ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP026

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白熱(ヒートアップ)

 湿った土のグランドに、悠々と着地する倉崎 世叛。

「さっすが、倉崎さんだぜ!」
「ナイスボレーであります!」
 黒色のビブスを着たチームメイトたちが、ゴールを決めた14番を囲む。

「イヤ、オレが失ったボールをディフェンス陣と連携して奪ってくれた、柴芭のパス精度のお陰だ」

「倉崎さん、謙遜し過ぎだって。確かに柴芭のプレーも凄かったケドさ」
「いえいえ、けっこうギリギリでしたよ。それに、まだ最初の1点が決まったに過ぎませんからね」
 黒浪の誉め言葉にも動じず、冷静に試合状況を読む柴芭。

「ま、まあ、そうだよな。今度は、オレさまが決めてやるぜ!」
「自分もロングシュートを、狙っていくであります!」

「その意気だ。だがカズマも、黙っちゃいないだろうがな」
 倉崎 世叛は、センターサークルに立っている男に、視線を移した。

「倉崎さんが、お前のコト見てんぜ……ってオイ、聞いてんのか?」
 背番号10の蒼いビブスを着た男に話しかける、紅華。

「聞いているさ、クレハナ。中々に面白そうなチームじゃないか」
「まあな。オレもチームに入ってみたは良いが、おかしなヤツや、クセの強いヤツばかりで、最初は期待してなかったんだ。でも意外と、良いチームなんだわ」

「そうか……だったら、大事にするんだな。それがずっと続くなんて思ってると、痛い目見るからな!」
 ロランは、紅華に強めのパスを送った。
すでに試合再開のホイッスルは、鳴り響いている。

「うわッ……って、なんだよ、まったくよォ!?」
 慌ててボールを処理し、ドリブルを始める紅華。

「よォ、紅華。お前との1対1(ワン・オン・ワン)は、始めてだったか?」
 不敵な笑みを浮かべ、Zeリーグの新人王最有力候補が立ちはだかる。

「そっスね、倉崎さん。でもドリブルじゃ、負けないっスよ!」
 得意のシザースとエラシコを織り交ぜたドリブルで、突破を試みた。

「なるホド。実際に対峙してみると、大した切れ味じゃないか。だが……」
 倉崎は、紅華の上半身に自らの肩をぶつける。

「おわッ……しまッ!?」
 身体のバランスを崩され、尻もちを付く紅華。

 けれどもルーズボールは、カズマに成りすました男がかっさらった。

「体幹の強さじゃ、まだ倉崎のレベルには達していないか。さて、もう1人は使えるのか?」
 ロランはヒールキックで、バックパスをする。

「一馬のヤツ、雪峰キャプテンにボールを預けやがったぞ」
「雪峰士官へのプレスは、任せたであります。自分は御剣隊員を、確保するであります」
 雪峰に対しては黒浪が、カズマに対しては杜都がマークに付いた。

「へへッ、キャプテンと1対1は始めてじゃね?」
「フッ、無駄口を叩く余裕はあるのか?」
「な、なにを!」

 黒浪を挑発する、雪峰キャプテン。
自慢のスピードでボールを奪おうとするものの、圧倒的なテクニックの前に翻弄されてしまう。

「悪いが、ここまでだ。倉崎さんがプレスに来る前に、パスを出せねばならない」
 綺麗なロングパスが、前線のロランへと通った。

「ユキミネ、大したテクニックだな。オレと同じ、キャプテン……か」
 背中から来るボールを、胸で大きく弾ませるロラン。

「あ、一馬のヤツ、トラップミスりやがった」
「違うな。あえて前に大きく、トラップしたんだ。だからトラップ自体が、最初の1歩になっている」
 スピードに難のある杜都のマークが、大きく引きはがされた。

「へぇ、そうなんだ。今度オレさまも、マネしてみよっと」
 倉崎の分析を聞き、1つ賢くなる黒狼。

「ここは、止め……ェエッ!?」
「間を開ける……なにィイ!?」
 センターバックの、龍丸と野洲田(やすだ)の間を、猛烈な勢いのボールが通過する。

「フゥ、これでまずは同点だ」
 胸トラップで前に出したボールに、最初に触った一撃がシュートとなった。

「ま、まさかあのタイミングで、シュート撃って来るとは思わんかったぜ」
「ヤツが、世界の要人を暗殺したエージェント……」
「イヤ、ちげーから」

 龍丸の天然のボケに、間髪入れずツッコミを繰り出す、野洲田。

 河川敷の小さなグランドで始まった紅白試合は、序盤から白熱(ヒートアップ)した。

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