ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第7章・EP032

f:id:eitihinomoto:20191113233812p:plain

バルガ・ファン・ヴァール

 青々とした芝生に、近代的な照明ライトの白い光が落ちる。
夕日は水平線の下に隠れ、空には星が瞬き始めていた。

 こんなスゴいピッチでサッカーするのって、始めてだ。
ロランに間違われたせいで散々な目に遭ったケド、これは悪くないかも知れない。

 ボクは、ボールを横に転がした。
それを、センターサークルで隣に立っていた、オリビさんが受ける。

「よし、行こう」
 ボールは、ボクに戻された。
すかさず、フルミネスパーダMIEのフォワードが、プレッシャーをかけて来る。

 日本人じゃない。
しかも、相当なスピードだ。

 記者会見場じゃ、意識が飛んであまり覚えてないケド、確かチュニジアの人だっけ?
しかも顔が怖い!?

 ボクは覚えて無かったケド、名前をバルガ・ファン・ヴァールと言った。
アフリカ人と言っても、黒人ではなく褐色の肌のストライカーが、ボクのボールを奪おうと、屈強な身体をぶつけて来る。

「グッ!?」
 なんとか踏ん張って、ボールをキープする。
でもスピードを止められて、動きを封じられた。

「オイ、なにしてる。こっちによこせ!」
 前線で、味方のイヴァンさんが、ディフェンスラインの裏で手を挙げている。
でも、パスコースなんてないし、オフサイドだよ。

 仕方なく、ボールを後ろのボランチへと戻す。
中盤の底に入っていたのは、さっき声をかけて来たアルマって人だ。

「うん、ナイス判断だ」
 アルマさんはボールを受け取ると、そのままドリブルを開始する。
スプリンターのような、理想的な走りでボールを持ち上った。

 こ、この人、上手い。
そう思いつつ、ボクはペナルティエリアの左に、オリビさんは右へと展開した。

「よし、まずはここだ!」
 アルマさんは、プレスが集まる前にロングボールを右サイドへと放り込む。

「ナイスです、アルマさん」
 右に展開していたオリビさんが、勢いのあるボールを軽くトラップした。

 オリビさんも、上手い!
あれだけのボールを、すんなりと収めちゃった。

 サッカーに置ける、基本となるパスやトラップ。
それを忠実にミスなくこなせるコトは、サッカー選手としての高い能力を示していた。

「来い、オリビ!」
 左サイドバックの裏に、ランスさんが弧を描いて走り込む。
オフサイドラインを、読んだ動きだ。

「解ってますよ」
 オリビさんは、左サイドハーフと左サイドバックの2枚の間に、パスを通す。

「ナイスだ、オリビ!」
 ランスさんは、フルミネスパーダMIEの裏抜けを成功させた……かに見えた。

『ピー!』
 ラインズマンの旗が上がり、審判である武柳 ヒルデ(ぶりゅう ヒルデ)さんが笛を吹く。

「なッ……今のが、オフサイドって!?」
 文句を言いながら横を見たランスさんは、言葉を失った。
ランスさんの真横に、相手ディフェンスラインは1人も残って居なかった。

「ア、アレだけ横に動きながら裏を取ったのに、オフサイドだとォ!?」
 驚く、ランスさん。
その隣で、スローインが行われる。

「しまった、カウンターだ」
 オリビさんが、叫んだ。

 左サイドバックのスローインを受けた左サイドハーフが、ロングボールを前線へと入れる。
グングンと伸びるボールは、エトワールアンフィニーSHIZUOKAの、ボランチとバックラインの間……いわゆる、バイタルエリアに落ちる。

「Bon(よし)!」
 チュニジア人ストライカーは、落ちて来たボールを脚で前にトラップし、ヴァンドームさんと左サイドバックの間を抜けると、シュートを放った。

「Ça alors(ワォ)!」
 フランス語が、飛び交う。
ドミニク ヴォーバンさんが、横っ飛びに飛んだ。

 ゴールネットが、揺れる。
かつてフランスの植民地であったチュニジア出身のストライカーは、かつての宗主国であるフランスの黒人ゴールキーパーから、ゴールを奪った。

 前へ   目次   次へ