ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第07章・41話

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巨大、巨大、巨大、巨大

 『ウー』とは、キリル文字に置ける『Ў』であるならば、『ゲー・Г』に相対する言葉だろう。

「ゲーが、大地の女神ガイアの古い呼び名だとすると、ウーはおおよそ天空神ウラヌスってところか」
 黒い雲の中に浮かぶウーの姿は、原始的な太古の神を想起させた。

「人類の文明の歴史は、ただ進化の一途を辿ったワケじゃない。ときに退化し、ときに滅ぼされ消滅しては、文明の歴史を紡いで来たんだ……」
 太古の神々の名を持つアーキテクターに、ボクは刃を向ける。

「今の地球は、人類の歴史が退化している時代なのかもな。紀元前後のヨーロッパで、隆盛を極めたローマ。王政、共和政、帝政と政治体制を変化させ、永きに渡って栄華を誇った」
 ウーの巨大な触手が、ゼーレシオンに向け一斉に攻撃を仕掛けて来た。

「それからのヨーロッパの歴史は、ローマを越えられない時代が続いた。本当の意味でローマを超えたと言えるのは、イギリスが産業革命を迎えてからじゃないかな」
 ボクはフラガラッハで、迫り来る触手を切断しながら考え続ける。

「ガイアはウラヌスを生み、ウラヌスとの間にティターンの12神を生んだ。ティターンの長だったクロノスは、父であるウラヌスを討ち、クロノスもやがてゼウスに討たれる」
 いつの間にか、ギリシャ神話の神生みの時代に迷い込んだかのように、錯覚していた。

 

「宇宙斗、ゲーが息を吹き返したみたい。地面が、大きく揺れているわ!」
 黒乃の焦燥感に満ちた叫び声が、ゼーレシオンの触角に伝わって来る。

「ゲーが、巨人を産もうとしている……」
 巨大ドームの上に乗った、ゼーレシオン。
ウーが開けた穴から、眼下のゲーの身体が見えた。

 ゲーは下半身を切り離し、替わりに大蛇のように巨大な身体をドーム中にうねらせ、蛇神の姿となって復活を果たしている。

「黒乃……やはり、時の魔女が絡んでいた」
「どう言うコト?」

「時空が、裂けている。ウーとゲーが、子供を生んだんだ!」

 黒い海が裂け、開いた時空の狭間から巨大な人型の魔物が出現した。
八王子を覆うドームさえ軽々と持ち上げられそうなソレは、いくつもの目の付いた奇怪な頭部と、左右の肩から無数に生えた長い腕を持っている。

「まるで、ヘカトンケイルだな。厄介な話だが、神話のように3体も出現した」
 3体の巨人は、水没した日本の東京の海に脚を付けて尚、上半身は地上に出ていた。

「一体、地上でなにが起きてるの!?」
「ボクにだって、解らない。それよりシャラー・アダドには、乗り込めたのか!」

「ええ。強引に機体を、地下まで降ろしたわ。ラビリアとメイリンも、一緒よ」
「そうか。でもこっちは、さらに悪いコトが起こった」

 ゼーレシオンの見上げる嵐の空に、幾筋もの巨大竜巻が発生している。
竜巻は、ドームの天井を薙ぎ払いながら迫り、乱雑に切り刻んだ後に空へと消えて行った。

「また新手だ。竜巻が、サイクロプスを運んで来やがった!」
 ドームの裂けめの至るところに、1つ目の巨人が出現している。
ヘカトンケイルほどでは無いが、それでも立てばドームの天井を越えていた。

「こっちはまた、地面が揺れ始めたわ。ガイアが……」
「解っている。今、ボクの前に現れた」
 巨大な大蛇のような姿に変貌を遂げていた大地の女神は、ゼーレシオンの前にその巨体を顕していた。

「巨大、巨大、巨大、巨大……なにもかもが、とんでもない大きさだな」
 ボクは、ため息を付く。
もっともそれは、ゼーレシオンのコックピットに自分の身体が存在していればの話だ。

 原始的で圧倒的な、『力』による破壊。
数十体は居るサイクロプスの群れは、刑務所を始めとした施設の破壊を始める。
ヘカトンケイルに至っては、八王子の島そのものを、東京の黒い海に沈めようとしていた。

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