ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第12章・31話

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邪眼の女王ゲー・メーテル

「ち、地底湖が、輝いているのか!?」
 バルガ王が、日に焼けた腕で眩い光を遮りながら言った。

「ち、違うわ。輝いているのは剣……アイツはもう、剣を合成するコトに成功したのよ!」
 地底湖の湖面の上に浮かぶ、黄金色の剣が白い光を放っている。

「どことなく、オレの剣に似ているな」
 自身の黄金剣クリュー・サオルに、目を落とすバルガ王。

「あんな眼がたくさん付いた剣と、似てないですよ。色が黄金って、くらいじゃないですか?」
「ムウ、そうか」
 直ぐにベリュトスに否定され、意見を引っ込める。

 湖の剣は、巨大な眼が刃身の部分に3つ並び、周囲にも小さな眼がいくつも張り付いていた。
束の部分は黄金の蛇が絡み合ったデザインで、3つの眼は閉じている。

「あまり剣を直視するのは、危険ではありませんか?」
「そうね。ジャイロス騎士団長の言う通り、また石や黄金にされかねないわ」

「了解した。剣自体と視線を合わさずに、近づくぞ」
 バルガ王は、息を潜め近づこうとした。

「バルガ王、後ろ!」
「なにィ!?」
 カーデリアの声に反応し、後ろを振り返るバルガ王。

「フン、このオレの接近に気付くとは……な!」
 王の背後の空間から、ケイダンが現れ剣を振り降ろす。
バクウ・プラナティスと、クリュー・サオルが、激しく斬り結んだ。

「チィィ、どこからでも現れやがる!」
「申しワケござらん、バルガ王。今、盾を展開致しますぞ!」
 聖盾エルスター・シャーレの能力で、バクウ・プラナティスの生み出した時空の裂け目が消え去る。

「小賢しいヤツらだ。だがこれで、剣は我らのモノとなった」
 斬り結んだ反動を利用し、一行から距離を取るケイダン。

「バルガ王、湖の剣が無いわ。それに、トカゲの女のコたちの姿も!」
 盾に身を隠しながらも、耳と感覚で周辺の状況を探るカーデリア。

「剣は、手に入れたと言っている。邪眼の女王ゲー・メーテルの、『エレウシス・ゴルゴニア』だ!」

 ケイダンの背後に、黄金に輝く異形の魔物が出現する。
人の倍くらいの身長を持ち、長い頭髪は大蛇が幾重にも絡み合っていた。

 背中には6枚の黄金の翼を持ち、3つの大蛇が鎌首をもたげている。
長い手足には長い爪があり、胸には2組の乳房が縦に幾つも連なっていた。
半面、顔は女神のような威厳のある美しささえ、備わっている。

「ヤレヤレ、厄介なコトになっちまったぜ」
 邪眼の女王と、女王の持つ剣双方と、眼を合わさないように剣を構えるバルガ王。

「そう悲観するモノでも、無いわ。勇ましき、海の王」
 黄金の魔物は、女性の声を発する。
同時に、豊満な臀部に生えた蛇のシッポで薙ぎ払った。

「グワッ!?」
 一瞬で、鍾乳洞の壁に埋まるバルガ王。
間にあった鍾乳石が、何本か落下する。

「バルガ王!」
「ベリュトス、来るわ!」
 カーデリアは、ベリュトスの身体を盾の内側に引っ張り入れた。

「まずは部下から、あの世に送ってあげる」
 黄金の3本の大蛇が大口を開き、黄金の光線を放つ。
けれどもレーマリア女王から下賜された大盾は、攻撃を跳ね除けた。

「面白そうな盾だコト。それじゃあ、エレウシス・ゴルゴニアで黄金に変えて……」
「何をしている。用は済んだ。帰るぞ」
 ケイダンが、ゲー・メーテルの攻撃を遮る。

「わたしは、目覚めたばかりなのよ。もう少し、遊んでやっても良かろう?」
「仕方ない、好きにしろ」

 ケイダンは、バクウ・プラナティスで生み出した時空の切れ目へと、消えて行った。

「フウ、ずいぶんと淡泊なヤツだぜ。ま、こっちとしては、助かるがな」
 壁から抜け出したバルガ王が、再び剣を構える。

「バルガ王、油断はしないで。アイツは、いつだって時空を切り裂いて、戻って来れるわ」
「わかってる。わかってるんだが、今回はそんなコトをしない気がしてな」

「どうして、そう思うの?」
「なんとなく……勘だ、勘!」
 カーデリアに問われ、適した答えを思いつかないバルガ王。

「王と言っても、生意気な小僧ではないか。でも、嫌いじゃないわ!」
 邪眼の女王は、邪眼の剣で王に襲い掛かった。

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