ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第08章・17話

シュガール

 深淵の闇へと続くセノーテ予定地の天井に、輝く蜘蛛のような複眼。
やがてそれは複数現れ、徐々に巨大になり、ボクたちの前に降り注いだ。

「うわ、なんだ!」
「新たな敵か?」
「まだ他に、潜んでやがったのか」

 セシル、セレネ、セリス・ムラクモの3姉妹の、驚いた声が聞こえる。

「プリズナー、この敵……」
「ああ、規格外な機体のデザイン。時の魔女が、絡んでいそうだな」

 ブレードの付いた巨大な掘削機の上に落下したそれは、カメのような巨大な甲羅から、長くて脚をたくさん持った大百足(ムカデ)が何匹も、ヒトデのように飛び出している姿をしていた。

「まるで、バスク神話に出て来るシュガールだね」
「嵐と雷(かみなり)の神だっけか」
「どんな攻撃を、仕掛けて来やがる」

 マレナ、マイテ、マノラ・ムラクモのジャガーグヘレーラーが、マイナーな神の名を告げる。
シュガールの本体から飛び出した、無数のムカデの頭部には真っ赤な複眼があり、無数の脚を使って回転しながら蠢(うごめ)いていた。

「シュガールってヤツ、攻撃体勢に入ったよ」
「キャア、なんだコイツ」
「天井から、雷が降って来やがった」

 シエラ、シリカ、シーヤの駆る3機が、異形の神が放った雷(いかずち)による攻撃を受ける。

「ウーのような、天候を操る能力があるのか」
「……らしいな、艦長。あのムカデ野郎は、帯電しそうな構造をしてやがる。身体に貯め込んだ電気を、雷の要領で放電してんだ」

 長い胴体の左右に生え並ぶ、キャタピラのような無数の小さな脚。
モゾモゾと波打つたびに電光が走り、バチバチとスパーク音を轟かせながら本体を移動させていた。

「だけどオヤジ。雷自体には、大した破壊力は無いみたいだよ」
「離れてても、ある程度は喰らっちまうケド……」
「一瞬の硬直が、あるくらいだ」

 実際に雷による攻撃を体験した、シエラ、シリカ、シーヤが報告を上げる。

「一瞬の硬直……そこを、狙って来るってコトか?」
「なんにしろ、相手の出方が解らねェ。距離を取って、性能を見極めるぞ」
「了解だ、プリズナー」

 ボクは偵察用に飛ばしたままだった、ケツァルを向わせて相手の出方を伺う。
ケツァルが口から火炎砲を放つと、大ムカデたちも口から火焔を吐いて相殺した。

「不気味なヤツだな。掘削機の上に貼り着いたままグルグルと回転してるだけで、積極的に攻撃を仕掛けても来ねェぞ」
「イヤ、プリズナー。すでに、攻撃は開始されている……」

 ゼーレシオンの触角が感知する、微弱な気流の流れ。
掘削機がこじ開けた縦穴の中に、風が周り始めていた。

「なんだってんだい。風が、起きてるよ」
「アイツが、やってんのか」
「風の流れが、段々速くなってやがる」

「セシル、セレネ、セリス、他のみんなも中央に寄れ。もはや穴の壁面は、もの凄い勢いの風が吹き荒れているハズだ」
 部下となった娘たちを、掘削機のある穴の中心部へと寄せる。

 その間にボクは、倒した鎧兵型アーキテクターの、ライフル銃をかき集めていた。

「オイオイ、こりゃぁ飛んでもない風じゃないか」
「まるで、竜巻の中に居るみたいだ」
「ど、どうすんだよ、オヤジ」

「落ち着け、マレナ、マイテ、マノラ。方法は、1つしか無い」
「艦長、アンタの考えは読めてるぜ。シュガールってバケモンを、退治するつもりだろ?」

「それしか無いからな。お前たち、コイツを受け取れ。敵の鎧兵が携行していた、ライフルだ。お前たちのサブスタンサーでも、扱えるだろう?」
 ゼーレシオンが集めた銃を、ジャガーグヘレーラーへと渡す。

「これでアタシらに、援護をさせようって腹積もり?」
「だけどヨーロッパのヤツらの武器を使うなんて、気に入らないね」
「槍じゃ届かないってのも、わかるんだケドさ」

「シエラ、シリカ、シーヤ、わかってるなら頼んだぞ。ボクとプリズナーで、アイツに接近を試みる」

「しゃーねェな」
「オヤジを死なすワケにも、行かないからね」
「任せな」

 娘たちに援護を任せ、ケツァルコアトル・ゼーレシオンと、テスカトリポカ・バル・クォーダは、暴風の中心に居座るシュガールに向けて跳んだ。

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