海馬コーチの運転するマイクロバスへと乗り込み、名古屋の中心部へと向っていた。

「仕方ありません。アレからオレのチームは、アナタのチームに一方的に点を取られて、負けてしまいましたからね」
 右側最前列の席に座る、詩咲 露欄(しざき ロラン)が言った。

「オレのチームに、レギュラーの大半が集まっていた。振り分けが、悪かったんだ。イヤなら、ムリして話さなくて構わんぞ」

 

 マイクロバスは中古ではあったが、2人掛けの古びたシートが、狭い通路を挟んで左右に並んでいる。
薄暗い車内には、大きな窓から街路灯やらヘッドライトやらの光が、次々に差し込んでいた。

「いえ、倉崎さん。アナタにもこのデッドエンド・ボーイズにも、ずいぶんと迷惑をかけてましたからね。ちゃんと、話して置きますよ」
 名古屋の中心にある巨大駅を取り囲むようにそびえ立つ、高層ビル群が徐々に近寄って来る。

「ボクには、姉が居たんです。3つホド年上でしたから、生きていたら23歳になってましたね」
 ロランの言葉から、姉がすでに故人となっているコトを知る倉崎。

「姉は、子供の頃はサッカーをやっていて、ボクもその影響でサッカーを始めたんです。ま、姉は直ぐに飽きて、辞めてしまったんですケドね」
 中心街へと侵入したマイクロバスは、長い交通渋滞にハマっていた。

「元々姉はアイドル好きで、サッカーを始めたきっかけも当時のスター選手だったシャルオーナーに夢中だったって言う、それだけの理由でした。むしろオレの方が、サッカーにのめり込んじゃって、姉とはよくチャンネルの奪い合いをしてましたね」

 牛歩のようにしか進まない、マイクロバス。
運転手の太ったオジサンが、セルディオス監督に怒られている。

「オレは男兄弟だったから、見る番組も被っていたが、女兄弟ともなるとそうなるのか」
「ええ、チャンネル争いは、し烈を極めましたよ。結局は姉が勝って、オレはオヤジのタブレットでサッカー見てましたケドね」

 赤いテールランプが、橋の向こうまで続いている。
それでも市内に入ると、車線が増えて少しは車が流れるようになっていた。

「そんな姉も、高校生になる頃には本気で、アイドルを目指すようになってました。その頃のオレも、サッカー漬けの生活になっていて、姉とはあまり話す機会も無い感じで……」
「そう言う時期も、あるよな。偉そうに頷いている、オレのが年下ではあるが」

「倉崎さんて、他のチームメイトが呼んでるみたいに、『倉崎さん』って感じなんですよね」
「なんだ、そりゃ。爺さんキャラだって、言いたいのか?」

「まあまあ、それより話しの続きをしましょう」
 ロランは倉崎から請われるまでもなく、自分から話を続ける。

「アイドルに憧れる女の子って、かなりたくさん居る感じじゃないですか。でも実際に、アイドルになれるのは一握りです。でも姉は、その幸運に恵まれた……」
 そう話すロランの顔が、とても寂しそうに見える倉崎。

「姉は無謀にも、日本を代表する芸能事務所の、新人アイドルを発掘するオーディションを受け、見事に合格したそうです。もっとも、親にもナイショで東京に受けに行ったみたいで、オレが知る由もありませんでした」

「その、芸能事務所と言うのが……」
 マイクロバスはやっとの思いで渋滞を抜け、複数の鉄道路線や地下鉄、バスなどが乗り入れる巨大なターミナル駅に辿り着いていた。

「日高 成瓢(ひだか せいひょう)が率いる日高グループの、シャイ・二-事務所です」

 電車も車も人も、世話しなく行き交う駅の周囲。
大都会の街が眠りに就くには、ほど遠い時間だった。

 前へ   目次   次へ