ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP039

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ハードな船出

 惨敗を喫した、エトワールアンフィニーSHIZUOKA。
見知らぬチームメイトの顔には、悔しさが滲んでいる。

「完敗じゃねェかよ。相手のディフェンスラインが強固過ぎて、チャンスすら無かったぜ」
「それには同意せざるを得ないな、イヴァン。まさか、ここまでのチームを作っていたとは……」

 普段は犬猿の仲の、イヴァンさんとランスさん。
そんな2人ですら意見を同調するしかない、惨憺(さんたん)たる結果だった。

「C'est la vie(セ ラ ヴィー)これが人生さ……」
 ヴィラールさんが、相手フォワードの放った言葉と同じセリフを呟いた。

 個人主義の国であるフランス出身者らしく、ジャージに着替えるとさっさとピッチを去って行く。
ヴァンドームさんやヴィラ―ルさん、それにフィツ べリックさんも、それぞれにピッチを離れた。

 完敗と言う揺るぎない事実の前に、エトワールアンフィニーSHIZUOKAは、早々にチーム崩壊の危機を迎える。

「ヤレヤレ、これはいきなりハードな船出だね」
「そうですね、アルマさん。これはオレたちが、何とかチームを纏(まと)めないと……」

 アルマさんと、オリビさん。
2人の中心選手の言葉にも、力が無かった。

 ……もしボクが、ロランだったらどうなっていただろう。
実際に、彼のプレイを見たわけじゃない。
でも、彼は10番を背を背負っていた。

 10番とは、サッカーに置けるエースナンバーだ。
ペレ、マラドーナ、ジーコ、プラティニ……。
数えきれないスターたちが、10番の背番号を背に奇跡を起こし、チームを勝利へと導いた。

 エトワールアンフィニーSHIZUOKAで、エースナンバーを任されている、ロラン。
ボクはその代役を、こなせなかったんだ……。

 悔しさが、込み上げてくる。
少しでも活躍できると思ってピッチに入った、自分が情けない。

「ロラン、そう落ち込むな。キミだけのせいじゃない。この結果は、チーム全体が負うべき責任なんだ」
 オリビさんが、ロランを庇う発言をする。
近代的なピッチには、近代的な照明の光が落ち、完全にナイターの様相を呈していた。

「ロラン、オリビ……そろそろ話してくれても、いいんじゃないかな?」
 アルマさんが、少し厳しい顔でボクたちを見ている。

「ロラン……キミは、誰なんだい?」

 ボクは、御剣 一馬だよ……と、即座に答えられるボクじゃない。
でも、アルマさんは優しそうだし、そのウチちゃんと喋れそうではある。

「アルマさん、いつから気付いていたんです?」
「そうだね、ここに来て最初に話したときから、多少の違和感はあったよ。でも、試合になって確信した。彼のプレイは、いつものロランのプレイスタイルにはほど遠い」

 ですよね……。
ボクがちゃんと話せたとしても、言い返す言葉も無い。

「彼の名は、御剣 一馬。まだ高校1年生で、名古屋のデッドエンド・ボーイズに所属しているんです」

「デッドエンド・ボーイズ……聞いたコトある名だね。確かボクたちと同じく、今年から東海の地方リーグに加入するっていう……」

「ええ、そうです。あの『倉崎 世叛』の、立ち上げたチームなんですよ」
「倉崎 世叛って、まさか……彼もまだ、高校生だろう?」
「高校生のZeリーグ新人王候補で、サッカーチームのオーナーでもあるみたいですよ」

「ヤレヤレ、彼には何度も驚かされるね」
「スマホ越しで話したんですが、落ち着いたモノでしたよ」

「こっちはまだ、地方リーグでくすぶってるっていうのに、彼は高校生にしていくつの肩書を持っているんだか」
「新しいチームになって希望もありましたケド、これは骨が折れそうですね」

 近代的なクラブハウスの2階の階段の踊り場から、ピッチを眺めるボクたち。
眼下では、すでに次の試合が始まっていた。

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