ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP038

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惨敗

「まずは、ボランチ2枚を引き剥がすぜ」
 イヴァンさんが、その野性味あふれる身体を活かした、ドリブルを開始する。

「そんなに簡単に、引き剥がされるかよ!」
 けれどもその進路に、ネロさんが入った。
相手が先にポジションを取ったコトにより、ファウルを恐れて進路を変えるイヴァンさん。

「エトワールアンフィニーは、大した能力のフォワードを揃えられていないようだな」
 すかさずスッラさんが、イヴァンさんのボールをスライディングで刈り取った。

 よし、これだ!
ボクは心の中で叫ぶと、スッラさんのボールを奪おうとする。

「話にならんな」
 けれどもスッラさんは、いち早くつま先でボールにチョンと触る。

「ナイスだぜ、スッラさん。ま、アンタの能力ならとうぜんだケドよ」
 ボールはネロさんに渡り、ネロさんから左に展開された。
左には相変わらず、超攻撃的サイドバックの、トラヤさんが待ち構えている。

「ナイスだぜ、ネロ。なるホドな。この攻撃パターンは、確実に機能しているぜ」
 自分のチームの基本戦術に、納得するトラヤさん。

 フルミネスパーダMIEの戦術とは、ボランチや高めのバックラインの位置で奪ったボールを素早く左サイドに展開して、トラヤさんとセンターフォワードのバルガ・ファン・ヴァールで決めきるカウンターだった。

「おっしゃ、今度はオレが決めてやる」
 トラヤさんはやはりサイドに開かず、ペナルティエリアに進入して来る。

「そんなに何度も、同じパターンが通じるモノか!」
 けれども今度は、ペナルティエリアを飛び出したヴァンドームさんが、華麗なスライディングタックルでボールを奪い取った。

「ヴァンドーム!!」
 同僚のフランス人リベロである、ヴィラールさんが叫ぶ。

「C'est la vie(セ ラ ヴィー)これが人生さ!」
 ヴァンドームさんの足元に転がったボールを、そのままゴールに蹴り込むチュニジア人ストライカー。
雷光(バルガ)の名を持つ男の放ったシュートは、凄まじい勢いでゴールに突き刺さった。

 遂に3点目を献上してしまう、エトワールアンフィニーSHIZUOKA。
ハットトリックを決めたバルガさんは、再びコーナーポストで尊大な王さまのポーズを取っていた。

 たった30分の試合時間での、3点ものビハインド。
しかも試合時間は、まだ15分弱は残されていた。

「なんだ。エトワールアンフィニーも、大したコトねェな。科学的トレーニングや戦術がどうのとか言ってた割りに、身体能力も戦術もウチが圧倒してるぜ」

「勘違いするな、ネロ。たかが練習試合で、相手を把握した気でいると痛い目に遭うぞ」
「相変わらず、スッラさんはストイックっスね。でもフォワードの能力はウチのが上やし、エースのロランってヤツもぜんぜん大したコト無いのは、確かやケドな」

 バルガさんは、Ze1リーグですら通用しそうなレベルの選手であるコトは、間違いない。

 でも、問題はボクだ。
オリビさん以外の全員が、ボクをロランだと思っている。
でも、ボクはロランじゃない。

 視線の先にあった近代的な電光掲示板には、3ー0のスコアが並んでいた。

 もしロランだったら、結果は違っていたのかな?
ロランが出ていたら、もっと上手くゲームをコントロールできたんじゃないか……。

 そう思うと、悔しさが込み上げて来た。
正直、力の差を感じる。

 フルミネスパーダだけでなく、エトワールアンフィニーの誰よりもボクは下手かも知れない。
そんな邪念を振り切れないまま、ボクはセンターサークルに立った。

「ロラン、気にするな。これは、キミだけの結果じゃない。ウチの選手全員が、負うべき結果だ」
「そうだね。オリビの言う通り焦って責めを急げば、またカウンターを狙われてしまう。それこそ、ヤツらの思うツボだ」

 オリビさんとアルマさんが、ボクを勇気付けようとしてくれる。
けれども、打開策は見つからないまま笛は鳴った。

「どこ見てんだ、オラ!」
 相手の中盤に斬り込むものの、スッラさんとネロさんが陣取るボランチの壁は厚く、ボクは簡単にボールを失った。

 集中力を欠いたのはボクだけじゃなく、イヴァンさんとランスさんによる攻撃も散発に終わる。
相手キーパーはボールに触れる機会すら訪れず、逆にエトワールアンフィニー守備を担う3人のフランス人は次々にゴールを許した。

 最終的に6ー0の数字が、電光掲示板に浮かんでいた。

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