ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP022

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シュート練習

「ロラン、キミの用件は理解した」
 倉崎 世叛が、目の前のソファに座った男に向かって言った。

「スミマセン、迷惑をかけてしまって」
「イヤ。その台詞は、静岡に居る一馬に言ってやってくれ」

「そ、そうですよね。彼に会ったときは、まるで鏡でも見てるみたいで、神の助けとばかりに身代わりにしてしまいました」
 申しワケ無さそうに俯(うつむ)く、ロラン。

「確かにキミは、一馬にソックリだからな。気持ちは、解らんでは無い」
「彼には、問題が解決したらキッチリと謝るつもりです」

 ロランの真剣な顔に、倉崎はため息を吐くと、応接室の入り口に立った。

「どうだ、ロラン。ボールを蹴って行かないか。アイツらも、練習場で待ってる」
「でもオレには、時間が……」

「焦ったところで、キミの問題が解決するワケじゃないだろう。それに、アイツらを練習に誘ったのは一馬、お前じゃないか」

「……え?」
 倉崎に言われ、ハッとするロラン。

「そうでしたね、今のオレはカズマ。自分で、言っていたのに忘れてました」
 ロランも、ソファーから立ち上がる。

 2人はジャージに着替えると、チームメイトの待つ河川敷の練習場へと向かった。

「オッ、一馬のヤツ、やっと来たぜ。倉崎さんと、なに話してたんだ?」
 腕を組んで考える、黒浪。

「お前、まだ気付いてないんか。まァ良いケドよ」
「ア、なにがだ、ピンク頭?」
「なんでもねェよ」

「黒浪、紅華、もう練習は始まってるね。喋ってないで、パス回すよ」
 セルディオス監督が、2人の背後にロングボールを蹴る。

「うわあ、どこ蹴ってんだよ」
「向こう、行ってろってか……ったく」
 黒浪と紅華は、飛ばされたボールに追いつくと、その場でパス回しを始めた。

「一馬、お前も紅華と黒浪に混じって、パス練習に加われ」
「は、はい」
 言われるがままに、2人と合流するロラン。

「倉崎、話は着いたね?」
「ええ、まあそれなりに。それより一馬も、試合に参加させたいんですが」
 セルディオス監督に、確認を取る倉崎オーナー。

「ミニゲーム、やるつもりね。でも、キーパーが居ないね」
「イヤ、居るでしょうがよ。オレが!」
 メタボなキーパーが、反論する。

「あのね、海馬。居ても居なくても変わらないキーパーなんて、居ないのと同じよ。一体2試合で、何点取られたと思ってるね?」
「そ、それはその……」

「ミニゲームは、キーパー無しで行くね」
「そんな。それじゃオレは、なにをすれば?」
「海馬はまず、体重を落とすよ。河べりをランニング、走って来るね」

 メタボなキーパーは、大量の愚痴をこぼしつつ、川沿いのランニングコースを走り始めた。

「さて、さっきの注文だケド、ムリね。静岡に居る一馬を、どうやって連れて来るね?」
「やはり、気付かれてましたか」

「ボールの持ち方や蹴り方見て、確信したね。アレは、一馬じゃないよ」
 紅華や黒浪と共に、三角パスをするロランを見る、セルディオス監督。

「雪峰や柴芭にも、気付かれてしまいました」
「紅華も、気付いてるね。試合なんかすれば、もっと気付かれるよ」

「いずれは、バレるコトですからね。それより、彼のプレースタイルを見てみたいんですよ」
 倉崎の真意を聞き、ほくそ笑むメタボ監督。

「なるホド、分かったよ。本来の彼は、エトワールアンフィニーSIZUOKAの中心選手。実力を知る、良い機会ね」

 チームは軽いパス回しの後、シュート練習に入る。
ゴールキーパーの居ないネットに、次々に吸い込まれるボールたち。

「どうだ、一馬。ウチの練習風景は?」
 倉崎が、ロランに聞いた。

「そうですね。ランニングより前に、シュート練習から入るんですね」
「ああ、シュートは正確に枠に入れるのが当然だからな。疲れた状態で撃って、枠を外しまくる練習なんてしないってのが、監督の方針なんだ」

「相変わらずですね、セルディオス監督は」
「なんだ。セルディオス監督を、知ってるのか?」
「小学生の頃、オレやオリビの居たチームに、臨時コーチとして教えに来てくれたんですよ」

「なるホドな。次、お前の番だぞ」
「解ってますよ、倉崎さん」

 ロランは紅華が出した、やや浮き球のボールに走り込む。
右足でジャストタイミングに捕らえたボールは、ゴールの左隅ギリギリに決まった。

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