ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第07章・42話

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黒い水溜まり

 1つ目の巨人の群れが、八王子の街を破壊し始める。

 ボクや、死んだギムレットさんが捕らわれていた収容房も、あっけなく破壊されて行った。
房に収容されていた囚人たちが、宙に放り出されては地面へと落下する。

「彼らは、どんな気持ちで死んで行ってるんだ……」
 ゼーレシオンの高性能な触覚アンテナを以てしても、彼らの声を拾えない。

「宇宙斗、もう直ぐ地上に戻れるわ。まずは合流しましょう」
「了解した。今、そっちへ行く!」
 シャラー・アダドの位置は、把握出来ていた。

 ボクは、ウーの触手による攻撃をかわしつつ、なんとか地上へと辿り着く。
けれども穴の開きまくったドームの天井からは、黒い雨が瀧のように落ちて来ていた。

「こっちはたったの2機だ。劣勢は否めない。離脱するか?」
「出来れば……ね。アイツらが、許してくれればの話よ」
 ボクたちの間にウーの触手がブチ込まれ、分断される。

「クソッ、触手を切断したところで、なんの意味もない。本体を、攻撃しないと……」
「そうね。まずは各個撃破を、狙いましょう」
「どちらかと言うと、それをやられている感じだケドね」

 ゼーレシオンとシャラー・アダドの間に、サイクロプスたちが割って入る。
右手には先端が広がったこん棒を持ち、ゼーレシオンに向けて振り降ろして来た。

「ガハッ……コ、コイツら、思ったより素早いぞ!」
 攻撃をかわしたと思ったが、こん棒の先端が赤く輝いて地面を叩き、衝撃波がボクを襲う。

「キャアアアアーーーーーーーーーーッ!!」
 少女たちの悲鳴が、ボクの脳に伝わった。

「大丈夫か、黒乃。ラビリアとメイリンも無事か!?」
 言葉を投げかけるものの、返事が返って来ない。

 迫り来る敵を、フラガラッハで斬り捨てならがら、シャラー・アダドの方へと近づいた。
すると、大蛇となったゲーの長い巨体が、ボクの前で蜷局(とぐろ)を巻き行く手を阻む。

「ブリューナグ!!!!」
 ゼーレシオンは、大盾のある左腕を暗黒の天に掲げた。

 ウーの触手が、竜巻となってドームを斬り刻み、天井だった部分が宙に舞い散る。
蛇神と化したゲーが、長い蛇体をうねらせてドームの建物群を粉砕していた。

 更には、サイクロプスの群れも、父母となったウーやゲーに従い進軍する。
外ではヘカトンケイルたちが、八王子の島ごと崩そうとしていた。

「もはや、これしか無い!」
 ゼーレシオンの左腕に装着された盾が展開して、光球(ブリューナグ)を発生させる。

「行けェ、神の雷撃(ブリューナグ)!!!」
 盾より発生した光球が、竜巻を吹き飛ばし、サイクロプスの群れを押し潰した。
それから、ゼーレシオンよりも大きなゲーの蛇身に、風穴を開ける。

「エネルギー消費が激しいブリューナグは、必殺の兵器である半面、稼働させられる時間が短いからな」
 局面を打開したと感じたボクは、ブリューナグの光球を消した。

 風穴を開けられたゲーの動きは鈍り、サイクロプスの数は半減している。
ボクは、シャラー・アダドを探した。

「もはやドームは、ドームとしての機能を完全に無くしてるな……」
 地面には、破壊されたブリキの兵隊たちが、黒い雨に打たれ散乱している。
彼らが、再び動き出すコトは無さそうだ。

「宇宙……斗……ラビ?」
「聞こえ……てるリン?」
 ゼーレシオンの触角が、ラビリアとメイリンの声を拾った。

「2人とも、無事か。黒乃は、どうした?」
「それが……地上に投げ出されたラビ!」
「ゲーの攻撃を喰らって、その弾みでリン!」

 直ぐに、ゼーレシオンのメインカメラが、シャラー・アダドを捉える。
けれども、コックピットハッチは開かれていた。

「黒乃は、落下したのか……場所は!?」
「わからないラビ!」
「コミュニケーションリングも、引き千切られたリン!」

「そんな……」
 ボクは、下を見て絶望する。
穴の開いた巨大ドームの下には、黒い汚染された水溜まりが広がっていた。

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