ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第07章・34話

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銃撃戦

 エレベーターに乗ろうとしたが、錆びついて起動すらしなかった。
ボクたちは仕方なく、建物内の非常階段を使って上へと進む。

「バリケードを突破できたのは、2人のお陰だな。助かったよ」
「エヘヘ、お役に立てて嬉しいラビ!」
「もっと、頑張るリン!」

 誰だか知らない研究者が開いた研究所(ラボラトリー)から、連れ出した2人の少女。
ラビリアとメイリンが、未来への活路を開いてくれた。

「もう少しで、サブスタンサーにアクセスできそうだわ」
 赤茶けた金属の階段を駆け上りながら、黒乃が言った。

「ゲーの居るのは、もっと上の階なんですよね?」
 ボクは、隣を走るギムレットさんに伺いを立てる。

「そりゃあそうだが、まずはサブスタンサーが先だ。サブスタンサーさえ手に入れば、ゲーの制圧なんざどうとでもなる」

「ゲーとは、戦いに来たワケではないわ。今は地球圏を、1つにまとめ上げなければならない」
 階段を昇るたびに、クワトロテールが激しく揺れていた。

「ま、そう言うコトかい。アンタが、地球に降りて来た目的ってのは?」
「ええ。残念ながらそうよ」

 ギムレットさんと、黒乃に扮したミネルヴァさんとの会話。
あえて『時の魔女が復活した』コトを、口には出さなかったが、互いにそれを理解し合っている。

「……ったく、目の曇った老人たちや、頭の固いスーパーコンピューターのAI……どっちも、説得するのに骨が折れるぜ」

「それでも、説得を試みるしかないわ。この地球を、これ以上汚させないためにもね」
 ミネルヴァさんは、火星のアテーナー・パルテノス・タワーで始めて会ったときから、ずっと決断にブレが無かった。

「この上が、地上1階だな。今までは大した抵抗も無かったが、流石にここは固そうだぜ」
 階段の上から、アーキテクターたちがレーザー銃を撃ち降ろして来る。

「アッ!」
「く、黒乃、大丈夫か!?」
 その1発が、黒乃の右の上腕を撃ち抜いていた。

「だ、大丈夫よ。わたしは、シャラー・アダドにアクセスしてみるわ」
 血が流れだす右腕を抑えながら、気丈に振る舞う黒乃。

「オレたちは、応戦するしかねェ。アンタも、銃を撃ちまくれ!」
「わ、わかった!」
 顔を出したら撃ち抜かれそうな状況で、ボクは意を決して銃を身構える。

「待って。階段なら、わたしの風で消し飛ばせるラビ」
 ラビリアが、階段の床に手を当てる。
すると風が巻き起こり、階段の上へと向かって吹き荒れた。

「ナイスだ、ラビリア。ギムレットさん、今です!」
「お、応!」
 ボクたちは、ありったけの銃弾を叩き込む。

「な、なんとか制圧、できたみたいですね?」
 無論、レーザー銃に弾丸などと言う概念は無いが、エネルギーパックは尽きていた。

「ああ。この隙に1階まで、前進するぞ!」
「で、でも、黒乃が……あ」

「わたし達の姉妹(シスター)は、任せるメル!」
 振り返るとメイリンが、黒乃の傷をナノ・マシーンの水で治療してくれていた。

 ボクとギムレットさんの2人が、階段の踊り場から1階まで駆け上がる。
そこには、風穴の開いたアーキテクターの残骸が、無数に転がっていた。

「今のウチに、コイツらの銃と取り換えておくぞ」
「はい」
 ボクは持っていた銃を捨て、使えそうな銃を拾ってチェックする。

「こんなの、ゲームでしかやったコト無かったケド、まさかゲームでの経験が生きるなんてな」

「油断すんなよ。扉の向こうには、大量のアーキテクターが待ち構えてやがるだろうからな」
 ギムレットさんが1階の扉を蹴り破り、素早く壁に身を隠した。
案の状、レーザービームの熱線が飛び交い、階段や壁を穴だらけにする。

「こりゃあ、相当な数が居やがるな」
「ええ、このままじゃ……な、なんだか地面が、揺れてますよッ!?」
「マ、マズい。下に降りろ!」

 急に地面が揺れ始めたかと思うと、建物の壁が大きく崩れる。
ボクとギムレットさんは、咄嗟に階段の下へと飛び降りたが、大きな建屋の壁材が降り注いだ。

「う……うう……」
 本格的な痛みが、身体中から脳へと伝わって来る。
身体の上には分厚い壁の欠片が乗っかり、腕や足もそこら中が血まみれだった。

「オ、オイ……無事か?」
「無事ってホドじゃ、ないですケドね。なにが、起こったんです?」
 ボクは、瓦礫の何処かから聞こえるギムレットさんの声に、問い返す。

「見ろよ……サブスタンサーだ」
「サブスタンサーって、黒乃のシャラー・アダドですか!?」

「いいや。どうやらヤツも、サブスタンサーを持ってやがったらしい」
「ヤツ……誰です?」

「『ゲー』だよ。ここの主の……な」
 ギムレットさんは、地球を統括すつコンピューターの名前を口にした。

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