ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP048

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情報収集基地

「ロランにとって、もっと身近な存在……まさか?」
 倉崎は、隣の席に座った男の顔を見る。

「ええ、サッカーチームのコトですよ。去年までオレは、沼津のチームに所属してました」
 ロランは答えた。

「名称は、沼津ディープブルー。愛称は、アングラーズ。静岡の地域リーグに置いて、去年度に優勝したチームですね」
 倉崎たちの斜め後ろの席に座った雪峰が、タブレットで調べた情報を提示する。

「沼津……確か、エトワールアンフィニーSHIZUOKAの母体となったチームも……」
「その通りです。オレやオリビの居たチームは、日高グループに買収されたんですよ」

 夜間の名古屋を走るマイクロバスの中で、繰り広げられる推理劇。
車窓から見えるテールランプの数も、少なくなっていた。

「ロラン。キミが所属していたチームの買収も、キミの姉さんの1件と絡んでると見ているんだな?」

「ええ。実業団リーグに勝って地域リーグに進出したとは言え、プロサッカークラブだなんて、おこがましくて名乗れ無いチームが大金で買収されるなんて、青天の霹靂(へきれき)でした」

「だが、プロのスポーツチームとして上を目指す以上、いつ買収されてもおかしく無いんじゃないか」

「倉崎さんの意見も、一理あると思います。Zeリーグが理念として掲げている、地域密着やフランチャイズの問題もクリアできますし、日高グループが買収する理由は、あったと思いますよ」
 雪峰が、タブレットを細い指で操作しながら、チームオーナーの意見を補完する。

「オレは、会社の経営とか全然なんだケドさ。買収される理由が、あったってのは解った。でもチームの買収自体が、最初から番組のネタにされていたらどうだ?」

「そうなれば、話は変わって来ますね」
 後ろの席から、雪峰が言った。

「番組と言うのは、キミのお姉さんが出てた、アイドルを匿名でアルバイトに行かせるって言うヤツか」
「ウチのチーム事務所に、姉ともう1人が広報として入るって、内容だったらしいんですが……」

「雪峰、その番組関連の動画は、上がってないのか?」
 倉崎は、斜め後ろの席に顔を向ける。

「残念ですが、有力な動画サイトや情報サイトには、1つも落ちてませんね」
「深夜枠とは言え、それなりの知名度はあった番組なんだろう?」
「ええ、意図的に消された可能性はあります」

「確かに、不審な点はありますね。日高グループのアイドル事務所であれば、もっと有名なサッカーチームに潜入させた方が、番組としても盛り上がるハズですし」
 柴芭が、カードを並べながら言った。

「紅華、黒浪、お前たちは番組を見てたんだよな。ロランの姉さんが、サッカーチームの事務所に出演した回は、見てたのか?」
 倉崎が、背中の座面に向かって問いかける。

「悪ィな、倉崎さん。たぶん、見てねェよ」
「そんな回もあったかもだケド、あんま覚えてないな」
 紅華と黒浪が、再び後ろの席から顔を出して答えた。

「バラエティなんて、軽く見流すモノだからな。仕方ないか……」
「諦めるのは早いぜ、ロランさん。バラエティってのは、女のが詳しかったりするモンだ」

「どう言う意味だ、紅華?」
 1時間ほど前にあった模擬戦で、チームメイトだった紅華に問いかけるロラン。

「オレのガールフレンドたちに、番組を録画してねェか確かめるのさ。あと、気は進まないが、姉貴と妹たちにもな」

「なるホドな。その手があったか」
「クロ。オメーも知り合いの女に、聞いてみたらどうだ?」
「うッ……オレさまの知り合いに、女なんて……」

「千鳥ちゃんが、いるじゃねェか。かけてみろよ」
「ええええええッ、それはハードルが高いって言うか……オレが得意なのは、短距離だし」
「なんで陸上の話に、なってんだ!」

「それではボクも、知り合いの女の子たちに聞いてみましょう」
 柴芭も紅華のアイデアを採用し、他にも知り合い連絡を取るデッドエンド・ボーイズのメンバーたちの、スマートフォンの音が鳴り響いく。

 夜道を走るマイクロバスは、さながら情報収集基地と化していた。

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