ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP040

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MIE対GIFU

 照明塔の真っ白な光が照らし出す、緑のピッチに散らばった22人の選手たち。
試合を終えたボクたちは、その様子を俯瞰(ふかん)しながら眺める。

「次は、フルミネスパーダMIEと、1FC(エルストエフツェー)ウィッセンシャフトGIFUとの試合ですか。フルミネスパーダは、連戦になりますね」
 オリビさんが、言った。

「そうだね。MIEは、完璧な試合運びでボクたちを叩きのめした。果たしてGIFUは、MIEの鉄壁の守備陣をこじ開けられるかな?」

 アルマさんの言葉には、悔しさが滲んでいる。
同時に、攻略の糸口を掴もうとする必死さも伝わって来た。

「1FC(エルストエフツェー)ウィッセンシャフトGIFU……岐阜にある大学と研究所が、母体のチームですよね。確か素粒子物理学の、研究機関でしたっけ?」

「ああ。日本中の天才や秀才が、一同に会す場所さ。ニューロンだとかクォーツだとか、一般人には凡(おおよ)そ縁の無い研究をしている。もちろん、ボクにも理解不能なレベルだよ」
 ボクから見れば、頭の良さそうなアルマさんも及ばない、頭脳の集まったチーム。

 緑色を基調とするユニホームを着た11人が、ピッチに散らばっている。
初期フォーメーションは、3-5-2っぽかった。

「鉄壁の守備のMIEと、天才の集ったGIFUとの決戦ですか」
「どんな試合が展開されるか、楽しみではあるよ」

「やはり中心選手は、柴繰 蒔郁(しぐる ジーク)さんですかね?」
 オリビさんが挙げた、選手の名前。

 かつてオーストリアリーグに所属し、ある程度の成果は残した選手の名だった。
名古屋のホテルでの記者会見で、チームメイトとケンカしてた人でもある。

「そうだね。彼は、オーストリアリーグで、一定の結果を残したストライカーだ」
「ウチのイヴァンさんと、似たタイプですよね」

「だけど、活躍したステージが違う。彼は尻すぼみになったとは言え、オーストリアリーグで得点を重ねたストライカーだ」
「海外移籍する前のZeリーグに居た頃は、点を取りまくってましたモンね」

 ボクが見ていたZeリーグでのジークさんは、決して器用な選手では無かった。
けれども、何度失敗しいてもシュートを果敢に狙う、メンタルの強いストライカーだった。

「ジークの所属していたチームは、中盤に日本代表や元ブラジル代表を揃えるチームで、Zeリーグでも圧倒的な強さでリーグ制覇していたからね。相当強いチームのパスを、受けられていたってのはあるよ」

「確かにあの時のチームは、Zeリーグの歴史の中で見ても、最強の呼び声が高かったですからね。1回チャンスを決めきれなくても、もう1回同じチャンスを作ってくれる中盤の構成力は、ハンパありませんでした」

 2人のプロサッカー選手は、まるでサッカー少年のように目を輝かせている。
正直、ボクはまだ小学生くらいだったから、そこまで戦術とか理解して無かったケド、スゴく強いチームだったコトは覚えていた。

「でもジークさんは、自ら得点チャンスを切り開けるタイプじゃありませんよ」
「そうだね、オリビ。GIFUが、どれだけのメンバーを揃えられたかは解らないケド、ジークさんに何本のパスを供給できるかが鍵になるな」

 2人の見立てが終わると、引き続き審判を務めるヒルデさんのホイッスルが鳴り響く。

「やはりMIEは、引いて護って来たね。まずはポジションで護るのが、彼らのやり方だ」
「ええ。逆にGIFUは、ボールを保持(ポゼッション)して攻めるチームのようですね」

 オリビさんが言った通り、GIFUは中盤で綺麗にボールを回していた。
派手さは無いものの、堅実なボール回しに見える。

「やはり、有夢 藍韻(あるむ アイン)が動きますね」
「ああ。中盤の底にいる彼が、どうやって前線にパスを通すかが見物だよ」

 記者会見場で、ジークさんと言い争ったアインさん。
果たして、どんなプレーヤーなのか……。

 ボクも、固唾を飲んで見守った。

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