ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第08章・20話

作戦完了(クリア)

 掘削途中だったセノーテ予定地の巨大な縦穴。
シュガールの捲き起こした竜巻によって、洗濯機の洗濯槽に叩き込まれたかの様な錯覚を覚える。

「行けェェッ!」
 光の球(ブリューナグ)が、激しいスパーク音と共に、大ムカデの群れへと放たれた。

『ギェヤァアアアア――――ッ!!』
 ケツァルコアトル・ゼーレシオン必殺の最終兵器は、大ムカデの頑強な装甲を軽く破砕して疾走する。

「流石は、ブリューナグ(神の雷)だぜ。ムカデの丸焼きが、次々に出来上がってやがる」
「喜ぶのはまだだ、プリズナー。いくらムカデを焼き払っても、本体を仕留めなければ意味がない」

「了解したぜ、艦長。本体までの道は、見えた。このまま本体まで辿り着いて、オレのテスカトリポカ・バル・クォーダの戦斧(テペヨロトル)で、粉砕してくれる!」
 黒きドクロの神が、血塗られた戦斧を両腕に、ブリューナグの切り開いた道を突き進んだ。

「喰らいな、シュガール。ここは、新大陸だ。ヨーロッパのヤツらに、好きにはさせねェ!」
 テスカトリポカから噴き出した黒煙が、激しい戦いの様子をボクの目から隠す。

 禍々しい黒煙は、シュガールとテスカトリポカ・バル・クォーダを完全に包み込んだ。
やがて黒い煙は、シュガールの捲き起こした竜巻へと伝播し、ボクたちは黒い旋風に包まれる。

「オヤジ、上はどうなってんだ!」
「敵は、倒したのか?」
「辺りは、黒い竜巻に囲まれちまってるぜ」

 マレナ、マイテ、マノラ・ムラクモの声が、ゼーレシオンの高感度アンテナを通じて聞こえた。

「わからない……プリズナーが、シュガールを仕留めに行ったんだが」
 掘削機の頂上を隠す、黒煙が晴れるのを見守るボク。

「オレが、負けるワケねェだろうが」
 黒い煙の間から、ドクロの顔を持ったサブスタンサーの異形な姿が垣間(かいま)見える。

「ま、負け戦はイヤってホド、経験済みなんだがな」
 テスカトリポカ・バル・クォーダは、斬り刻まれたシュガールの残骸を踏み付けていた。

「オヤジ。こっちも片付いたよ」
「落っこちて来たムカデは、アタイらがぜんぶ退治してやったぜ」
「本体も、やっつけたみてーだな?」

 シエラ、シリカ、シーヤの3姉妹が、穴の底に広範囲に降り注いだ大ムカデの群れが、死に絶えたコトを伝えてくれる。

「ああ。これでもう大ムカデが、召還されるコトはないだろう」
 ケツァルコアトル・ゼーレシオンの大きな瞳に映る、テスカトリポカ・バル・クォーダ。

「作戦完了(クリア)ってところか、宇宙斗艦長」
「ゼーレシオンの触角でも、この領域に敵の気配は感知出来ない」
 セノーテ予定地の奪還作戦は、確かに完了していた。

「それなら、長居は無用だよな、オヤジ」
「こんなおぞましいところ、さっさと出ようよ」
「ムカデの残骸のじゅうたんなんて、趣味悪過ぎてさ」

 セシル、セレネ、セリス・ムラクモの3姉妹も、戦士であると同時に女のコなのだ。

「了解だ。シュガールの起こした竜巻も消滅したみたいだし、安全を確認しながら帰ろう」
 戦いを終えたボクたちは、トラロック・ヌアルピリのセノーテへと帰還する。

「ご苦労だったな、冷凍睡眠者(コールド・スリーパー)」
 そう言って出迎えたのは、ドス・サントスさんの乗る、巨大なサブスタンサーだった。

「そっちは、何ごとも無かったみてェだな」
「お陰様で、敵も襲来しなければ、戦いもありませんでしたよ」
 ヘラヘラとした笑顔のメルクリウスさんに、苛立ちを見せるプリズナー。

「ケッ、まったく呑気なヤツだぜ。奪還してやったセノーテは、どうすんだ?」
「オレが直々に別動隊を組織して、セノーテ予定地の現場に向かうぜ。掘削機が使えるかどうかも、確認しなきゃならんのでな」

 企業国家であるトラロック・ヌアルピリと同じ名前のサブスタンサーに乗ったドス・サントスさんは、工作員の部下たちを連れて、ボクたちが来たトンネルの中へと消えて行った。


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